最近の話題 2017年11月11日

1.Intel CPUがAMDのGPUを搭載する

  2017年11月7日のEE Timesが,IntelがCoreプロセサとAMDのGPUとHBMを一つのパッケージに入れた製品を作ると報じています。これは,IntelのClient Computing GroupのVPで,Mobility Client PlatformのGeneral ManagerであるChristopher Walker氏がブログで公開したとのことです。

  どのCPUとどのGPUを使い,どの程度の性能のものを作るのか,お値段はなど,全く情報がありませんが,AMDのハイエンドのディスクリートGPUのレベルの性能を持つGPUをIntelは持っていませんから,コアゲーマーは,AMDかNVIDIAのディスクリートGPUを買ってCoreプロセサに接続して使っています。

  これがワンパッケージに入れば,厚みは26mmくらいで,最近のスリムなノートには入りませんが,相当,小さくなり,HBMを使うとのことですから,消費電力もGDDR5より下がります。

  Intelは,CPU,GPU,HBM2をEMIBを使って一つのパッケージ基板に搭載するとみられます。

  選択としてはNVIDIAのGPUを使うという手もあるのですが,アナリスト達の見方では,AMDの方が協力的だったとみられます。

  AMDとしては,RyzenとVegaを使うAPUとある程度競合することになると考えられますが,core CPUと同一パッケージに入ったVega GPUがたくさん売れるほうが,有利ではないかと思われます。

  また,2017年11月9日のEE Timesが,IntelがAMDのシニアVPでRadeon TechnologyのチーフアーキテクトであったRaja Koduri氏をCores & Visual Computing & Edge Computing Solution部門のチーフアーキテクト兼シニアVP兼GMとして雇ったと報じています。この新しい部門の担当範囲がどうなるのか,特にマシンラーニング関係の部門との切り分けははっきりしませんが,少なくとも,IntelはGPUでAMDやNVIDIAへの再挑戦を始めるようです。

2.Waymoが自動運転タクシーのテスト運行を近く開始

  2017年11月7日のThe Registerが,Alphabet傘下のWaymoがアリゾナ州のPhoenixで自動運転のタクシーのテストを開始すると報じています。当初は,Waymoのエンジニアが同乗するようですが,早い時期にやめて,完全な自動運転に移行する考えです。

  基本的には会員を募り,Uberのようなアプリで車を呼ぶという形での利用になります。会社への通勤や子供の学校への送り迎え,食事や観劇などのお出かけからの帰宅などの用途が多いとみられています。

  アリゾナで試行を開始するのは,同州の法律の自由度が高いからです。

  2017年11月8日のThe Registerが,RANDコーポレーションの調査結果によると,人間よりも75%~90%良い自動運転システムが完成するまで待つよりも,人間より10%でも良い自動運転システムができたら,すぐに実用に供する方が事故の犠牲者は減るという結論になったと報じています。モデルのパラメタをいろいろと変えてみても,結論は変わらなかったそうです。

  米国の2016年の交通事故死者は35,000人で,それを10%減らせるシステムがあれば,30年間には数10万人を救えるので,早く実用化するべきというのは,直感的にも理解できます。その意味でも,Waymoの動きは,この線に沿っています。

  ただし,RANDの報告書は,人間は,人間のドライバがある程度の確率で事故を起こすのは避けられない許容するが,機械が事故を起こすのには不寛容であると指摘しています。

3.Navyaの自動運転シャトルバスがデリバリトラックと衝突事故

  2017年11月8日のBBC Newsが,本日からラスベガス市の公道で運行を開始したNavyaの自動運転シャトルバスが,開始から2時間もたたないうちに,事故にあったと報じています。

  Navyaのシャトルは,横道から出てくるデリバリトラックを認識して停止したのに,デリバリトラックの方は止まらずにぶつかったとのことです。いわゆるフェンダーベンダー事故で,損害は軽微で,ケガもなくシャトルはチェックの後,運行を続けたと思われるとのことです。

  この事故に対して,警察は,Navyaの方は落ち度はないと言い,デリバリトラックの運転手には違反切符を切ったとのことです。

  ということで,自動運転シャトルには問題はなかったのですが,サービス開始直後の事故で,ケチをつけられたという感じです。なお,ラスベガスでは大人気で,自動運転シャトルに乗る順番待ちの列ができているそうです。

4.ハックされた自動運転車の事故に保険は適用されるか

  2017年11月7日のThe Registerが,提案されている法律案では,ハックされた自動運転車による多数の自動運転車の事故が保険でカバーされないことになるかも知れないと報じています。

  車の自動運転ソフトのバグフィックスなどは,無線でのアップデートが考えられていますが,無線では傍受されてハックされる恐れが有線より大きいと考えられます。

  しかし,パッチだけでなく,随時に情報を受け取るような用途を考えるとコネクテッドカーになるのは必須と思われますので,保険のカバレージがどうなるかよりも,ハックされたプログラムやデータを使わず,安全な1世代前のプログラムやデータを使うなどの方法で安全を確保するというシステムを確立することが重要と思います。

  SHA256のように,データの変更を検出するテクノロジは強力ですから,自動運転システムの基本部分に侵入され改変されたかどうかを検出することはできるのではないかと思います。

5.BroadcomがQualcommを買収か

  2017年11月7日のThe Registerが,BroadcomがQualcommに買収を持ちかけるという噂を報じています。Qualcommの株一株につき$60で買収するという条件と報じられています。この条件では買収総額は$130Bとなり,テクノロジ業界では最大規模の買収提案となります。

  ただし,Qualcomm側は買収価格が低すぎるとして反発してるとのことで,Broadcomによる敵対買収になる可能性もあります。

  Broadcomは,もともとはHPの大分割でテクノロジ部門がAgilentとして独立し,さらに投資会社がAgilentの一部門を買収してAvago Technologiesという会社を作りました。その後,AvagoがBroadcomを買収したのですが,存続会社はBroadcomという社名を使うということで作られた会社です。

  BroadcomもQualcommも通信関係のテクノロジ製品を主力とする会社で,現在の売り上げ規模では,Qalcommの方が少し大きいという感じです。しかし,BroadcomのHock Tan CEOは買収による事業拡張で知られる経営者で,過去にLSI CorprationやPLX Technologiesを買収しています。

  もっとも,Qualcommも$47Bで,ヨーロッパのPhilippsから分かれたNXPの買収の途中であり,おとなしい会社というわけではありません。

  さて,先行きはどうなるでしょうか。成功すれば,Intel,Samsungと伍する規模のチップメーカーが誕生することになります。

6.QualcommがCentriq 2400の出荷を開始

  2017年11月8日のThe Registerが,QualcommがARMアーキテクチャのサーバプロセサのCentriq 2400の出荷を開始したと報じています。

  Centriq 2400は,Samsungの10nmプロセスで作られ,398mm2のチップに48コアを集積しています。クロックは2.2GHzで2.6GHzまでブーストが可能です。そして,消費電力は120Wで,$1995とのことです。

  現在のサーバプロセサ市場はIntelのシェアが90%を超える独占状態で,プロセサの値段も高止まりしています。Centriq 2400は48コアの集積でかなり高い処理性能を持ち,120Wという消費電力と相まって,データセンタサーバとしては,Xeonよりも安くつくとのことです。

  巨大データセンタを運用するGoogleやMicrosoftは大歓迎で,採用を進めるとみられます。また,本当にXeonと競合するプロセサが出てくれば,対抗上,IntelもXeonの値段を下げると思われますので,Centriq  2400を使わなくてもコストダウンができる可能性もあります。

  Qualcommは,Snapdragonからエンジニアを回し,他社でサーバプロセサや巨大データセンタ開発の経験があるエンジニアやマネージャを引き抜いてCentriqの開発チームを作っており,力が入っています。しかし,Centriq 2400で,Intelシェアの10%を取れたとすると相当なビジネスですから,Qualcommは意気軒高です。

  また,2017年11月8日のTop500 Newsが,ミシガン大学が$3.5Mで,CaviumのThunderX ARMプロセサを使うビッグデータ処理システムを導入すると報じています。ThunderXも48コアで2.5GHz動作のARMv9アーキテクチャのサーバ用プロセサです。

  なお,Caviumは第2世代のThunderx2を発表していますが,このシステムには間に合わなかったようです。


  

  


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