最近の話題 2018年3月10日

1.Post-Kスパコンは重量級計算ノードを採用

  2018年3月9日のマイナビが,日本の次期フラグシップスパコンのPost-Kは,重量級の計算ノードを採用すると報じています。2月27日に理研で開催されたヘテロジニアス・メニーコアワークショップで,Post-Kのアーキテクチャ開発チームのリーダーの佐藤三久氏が発表しました。

  Post-Kのプロセサは,12個の計算コアを持つクラスタが4個搭載され,これに2個あるいは4個のOSなどを実行するコアが付く構成だそうです。中国の太湖の光のSW26010と似た考え方ですが,計算コアがワンチップに48個と少ないのが大きな違いです。そして,計算コアとマネジメントコアは物理的に同じコアとのことですから,Post-Kの各コアはOSも動かせるシングルスレッド性能と512bit長のベクトル演算ユニットを持つ重量級のコアということになります。

  HPLと実アプリの性能の乖離から,TOP500のランクを上げても実アプリの性能は上がらない。京コンピュータはHPCGやGraph500では未だに世界1位をキープしているというように,各種アプリで高い性能を出すためには重量級コアの方が良いという判断かと思われます。

  なお,SW26010の計算コアは256bitのベクトル演算器ですが,Post-KのCPUはARMのSVEアーキテクチャを使い512bitのベクトル演算器を備えています。また,Post-Kではマシンラーニング性能を上げるため,FP16の演算をサポートすることになっています。

  Post-Kの設計は2019年のQ3-Q4には終わる予定になっていますから,この設計は既にかなり固まっていると思われます。そして,製造,設置,チューニングに2年を見込んで,2021年のQ3-Q4から運用開始の予定です。

2.ARMがメインストリームのGPUコアを発表

  2018年3月6日のEE Timesが,ARMのメインストリームGPUコアの発表を報じています。発表されたのはMali-G52とMali-G31というGPUで,Cortex-A72やA55 CPUと組み合わせて中級のスマートフォンやディジタルTVなどに使用することを狙っています。

  G52で目新しいのは,AIのInference機能を強化した点です。Mali-G51は処理ユニットが4個だったのですが,G52では処理ユニットが8個に増えました。各処理ユニットは4SIMTの演算ができますから,最大32演算となります。これに加えて,Inference用に,演算器が4個の8bit整数の積和演算ができるようになっています。従って,8bit整数で計算すれば,クロックあたり128積和演算を行うことができます。

  Mali-G31はCortex-A55と組み合わせてより低価格のスマホ用途を狙うもので,G31は8bit整数の4並列演算機能は持っていません。

  これらのGPUと合わせて,D51ディスプレイコアとV61ビデオコアも発表されました。

3.Googleが72-QubitのプロセサでQuantum Supremacyを狙う

  2018年3月7日のHPC Wireが,GoogleがBristleconeと名付けた72-Qubitのプロセサを発表したと報じています。

  以前に作った9-Qubitのプロセサでは,読み出しエラーが1%,Single-qubit gateのエラー率が0.1%,Two-qubit gateのエラー率が0.6%であったが,72-Qubitプロセサでエラー率がどうなるかを調べるのが,目的の一つとのことです。

  また,このチップを使って,新しいアプリケーションや新しいアルゴリズムの開発なども行う計画です。

  そして,72-Qubitあれば,普通のコンピュータより量子コンピュータの方が性能が高いという,いわゆるQuantum Supremacyを達成できると見ています。

4.Intelが低価格の3D XPoint SSDを発売

  2018年3月9日のThe Registerが,IntelのOptane SSD 800Pの発売を報じています。製品は58GBのものと118GBのものがあります。フォームファクタはM.2 2280です。

  Sequential Readは1450MB/s,Sequential Writeは640MB/s,Random ReadやWriteは250,000IOPSとNANDベースのSSDと比べると3倍程度のスピードです。記事では寿命については触れられていません。

  お値段は,59MBモデルが$129,118GBモデルが$199となっています。この容量では,メインのディスクとしては容量不足で,大容量のHDDと組み合わせるか,ノートPCの場合でも256GB以上のSSDと併用し,このOptane SSDは高速バッファとして使うという形が一般的と思われます。そうなると,追加のM.2スロットが必要になりますし,バッファとして使うためにはそのためのドライバも必要になります。


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