最近の話題 2018年6月23日

1.GoogleがクラウドでのTPUの提供を拡充

  2018年6月20日のThe RegisterがGoogleクラウドでのTPU提供の拡充を報じています。TPUのクラウド提供は2月17日の話題で紹介していますが,この時は米国での提供だけでした。それを今回は,us-central1に加えてeurope-west4とasia-east1での提供を開始したとのことです。

  また,今回はPreemptibleという安いクラスの提供が追加されました。Normalのジョブが混んでくると待たされるのですが,us-central1のNormalが$6.5/Hourであるのに対して,Preemptableジョブは$1.95/Hourと3割の価格になっています。

  なお,Normalの価格は,us-central1は$6.5/Hourですが,europeは$7.15/Hour,asiaは$7.54/Hourと少しずつ高くなっています。Preemptableの時間単価はこれにスライドしてeuropeでは$2.145,asiaでは$2.262となっています。

2.Sandia国立研究所が世界最大規模のARMベーススパコンAstraを設置

  2018年6月19日のThe Inquirerが,HPEのAstraスパコンについて報じています。2GHzクロック,28コアのCaviumのThunder X2プロセサを2個使用するHPEのApollo 70サーバを計算ノードとし,全体で2592台の計算ノードを持つシステムで,全コア数は145,000個,ピーク演算性能は2.3PFlopsになります。消費電力は1.2MW程度とのことです。

  AstraはNNSAのマシンで,Sandia国立研究所に設置され,核弾頭管理に関連した研究に使われると見られます。

3.IBMがアナログメモリを使って深層学習を行うチップをNatureに発表

  2018年6月18日のHPC Wireが,Natureに発表されたアナログメモリを使う深層学習チップについて報じています。

  人工ニューロンは,多数の入力に入力ごとの重みを掛けて,全入力の総和を計算します。通常は,重みはメモリに格納され,そのニューロンの計算処理を行うときに読み出されてニューロンに送られます。この掛け算と加算はディジタル回路で行われます。

 しかし,アナログで重みを不揮発性メモリに記憶して置けば,毎回読み出して,ニューロンに送ると言う処理が不要になります。また,重みを抵抗値,入力を電流値にすれば,積は,単純に抵抗の両端の電圧差を求めればよいことになり,ディジタル回路に比べて大幅に簡単に計算を行うことが出来ます。

  問題は,アナログ計算の精度で,ReRAMなどではなかなか十分な精度が得られないところが問題ですが,Natureの論文では,IBMはPCM型の不揮発メモリを使い,ディープラーニングの学習に使える精度を実現したとのことです。

  実用にどの程度近づいているのか分かりませんが,実用化できれば,ディジタル版と比べて低電力で高密度のシステムが実現できるとみられ,エッジデバイスでのディープラーニングに最適です。

4.富士通がPost KスパコンのプロトタイプARM CPUを完成

  2018年6月22日のTop500 Newsが,富士通と理研が共同で,Post Kのプロトタイプチップが完成したと発表したと報じています。本番のPost-Kは2021年稼働の予定ですから,今回のチップは”Functionality Field Trial"用とのことです。ARMアーキテクチャの使用,特にSVEは使用経験がないので,ソフト開発用やチューニング用にチップを作ることにしたと思われます。

  このチップは48コア+2コアあるいは4コアのアシスタントコアを持つとのことです。そして,半精度の浮動小数点演算などディープラーニングなどの用途もカバーする設計とのことです。

  このチップは6月24日からフランクフルトで開催されるISC 2018で展示され,8月のHot Chipsでより詳細が発表される予定です。

  なお,2021年の本番用のチップは,このチップでの知見をフィードバックして,新しい半導体プロセスで,再度,設計することになると思われます。

5.NVIDIAがHot Chips 30での次世代メインストリームGPUの発表を取り下げ

  2018年6月18日のSemiAccurateが,Hot Chips 30で予定されていたNVIDIAの“Next Generation Mainstream GPU” by Stuart Obermanという発表が取り下げられていると報じています。製品の発表も遅れるのでしょうか?

6.IntelのKrzanich CEOが突然辞任

  2018年6月21日のCNBCが,IntelのBrian Krzanich CEOが突然辞任したと報じています。同社のNon-fraternizaionポリシーに違反したという理由で,自発的に辞表を出したという報道もあれば,強制されて辞任したという報道もあります。同社のRobert Swan CFOが臨時CEOを務めるとのことです。また,Intelは,正式な後任CEOの選考を進めるとのことです。

  Intelのマネージャは,部下と特別な関係をもってはいけないという規則があるのですが,調査委員会は,Krzanich氏はIntelの従業員と合意の上で特別な関係を持っていたと認定しました。その結果,Krzanich氏は役員会に辞表を提出し,受理されたとのことです。

  関係があったのは数年前のことですが,会社がそれを知ったのは最近のことだそうです。また,Krzanich氏が関係を持った相手についの情報は公開されていません。

  なお,日経は,Krzanich氏の突然の辞任はIntelにとって痛手と書いていますが,海外のメディアでは,これで大胆な変革が可能になるので好ましいとの見方があり,Krzanich氏の辞表提出に慰留の声はなく,すんなり受理されたという報道もあります。



  


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