最近の話題 2018年9月29日

1.AMDはデスクトップCPUの30%の市場を占める

  2018年9月27日のThe Inquirerが,台湾のDigitimesの報道を引いて,AMDがx86のデスクトップCPUの市場で30%を占めると予想しています。

  Intelの10nm(他社の7nm相当)のプロセスでの量産立ち上げが遅れているだけでなく,14nmプロセスも調子が良くないようで,デスクトップ用のCoreプロセサも品薄状態になっており,この状況は少なくとも今年いっぱいは続くとみられるとのことです。

  Intelとしては利益の大きなXeonなどを優先的に製造しているようで,そのしわ寄せがPC用のCoreプロセサに行っています。その結果,各社はAMDのRyzenプロセサの購入に向かっています。AMDは7nmプロセスの第二世代RyzenではTSMCがFabになり製造キャパシティーが大きくなることもプラスに働いています。その結果,Digitimesは,AMDがデスクトップ市場で30%の市場シェアを占めるようになると報じています。

2.Intelは14nm製品の増産を発表

  2018年9月28日のEE Timesが,Intelの14nm製品を増産するというBob Swann臨時CEOのオープンレターの発表を報じています。Intelは14nmの増産のため,オレゴン,アリゾナ,アイルランド,イスラエルのFabに合計$1Bの設備投資を追加し,需要に対応するため増産を行うとのことです。

  これにより,$69.5Bの年間売り上げ目標を達成できると述べています。しかし,今から投資して今年の売り上げに間に合うのでしょうか。

3.ドイツで2台の大型スパコンが稼働

  2018年9月26日のHPC wireがドイツの2台の大型スパコンの稼働を報じています。1台は,Leibniz Supercomputing  Center (LRZ)のSperMUC-NGで,IntelのSkylake CPUを12,960個使用し,ピーク演算性能は26.9PFlopsとなっています。11月のTop500には出てくると思われますが,現状では,HPLの性能は発表されていません。なお,SuperMUC-NGはすべてSkylakeで,クラウドには32ノードの2個のV100 GPUを持つノードがありますが,本体にはGPUは使っていません。

  現在のヨーロッパの1位はスイスのPiz Daintの19.6PFlopsですので,SuperMUC-NGがHPLでピーク演算性能の72.9%以上を出せば,ヨーロッパ1位が入れ替わることになります。

  SuperMUC-NGは温水の直接冷却を使うLenovoのシステムで,全て再生可能エネルギーの電力を使用しているとのことです。

  もう1台は,Forschungszentrum JülichのJUWELSで,フェーズ1のシステムはピーク演算性能が9.9PFlops,HPLは6.2PFlopsでTop500 23位にランキングされています。NVIDIAのV100 GPUを持つノードが48ノードありますが,現在のHPLの測定には使っていません。

  JUWELSは2019年にモジュールを追加してピーク演算性能を50+PFlops引き上げることになっています。

4.ARMが2重化ができるCortex-A76AEを発表

  2018年9月26日のEE Timesが,ARMのCortex-A76AEの発表を報じています。自動運転用のプロセサはASIL-Dという基準を満足することが要求されます。そして,ASIL-Dでは処理系が冗長度を持ち,一方が故障しても他方が代替して正常に処理を続けられることが必要になります。

  このような要求に対応するものとしてCortex-Rがありますが,最高レベルのARMコアではありません。これをARMのハイエンドのコアで二重化をサポートするのがCortex-A76AEです。Cortex-A76AEでは,2つのコアが完全に同期して同じ処理を行うLock Stepモードと独立に動くモードをを持つSplit Lockという機能を持っています。

  しかし,NVIDIAのDrive PXは自社開発のARMコアでこのような機能を実現しており,IntelもMobile EyeでMIPSプロセサでこのような機能を実現しており,ARMは,まだ,キャッチアップモードです。

5.Global Foundriesは12nmプロセスと22nm FDSOIプロセスの改良を行う

  2018年9月26日のEE Timesが,7nmプロセスの開発を止めたGlobal Foundries(GF)は12/14nmノードのプロセスの高性能化と22nm FDSOIの高性能化という方向に向かうと報じています。

  また,GFの顧客で7nmプロセスを使うのはAMDとIBMだけで,それらの顧客は,GFの7nmプロセスは時期が遅く,製造能力も小さく,要求と合わないとのことで,GFの7nmには不満で,使わないと袖にされたとのことです。AMDとIBMにそっぽを向かれたのではGFとして7nmプロセスを開発する意味はなく,12nmの高性能化と22nm FDSOIの高性能化に活路を見出そうという計画になっています。

  その計画によると,12LPと14LLPプロセスは,一般の16nmプロセスと比較すると,2016年4Qに提供を開始した14LLPは面積が0.97倍で,現在提供中の12LPは0.8倍の面積。次の12LPv2では22%面積を縮小して0.76になるとのことです。

  そして,22FDXの方は一般の28nmTagお比べると,現在提供中のGen3では0.76倍の面積,次のGen4では0.7倍に縮小するとのことです。

  しかし,これらのプロセスが何時提供されるのかは明らかにされていません。

6.MicrosoftがAzureにデータを入れるAzure Data Boxの提供を開始

  2018年9月26日のThe Registerが,MicrosoftのAzure Data Boxの提供開始を報じています。

  MicrosoftのOffice 365には1TBのOneDriveストレージが付いてきますが,1TBのデータをネットワーク経由でAzureに入れるのは大変で,忍耐力が必要です。これが1PBとなると事実上ネットワークでの転送は無理です。

  そのような大量データのアップロードのツールがAzure Data Boxです。Azure Data Box Heavyは1PBのストレージを搭載しキャスターのついた箱で40Gbpsのコネクタが複数個ついています。これにデータを入れてFedexでMicrosoftに送るとあとは向こうでAzureに入れてくれるというサービスを提供しています。ただし,これは米国内だけのサービスで,日本では使えないようです。

  そして,普通のAzure Data Boxは容量は100TBで,キャスターなしの箱だそうです。

  このようなストレージ自体を送ってクラウドに入れるというのはAmazonでは,以前からSnowballというハードウェアで行われています。80TBのSnowballの10日間の使用料金は$250で,Azure Data Boxの料金はThe Registerの記事には載っていませんが,これに対抗できるレベルの料金と思われます。

inserted by FC2 system