最近の話題 2019年2月2日


1.IntelがMellanoxに$6Bの買収提案か?

  2019年1月301日のHPC Wireが,IntelがMellanoxに$6Bの買収提案を出したという報道があると報じています。報道したのはイスラエルのCalcalistというメディアです。

  MellanoxはHPCネットワークとしては事実上の標準となっているInfiniBandの独占的なサプライヤーで,ハイエンドのEthernet機器でも主要なベンダーです。

  一方,IntelもInfiniBandと競合するOmni-Pathを持っているのですが,10%程度のシェアにとどまっています。

  従来使われてきたSANやiSCSIに代わってNVMeが使われ,ネットワーク媒体はEthernetやInfiniBandを使うNVMe over Fabricが拡がっており,InfiniBandや高速Ethernetの重要性が増しており,IntelがMellanoxの買収を考えるのは理解できます。

  しかし,MicrosoftがMellanoxを買収という噂も以前から流れており,まだ,Intelの買収提案で本決まりとなるとは限りません。

2.UberのAIデータセンター

  2019年2月1日のEE Timesが,DesignConでのUberno発表を報じています。Uberは配車サービスが本業ですがUber Eatsのリコメンデーションもやっています。配車サービスでもどのように車を動かすのが効率的かなどAIを利用する局面はありそうです。

  ということで,Uberは社内にAの開発チームを持ち,1ダース以上のディープラーニングモデルの開発を行っているそうです。また,AIサーバやストレージサーバの自社開発も行っているとのことです。

  現在はNVIDIAのGPUを使い,EyerisやGraphcore,Wave ComputingのAIエンジンの評価も行っているのですが,NVIDIAのNVlinkは他社には使えないし,CCIXはサポータは多いがNVlinkとは非互換という問題があると指摘しています。

  それはともかく,この記事が興味深いのは,Uberのデータセンターの規模が明らかにされたことで,Uberは米国に2つ,ヨーロッパに1つの巨大データセンターを持ち,6か所程度の小さいデータセンターを世界中の設けているそうです。巨大データセンターは5Mw級の規模だそうです。

  Uberは1日に15M回の乗車を世界の65か国の600都市で捌いており,かなり規模が大きいので,常に効率を追求しており,最も効率の高いAIエンジンを使いたいのですが,共通のインタフェースが無いので,乗り換えが簡単には行えないので困っているとのことです。

3.Bob Swan氏がIntelのCEOに就任

  2019年1月31日のEE TimesがRobert Swan氏のIntel CEOへの就任を報じています。Swan氏は,Krzanich氏が突然辞任した後,Interim(臨時の)CEOを務めてきたのですが,このほど,CEO選出委員会がSwan氏を次のCEOに選んだと報じています。

  Intelは10nmプロセスの立ち上げに苦戦し,微細化ではTSMCやSamsungに少し抜かれ,長年保持した半導体の売り上げ世界一の座を2017年からSamsungに奪われ,苦しい状況にあります。

  この状況を,どのようにして脱出するかがSwan新CEOに課せられた課題です。

  半導体売上ナンバーワンについては,DRAMの売り上げの伸びたSamsungにトップの座を奪われたのですが,技術で巻き返すというのは十分可能だと思います。懸念は,IntelはPCやサーバ用プロセサでは強いものの,それ以外で始めた新しい分野の製品は大部分は失敗で,PCやサーバ用プロセサに替わる商品が育っていない点です。この分野でSwan CEOの手腕を期待したいところです。

4.IBMとMITなどが,AIモデルの精度と堅牢性にトレードオフがあると発表

  2019年1月30日のEE Timesが,IBM ResearchとMITなどの研究者がAAAI 2009で発表した2つの論文を報じています。一つの論文は,AIモデルのAdversarial攻撃に耐える強度をどのようにして認証するか,もう一つの論文は,既存のAIモデルの強度を効率的に測定する方法について述べています。

  EE Timesに論文で発表されたグラフが載っていますが,18種のモデルのTop-1精度とPer Pixel l∞ Clever Scoreという堅牢性をプロットした図で,Top-1精度の高いモデルはAdversarial攻撃には弱いという傾向が出ています。

  これまでの手法は,小規模の簡単なモデルの堅牢性を測定することしかできなかったのですが,IBM-MITの提案の方法は広範な広く使われているモデルにも使えるとのことです。チームはCNNの検証を行うツールを開発しており,最終的にはCNNに対するAdversarial攻撃はAIの答えを変えてしまうことがないことを保証できるようにしたいとのことです。

  そして,この手法は効率的で,従来の最良のアルゴリズムの10倍以上高速とのことです。AIモデルの中身が分かっている場合は,それを攻撃するAdversarial攻撃を作るのはやりやすいのですが,中身が分からないブラックボックスの場合は,多数の入力に対する応答を測定して攻撃を組み立てる必要があり,攻撃は難しいと考えがちです。しかし,そのような想定は間違っているそうです。IBMとMichigan大のチームは,既存のAIモデルの強度を測定する新しい方法を開発したとのことです。

  AutoZOOM(Autoencoder-based Zeroth Order Optimization Method)と呼ぶ,この新しい方法では,ブラックボックスのAIを攻撃する現実的なシナリオを提供するとのことです。従来のZeroth Order Optimization法では記事の写真にあるベーグルのAdversaryを見つけるには1M回の問い合わせを必要としたのですが,AutoZOOMでは数千回の問い合わせで済んだとのことです。

  このAutoZOOMを使ってAdvesaly入力を作るのに必要な問い合わせ回数を測ることで,そのAIモデルの堅牢性が測れるというわけです。

5.IntelがItaniumの生産終了を通知

  2019年2月1日のThe Registerが,IntelがItaniumの最終オーダーを2020年1月30日で締め切り,2021年の7月29日を最終の出荷日とすると発表したと報じています。

  Itaniumは,HPとIntelが共同で開発したサーバ用のハイエンドCPUでしたが,HPが採用した以外は大きなユーザは獲得できず,空振りに終わった感があります。x86が32bitアーキだった時代には64bitアーキのハイエンドCPUという位置づけだったのですが,AMDがx86-64形式の64bit化を行い,こちらの方が人気を集めるようになり,Itaniumの存在意義は低下していきました。

  また,当時のx86のRASは貧弱で,Itaniumの強力なRASはハイエンドサーバの売りでしたが,x86-64が主流となるにつれて,XeonのRASも強化されハイエンドサーバに使えるようになっていきました。

  HPEは2025年末までユーザが使っているItaniumサーバのサポートを続けると言っており,最終出荷以降は,ストックを持って修理に対応するのでしょうね。






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