最近の話題 2018年11月18日

1.Top500の1位,2位を米国が独占

  2018年11月12日に発表されたTop500では,米国のSummitが1位,同じく米国のSierraが2位となり,3位が中国の太湖の光,4位が中国の天河2Aとなりました。そして,Summitは前回の122.3PFlopsから143.5PFlopsに性能が上がっています。これはコア数が若干増えている効果もありますが,大部分は,チューニングの改善で性能を引き上げたものです。

  Sierraの方はコア数は変わらず,71.61PFlopsから94.64PFlopsに性能があがり,太湖の光を抜いて2位となりました。

  なお,4位は天河2A,5位はスイスのPiz Daintで,このシステムもコア数が増えています。6位が米国のTrintyで,7位が日本のABCIとなっています。8位はドイツのSuperMUC-NGで,これは今回新登場のシステムです。

  日本のシステムでは,Oakforet-PACSが14位,京コンピュータが18位,Tsubame3.0が22位と続いています。

  性能/電力を競うGreen500は,前回に引き続いて理研のShoubu System Bが1位を獲得しました。しかし,前回の性能ではTop500落ちになってしまうので,コア数を増やし,1.063PFlopsに性能を引き上げています。その結果,Flops/Wは若干下がったのですが,事情はNVIDIAのDGX Saturn V Voltaも同じで,1位がShoubu System B,2位がDGX Saturn V Voltaの順番は変わっていません。

  そして,Green500の3位にSummitが入り,4位がABCI,5位がTSUBAME3.0,6位がSierraとなりました。1位と2位のシステムは比較的小さい1PFlops程度のシステムですが,3位から6位の巨大スパコンが高い性能/電力を達成していることは注目に値します。

  もう一つのHPCGでは,1位がSummit,2位がSierraとなりました。Summitは2.93PFlops,Sierraは1.80PFlopsと,この2システムはHPCGでは初めて1PFlopsを超えました。そして,3位に京コンピュータが残り,4位が米国のTrinityで6位がABCIとなっています。2011年に初登場の京コンピュータは普通なら既に退役している時期ですが,HPCGで3位,Top500でも18位というのは驚異的な長寿のシステムです。ただし,性能/電力は0.83GFlops/Wと最近の大型スパコンの1/10以下で,やはり年齢は隠せません。

2.SC18でCrayがShastaの計算ノードを展示

  2018年11月11日からのSC18での展示で,Crayが新スパコンであるShastaの計算ノードの展示を行っていました。ShastaはLBNLのNERSC-9スパコンでの採用が決まっています。

  従来のCrayスパコンは長いブレードにCPUとインタコネクトLSIなどを搭載していたが,Shastaでは,CPU部とインタコネクトのスイッチに分離されており,Compute BladeとSlingshotのIntegrated SwitchとTop of the Rack switchが展示されていました。Compute Bladeは水冷のコールドプレートは4個しか見えないのですが,反対側のPCBでおおわれている部分の下にも4個のCPUがあるのではないかと思われます。展示されていたボードではDIMMは64枚で,8CPUのブレードとするとCPUあたり8DIMMという計算になります。とすると,CPUはThender X2かEpycということになります。

  ネットワークはInfiniBandも選択できるはずですが,展示されていたのは,CrayのプロプライエタリのSlingshotのボードでした。SlingshotのIntegrated Switchは24ポート,Top of the Rack switchはコネクタが16個ついています。

3.CoolITがCascade Lake-AP用の水冷クーラーを開発

  IntelのCascade Lake-APは,Cascade Lakeを2個搭載したMCMモジュールなので,消費電力も2倍となり,350W程度となると見られます。とすると,空冷で冷やすことは難しく水冷が必要になります。ということで,2018年11月14日のHPC Wireは,CollIT社はIntelと協力して専用のクーラーを開発していると報じています。完成時期は2019年のH1となっています。

  コールドヘッドの写真は載っていますが,水を供給するCoolant Distribution Unitは従来のものを使うのでしょうか。とすると,Cascade Lake-APが1個とか2個のシステムは考えにくく,大量に使うデータセンターのサーバ用に限られるのではないでしょうか。

4.Baiduがスイスの超低電力ニューロチップの開発スタートアップに出資

  2018年11月16日のEE Timesが,BaiduのベンチャーキャピタルがスイスのaiCTX(ai-cortexと発音)社に$1.5MのpreA出資を行うと報じています。aiCTXはスイスのチューリッヒ大やETH Zurichの研究成果を製品化するために2017年に設立されたスタートアップです。

  aiCTXのチップがこれまでのニューロチップと異なるのは,スパイク型のニューロンを使い,回路的にもディジタルとアナログの混合で,サブmWからmWという超低消費電力を実現するという点です。結果としてAlways Onのニューラル処理をエッジだけで実現できるとのことです。

  1M個のスパイク型ReLUニューロンを集積するDynapCNNと呼ぶチップを開発しており,2019年2Qにサンプル出荷の予定しているとのことです。

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