最近の話題 2019年1月26日

1.ASC 2019 Student Cluster Competition

  2019年1月24日のHPC Wireが,ASC2019のStudent Cluster Competitionについて報じています。ASC SCCには200以上の大学から300以上のチームが参加しています。1月21,22日に行われたのはトレーニングという名前の説明会で,予選は3月3日までにHPL,HPCGの実行結果やその他のアプリのプロポーザルなどをe-mailで送付し,委員会が20の予選通過チームを選びます。

  今回の課題は,HPLとHPCGに加えて,Community Earth System ModelとSingle Image Super-Resolutionの2つのアプリの実行です。SISRはGANを使ってボケた写真を鮮明にする処理で,学生チームが準備期間中にPyTorchで書かれたモデルを改良して処理時間を短縮し,画像の品質を上げるというタスクを行う必要があります。

  本選は4月21日~25日に大連のDalian University of Technologyで開催されます。


2.DeepMindのAlphaStarがStarCraftでプロゲーマーを撃破

  2019年1月25日のThe Registerが,Google傘下のDeepMindが,Blizzard Entertainment社のStarCraft IIというゲームで,プロのゲーマーに勝ったと報じています。

  StarCraftは複雑な戦争ゲームで,ユニットの呼ぶ自分の部隊を指揮して移動させて,資源の採掘や壁の建設などを行わせて,戦いが有利になるようにしていきます。いろいろな目標があり,どのよう戦略を採り,実行していくかが問われます。

  DeepMindは3年前からBlizzardと協力してStarCraftをプレイするAIボットを開発してきており,その結果をこのほど発表しました。TLOと呼ばれるプロのプレーヤーは世界ランク44位で,このプレーヤとの対戦は5-0でAlphaStarの勝ち。MaNaと呼ばれる世界ランク13位のプレーヤとの対戦も5-0で勝利したとのことです。しかし,MaNaとの対戦では,MaNaが買ったこともあったそうです。

  AlphaStarは,最初は人間のプレイを学習し,次にMulti-Learning reinforcementでボット同士を対戦させて学習させたとのことです。16台のGoogle TPU 3.0を使って14日間,人間の対戦ならば200年分の学習をしたそうです。学習ができたモデルを使っての対戦はデスクトップのGPUで実行できるとのことです。

  なお,AlphaStarのプレイの速度は280  APM(Actions Per Minute)で,人間のプロの方が速いとのことです。

  StarCraftはゲームですが,非常に長いシーケンスの予測を必要とし,この技術は天気予報や気候モデルにも役立つとDeepMindのHassabis CEOは述べています。

3.フランスがAIにフォーカスしたスパコンJean Zayを導入する

  2019年1月22日のHPC Wireが,フランスがAIにフォーカスしたスパコンを設置すると報じています。2次大戦中には親独政権に反対し,科学技術と芸術の振興に功績のあった政治家のJean Zay氏にちなんでJean Zayと呼ばれるこのスパコンはHPE製のSGI 8600で,次世代Xeonを使うノードが1528台,Tesla V100を使うノードが261台で,使われるV100 GPUの個数は1044基となっています。CPU,GPUは水冷になっています。インタコネクトはOmniPathを使っています。

  ピークの演算性能は14PFlopsと書かれています。ストレージはDDN製で,バンド幅は300GB/s以上になるとのことです。

  スケーラブルなマシンラーニングをとAIアプリケーションを推進し,従来のHPCワークロードの実行も改善するとのことで,日本のABCIのフランス版のようなスパコンです。

  Jean Zayは,フランスのCNRS(National Center for Scientific Research)の中にあるIDRISに設置されることになっています。なお,CNRSは1939年にJean Zay氏によって設立されたのだそうです。

  今年の6月から工事が行なわれ,稼働開始は今年の10月からの予定ですが,稼働すればフランスでは第2位の規模のスパコンになる予定です。

4.Google Homeなどの盗聴を防ぐProject Alias

  2019年1月18日のThe Inquirerが,Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカの盗聴を防ぐProject Aliasについて報じています。Goggle Homeなどの巣m-とスピーカは常に室内の音を聞いていて,米国では,その録音が殺人事件の証拠として使われるなど,意図しない録音に対する危惧が広がっています。

  これに対抗するのがProject Aliasで,Google Homeなどの上に被せる形状で,室内の音が録音できないようにします。これだけならスマートスピーカを覆うカバーで良いのですが,Project Aliasは,Raspberry Piと2個の小型スピーカとマイクアレイからなっており,通常は,スマートスピーカにはホワイトノイズを聞かせます。

  そして,例えば,”OK Google”などのホットワードが発せられると,RaspberryPiが認識して,ホワイトノイズを止めて質問が聞こえるようにして,スマートスピーカが動作するようになります。なお,ホットワードはProject Alias側で自由に変更することができます。

  Project Aliasは,いわゆる製品ではなく,作り方が公開されており,RaspberryPiで動かすコードもGithubで公開されています。また,3Dプリンタで作るというカバーも洒落ています。



  

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