最近の話題 2019年1月12日

1.IntelがCESで10nmプロセスのチップの年内出荷を発表

  2019年1月7日のEE Timesが,CESにおけるIntelの発表を報じています。

  まず,10nmプロセスを使い,Sunny Coveアーキテクチャを使うIce Lakeプロセサを発表しました。WiFi6,Thunderbolt3,Deep Learning Boostといった単語が使われていますが,それ以上の詳細は明らかにされていません。

  クライアント向けIce Lakeプロセサは今年のクリスマスシーズンには間に合うとのことで,やっとというか遂にというか,10nmプロセスでの量産に目途がついたようです。ただし,当初計画していた10nmプロセスと比べるとゲート密度は多少低くなったプロセスのようです。なお,日経の記事では,7nmプロセスの製品を出し始めた会社もあり,これから10nmの製品を出して競争力があるのかというような書き方が見られますが,これは誤解で,Intelの10nmプロセスはTSMCやSamsungの7nm相当の密度を持っており,遅れは,半年から1年くらいと思われます。Foverosのような3D実装も開発しており,Intelはプロセス的には十分,競合できるようになると思われます。

  CESで,Ice Lakeと現世代のiCore 8プロセサで多数の写真から水が写っている画像を探すデモでは,Ice Lakeの方が1.5倍速かったとのことです。これは,今年の終わり近くに出荷する本当の製品では約2倍速くなるそうです。

  なお,データセンター向けのIce Lakeの出荷は2020年の予定です。サーバ用のプロセサの方が多くのテストを必要とするので,これはいつものことです。

  また,CESでは,LakefieldというSoCを見せました。10nmのIce Lakeコア1個と4個のAtomコアをFoverosで集積しており,big-LITTLEと同じやり方で,非常に低電力のプロセサを作ろうとしています。Lakefieldは,今年の遅い時期には量産して,Project Athenaを実現する一つのピースになると見られます。

  ディープラーニング関係では,Nervana Neural Network Processor for Inference(NNP-I)は,今年の遅い時期には量産。Spring Crestと呼ばれるNNP for Trainingも,今年の遅い時期に出てくるとのことです。

  さらに,Snow Ridgeと呼ばれる10nmプロセスを使う5Gのベースステーション向けの network SoCも,今年後半に出てくると発表されました。

2.AMDがCESでGPUとしては初めての7nmプロセスを使うRadeon Vega IIを発表

  2019年1月9日のThe Inquirerが,CESにおけるAMDの7nmプロセスを使うRadeon Vega II GPUの発表を報じています。今回はCPUに関しては詳細は発表されませんでしたが,この発表の中で,今年の中頃には7nmプロセスを使うRyzenデスクトップCPUを出すということは言及されました。

  7nm Vega 20は60個のCompute Unitを搭載し,1.8GHzクロックで動作する3840演算器を持っています。メモリは16GBのHBM2で,バンド幅は1TB/sです。

  AMDの発表によると,これまでのトップエンドのGPUボードに比べて,同じ消費電力で25%高い性能を持つとのことです。また。4KゲームではRX Vega64と比較して,25%から42%性能が高いとのことです。

  発売は2月7日で,お値段は$699となっています。

  また,Ryzen 3000モバイルプロセサは,4コアあるいは2コアで,4GHzまでクロックをブーストできます。Ryzen 3000の特徴は,一般的な使用状態であれば12時間のバッテリライフ,あるいは10時間のビデオのプレイバックができるという点で,モバイルのプロセサとして威力を発揮しそうです。

  今回の発表では7nm CPUについての詳細は発表されなかったのですが,Cinebenchでは2023をたたき出し,これはIntelのCore i9-9900KやamDのRyzen 7 2700X CPUを超えるものであると述べられました。

3.HuaweiがARMアーキテクチャのサーバ用のKunpeng CPUを開発

  2019年1月7日のEE Timesが,Huaweiが7nmプロセスを使うKunpeng(鯤鵬)と呼ぶサーバ用CPUを発表したと報じています。大辞林によると,鯤(Kun)は想像上の巨大な魚,鵬(Peng)は想像上の巨大な鳥という意味だそうで,鯤鵬はこの上もなく大きなもののたとえと書かれています。

  HuaweiのKunpeng 920は64個のarm-v8コアを集積し,クロックは2.6GHzで,メモリは2933MT/sのDDR4を8チャネル持ち,2つの100G Ethernrtポートと,CCIXと共用できるPCIe Gen4ポートを備えています。

  Kunpeng 920はSPECintで930と,MarvellのThunder X2やAmpareのeMAGなどの競合プロセサと比べて30%高い性能を持ち,電力効率は30%高いとのことです。なお,これらの競合プロセサは16nmプロセスを使い,コア数も32ですから,この程度の差がついても不思議ではありません。

  そして,HuaweiはTaiShan 2280, TaiShan5280/5290とTaiShan X6000というサーバを発表しました。TaiShanは泰山と思われます。2280は2UのサーバでKunpeng CPUを2ソケット備え,2.5インチSSDなら28台収容できます。5280/5290は4UでCPUなどは同じですが3.5/2.5インチのディスクを40/72台収容でき,ラック当たり10PBの容量になるストレージサーバ用です。X6000は2Uに4ノードを収容する高密度サーバで,ラック当たり10240コアを収容できますが,CPUに場所を取られるので,2.5インチのディスクの搭載は6台までです。

  HuaweiはKunpeng 920を外販する計画はなく,自社のサーバだけに使用するとのことです。Huaweiはx86サーバなどは外販しており,TaiShanサーバは外販するのではないかと思われますが,価格や時期などは発表されていません。

4.UMCが福建省晋華集成電路への協力を打ち切りか

 2019年1月4日の日経電子版が,中国の福建省晋華集成電路(JHICC)への協力を大幅に縮小し,事実上,協力チームを解散することが分かったと報じています。

 JHICCは約5900億円を投じて,UMCの支援を受けてDRAM工場を建設しているとのことです。このプロジェクトは,中国の3大半導体メモリ量産プロジェクトに位置付けられているそうです。

  しかし,米国の連邦大陪審は,UMCとJHICCが米国のMicronの技術を盗用しているとして,産業スパイの罪で起訴する方針とのことです。

  これを受けて,協力を続けると,米国の制裁でUMCの台湾の工場でも米国の半導体製造装置の導入が制限されるおそれがあります。そうすると,装置の保守などもできなくなり,UMCの受託ファブビジネスの根幹が揺らぐことになります。そのため,JHICCへの協力は,当面,ストップということになりそうです。

  米国が半導体製造装置の供給を止めれば,日本の装置メーカーも供給を続けることは難しいとみられ,通信機器大手のZTEがカギとなる米国製のチップ供給を止められて経営危機に陥ったことの二の舞になってしまいます。

  スパコンのケースと同じで,中長期的には中国は半導体製造装置も内製化を図ると思われますが,製造装置は半導体ファブよりノウハウの塊ですから,時間が掛かると思われます。

5.GraphCoreが$200Mの投資を集め,従業員を3倍増

  2018年12月18日のThe Registerが,GraphCoreが12月に$200MのDラウンドの投資を集め,2017年末に71人であった従業員数を3倍に増やすと報じています。GraphCore社はイギリスのBristolに本社があるのですが,本社やロンドン,オスロ,パロアルトのオフィスを増員し,新たに,北京や新竹にもオフィスを開くとのことです。

  なお,DELLはGraphCoreに出資しており,GraphCoreのIPUを使ったPCIeカードを開発しています。このカードは2個のCollosus GC2 IPUを搭載し,2PFlops以上のAI Flopsを持ち,ほぼ1PB/sのメモリバンド幅を持っていると発表されています。


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