最近の話題 2018年10月13日

1.Intelが第9世代のCore CPUを発表

  2018年10月8日のTom's Hardwareが,Intelの第9世代Core CPUの発表を報じています。ニューヨークで行われた発表イベントでは美人プロゲーマーのStephanie Harvey氏が登場するなど,第9世代Coreプロセサのゲーム性能の高さをアピールする発表でした。

  今回発表された最上位のプロセサは,i9-9900Kで,8コア/16スレッドで,ベースクロックは3.6GHzですが,シングルコアのターボ状態では5GHzまで引き上げられます。そして,液体窒素冷却では1コアなら7.4GHzという記録もあるようです。

  i9-9900Kは16MBのLLCを搭載し,TDPは95Wとなっています。また,i9-9700Kはベースクロックは3.6GHzですが,ターボが4.9GHzとなり,LLCが12MBとなっています。面白いのはi9-9700は8コア/8スレッドでコアのスレッド切り替えをなくして,多少,シングルスレッド性能を上げています。

  これらに加えて,MeltdownとForeshadowのセキュリティーホールをハードウェアでふさいでいます。そして,その他のSpectreやMeltdownのバリアントに対してもOSとMicrocodeの合わせ技などで防いでおり,少なくとも,現在,知られている投機実行に起因する攻撃に対する防御が組み込まれているようです。

  もちろん,この発表はAMDのRyzen対抗を意識したもので,i9-9900Kには$488という値段がつけられています。以前なら$1000を超える値段がついてもおかしくないのですが,AMD対応で,この値段になったものと思われます。Ryzen 7 2700Xはベースクロック3.7GHz,ターボで4.3GHzでTDPは105Wですが,お値段は$329とほぼ2/3の値段でから,Ryzenの方がお買い得の感じではありますが,シングルスレッド性能が高い点をどう評価するかです。

  描画などではGPUの並列処理が効きますが,ゲームロジックはあまり並列処理がなく,シングルスレッド性能が効きます。eスポーツでは反応のスピードが勝敗を分けますから,CPUが速くて応答速度が速いことは大きなメリットで,ミリオン$$$の賞金を狙うためには,PCに1万ドルを掛けるのは当たり前の世界です。プロゲーマーはRyzen 7 2700Xよりもi9-9900Kを選ぶというのは理解できます。

  また,同時にXeon W-3175Xというワークステーション用プロセサの発表も行われました。Xeon W-3175Xはオーバクロックのリミットを外したサーバCPUとも言えるもので,28コア/56スレッドでベースクロックは3.1GHz,1コアのオーバクロックでは4.3GHzまでクロックを引き上げられます。ただし,TDPは255Wと膨大です。

  なお,これらのプロセサではSTIM(Solder Thermal Interface Material)というものが使われています。詳しい説明はありませんが,従来はチップとリッドの間はサーマルグリースなどが使われていたのですが,これを半田のような金属性の物質にして,熱伝導を改善したようです。熱伝導が良くなれば,その分,オーバクロック状態で動ける時間が長くなったりするのでゲームを含めて性能改善に効果があります。

2.SuperMicroのスパイチップ組み込みサーバ事件は米国の陰謀か?

  2018年10月6日のEE Timesが,SuperMicroが製造したAmazonとApple向けのサーバにスパイチップが組み込まれていたという報道は,米国の陰謀だったかもしれないというアナリストの見方を方しています。

  ユーザであるAmazonとAppleも,製造者であるSuperMicroもスパイチップが見つかったという事実はないと否定しているのですが,中国に製造を委託するのは危険かもしれないという見方が広がっています。結果として,リスクを避けるため,米国の企業は国内製造に回帰してきています。

  報道が事実であったかどうかには関係なく,多くの経営者がそうかもしれないと思ったことで,中国での製造が米国に回帰して米国政府が意図した効果が実現されたわけです。なんとうまい手でしょう。

  問題は,このような障壁で守られた米国企業の競争力がさらに低下することで,アメリカが井の中の蛙になってしまうことです。井の中の蛙で暮らせるうちは良いのですが,のんびりしているうちに大きく遅れてしまったら,とは考えないのでしょうかね。

  また,短期的には中国企業の組み立てに比べてコストが上がることから,物価が上がることも考えられます。

3.Bloombergはスパイチップの新しい証拠を発見

  2018年10月10日のBllombergが,米国の大手の通信会社のSuperMicro製のサーバでスパイチップが発見されたと報じています。発見者は,この会社にコントラクタとして雇われているセキュリティーの専門家のYossi Appleboum氏です。前回はニュースソースは明らかにされていなかったのですが,今回は,守秘義務契約があり通信会社の名前は出せないのですが,スパイチップの発見に関しては,Appleboum氏は顔を出して証言しています。

  前回の報道ではブートFlashの内容を変更すると書かれていましたが,今回のチップはEthernetのポートに仕掛けられていたとのことです。そして,異常な通信を外部に送っており,発見されたとのことです。

4.オーストラリアのDUGが単精度で250PFlopsのクラウドを建設

  2018年10月11日のHPC Wireが,オーストラリアのDownUnder GeoSolutions(DUG)という会社が,米国のヒューストンに石油探査用のアプリを搭載した単精度250PFlopsのクラウドを建設すると報じています。この規模はSummitにはかなわないとしても,世界トップクラスです。

  McCloudと呼ぶこのクラウドシステムは消費電力15MWで,4万台以上のサーバからなっているとのことです。なお,このシステムはSkybox社の20エーカーのヒューストンキャンパスに設置されるとのことです。

  McColudはpolyalphaolefinを使う浸漬型の液例システムで,通常のシステムに比べて45%低い消費電力で,PUEは1.05以下になるとのことです。

  McCloudは,2019年2Qに稼働の予定です。



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