最近の話題 2018年3月17日

1.Stephen Hawking博士逝去

  2018年3月14日のHPC Wireが,Stephen Hawking博士が2018年3月14日に逝去したと報じています。また,追悼の記事を載せています。

  Hawking教授は,一般相対性理論と量子力学を宇宙論に持ち込んだ先駆者で,これにより,宇宙論が思索だけでなく,スパコンで計算できる科学になりました。最も有名な成果は,ブラックホールがエネルギーを放射するHawking輻射の理論の提唱です。真空の中でも,粒子と反粒子ができたり,それが結合してなくなったりする揺らぎがあり,この粒子,反粒子ペアの生成がブラックホールのイベント地平の近傍で発生すると,一方はブラックホールに吸い込まれ,他方の粒子が輻射として外に出てくるというものです。

  重力場の変化率が小さい場合は,ほとんどの場合は,粒子,反粒子ともにブラックホールに吸い込まれてしまいますが,ブラックホールが微細で重力場の変化率が大きい場合は,片方が外に出てくる比率が大きくなります。

  Hawking教授は,スパコンが無ければ,宇宙論は,主に,哲学と言っており,宇宙論や高エネルギー粒子物理の計算用の何台ものスパコンの立ち上げを支援してきています。

2.IntelがMeltdownとSpectreのセキュリティーホールを修正したチップを発表

  2018年3月15日のThe Registerが,IntelがMeltdownとSpectreのアタックを阻止できるCPUを開発し,今年後半にも発売できると発表したと報じています。

  MeltdownとSpectreの影響に対するIntelのコメントは,これらの脅威は誇張されていて実際はあまり問題にならないという最初のコメントから,3転4転していますが,最終的には,これらの脅威は問題で,アーキテクチャを変更したチップを作り直すというところに落ち着いたようです。

  この修正は,新たにパーティションを設けて,MeltdownやSpectre Variant 2を突くアタックがカーネルや他のアプリケーションのメモリ領域をアクセスするのを防ぐとのことですが,どのようなメカニズムであるのかの詳細は発表されていません。そして,Spectre Variant 1はソフトウェアパッチで対策するとのことです。

  これの対策の性能に対する影響については,発表では触れられていません。

  これらのアーキテクチャの変更は,次世代のXeon Scalable Processorや8世代目のCoreプロセサに組み込まれ,2018年の後半に出荷されると発表されました。

3.産総研から外部のインタネット接続ができない

  2018年3月15日のYomiuri Onlineが,2018年2月に産総研の業務システムへの不正アクセスがあり,その影響で,1か月あまり経った今も,産総研所内から外部へのインタネット接続ができない状況が続いていると報じています。

  不正アクセスは2月6日に発生し,すぐに業務システムを止めて点検し,安全が確認できたシステムから順次再開しているが,外部へのネット接続は,まだ,遮断された状態とのことです。

  研究者はネット接続を頻繁に使うので,困っている。また,ネットで連絡ができず,外部の研究者に対して恥ずかしい限りというコメントが掲載されています。

  不正アクセス元や情報流出の有無については調査中。ネット接続は今月中には再開させたいとのことですが,1か月以上の遮断というのは時間が掛かりすぎという感じがします。

4.SamsungのNAND Flash工場の停電

  2018年3月15日のThe Registerが,2018年3月9日に発生したSaumsungの平澤のNAND Flash工場の停電を報じています。

  停電は30分程度ですが,製造途中のウェファがダメになってしまうので最大6万枚の損失で,平澤ファブの3月のNAND Flashの出荷量が11%減少してしまうとのことです。これは全世界でみても3.5%の減少で,サプライチェーンやスポット価格には大きな影響がでるとみられます。

5.Qualcommに対して前会長のJacobs氏が買収を検討

  2018年3月16日の日経新聞が,Qualcommの創始者の息子で,3月9日まで会長を務めていたPaul Jacobs氏が,買収を検討していると報じています。

  Qualcommに対しては,Broadcomが敵対買収を仕掛けていたのですが,先日,国防上の問題があるので,買収は認めないとするトランプ大統領の命令が出されました。このため,Broadcomはあきらめたのですが,それに代わって,Jacobs氏が買収を考えているという報道が出てきました。

  Broadcomの提案は約1300億ドル(140兆円)という巨額ですから,Jacobs氏の買収提案に関して資金の出し手として,ビジョンファンドを設立したソフトバンクなどが取りざたされているとのことです。

  

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