最近の話題 2018年4月14日

1.米国はDOEのExaScaleスパコンに$1.8Bを支出の予定

  2018年4月11日のHPC Wireが,米国のエネルギー省は最大3台のエクサスケールスパコンを開発し,その費用はNREを含めて$1.8Bとなるという計画であると報じています。まだ,予算的な裏付けは出来ていませんが,各システムのコストは,開発費を含めて$400M~$600Mとなると見られます。

  米国で最初のエクサマシンは,Intelがメイン,Crayがパートナーとなって開発するA21というシステムです。このシステムはAuroraシステムの仕切り直しのシステムで,2021年にArgonne国立研究所に設置される計画です。それに続くエクサマシン開発はCORAL-2プロジェクトと呼ばれます。CORAL-2で開発するエクサスケールマシンはOak RidgeとLivermoreに設置され,もう1台作る場合には,それはArgonneに設置される可能性があるとのことです。

  Oak RidgeのシステムはFrontierと名付けられており,2021/Q3の納入の予定です。LivermoreのシステムはEl Capitanと名付けられており,Oak RidgeのFrontierより1年遅れの2022/Q3の納入の予定となっています。3台目のCORAL-2システムもEl Capitanと時期は同じになっています。

  CORAL-2に関しては,RFPが出たところで,5月に提案の締め切り,今年の遅い時期に受注する会社が決まると見られます。

2.AI研究者がAIの軍事利用に反対して,KAISTと絶縁 (その後一転して解決)

  2018年4月7日のTheRegisterが,Geoffrey Hinton, Yoshua Bengio, Stuart Russell,氏など著名なAI研究者を含む50人以上の研究者が,韓国のKAISTに対して,絶縁状を送ったと報じています。

  韓国の理工系のトップランクの大学であるKAISTは,韓国の国防企業であるHanwha Systemsと軍事用のAIを開発する研究所を,今年2月に設立しました。これに対して,South Wales大のToby Walsh教授をリーダーとするAI研究者のグループは,人間を殺したり,傷つけたりする判断をAIで自動的にやらせるべきではない。必ず,人間の判断が入ることを保証すべきと要望したのですが,KAISTからは回答が得られていないとのことです。

  このようなロボット兵器は,いったん,作られると拡散を止めることは難しく,特にテロリストの手に渡ったりすると民間人の大量殺戮に使われかねません。

  このため,研究者の団体は,この研究には反対であり,協力しない姿勢を示すため,KAISTを訪問したり,KAISTから研究者を招いたり,KAISTが関連している研究プロジェクトには参加しないと宣言しました。

  このボイコットに関して,2018年4月9日のThe Engineerは,KAISTは,人間による意味のあるコントロールを持たない,人間の尊厳に反するような研究は行わないと宣言して,Walsh教授のグループは,ボイコットを中止したと報じています。

3.AMDがZen 5の開発を開始

  2018年4月11日のThe Inquirerが,AMDがZen 5の開発を始めていることを認めたと報じています。AMDの現在のプロセサはZenアーキテクチャですが,2018年から2019年の初めころにZen2アーキテクチャのプロセサ,2019年末ころにはZen3アーキテクチャのプロセサを出すというロードマップを発表しています。

  Zen 5はこれに続くアーキテクチャのメジャーアップデートとなるとのことです。Zen 5はサブ7nmプロセスで製造されるプロセサで,2021年ころに登場の予定とのことです。どのくらい性能が上がるかなどそれ以外の情報は皆無です。

4.AMDがSpectre V2対応のマイクロコードの出荷を開始

  2018年4月12日のThe Inquirerが,AMDがSpectre Variant 2のセキュリティーホールを修正するマイクロコードのパッチの出荷を開始したと報じています。このパッチは2011年のBulldozerにも使えるとのことです。ただし,マイクロコードのパッチは一般のユーザが適用できるものではなく,出荷先はPCやマザーボードメーカーだけとなっています。

  また,このマイクロコードのパッチと同時にOSのパッチも必要であり,MicrooftのKB4093112を適用する必要があるとのことです。

  もちろん,作りに違いがあるからですが,Intelは一部のプロセサは対策できないと諦めたのとは対照的です。

5.QualcommがIoT用の2種のチップを発表

  2018年4月11日のThe Inquirerが,QualcommのQCS605とQCS603というIoT向けの2種のチップの発表を報じています。カメラを搭載するデバイス向けのチップで,AI機能を搭載して対象物を認識し,ロボットなどでは障害物の回避などを行わせることができるとのことです。QCS605と603は10nmプロセスで作られます。

  QCS605はARM Cortex-A75ベースのGold Cryo PUコアを2個と,A55ベースのSilver Cryo CPUコアを6個搭載しています。そして,QCS603はGold Cryoを2個とSilver Cryoが2個とのことです。さらに,Adreno GPU,Hexagon 685ベクタプロセサ,Spectra 270イメージシグナルプロセサなどを搭載しています。そして,2×2 802.11ACWiFi,Blue Tooth 5.1,各種オーディオ処理機能も搭載しています。ということは,スマホ用のSnapdragonとかなりの部分は一緒という感じです。

  これらのチップは,既にOEMにはサンプル出荷しており,今年の後半から製品に組み込みが始まるとのことです。

6.NVIDIAが世界のTop10半導体メーカーにランクイン

   2018年4月12日のEE Timesが,2017年に$8.57Bの半導体を売り上げ,世界で10位の半導体メーカーとなったと報じています。2016年の売り上げは$6.03Bで,2017年の伸びは42.3%となっています。

  実は,2017年はメモリの伸びが大きく,Samsungが53.6%伸びてIntelを逆転してトップに立ち,SK Hynixは81.2%伸びて5位から3位に躍進,Micronは79.7%伸びて7位から4位に躍進しているのですが,Intelの伸びは11.7%で,メモリ以外を主力とするメーカーとしては,NVIDIAの伸びは驚異的です。


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