最近の話題 2019年3月16日

1.NVIDIAがMellanoxを69億ドルで買収

  2019年3月11日にNVIDIAは,InfiniBandのトップメーカーであるMellanoxを$6.9Bで買収すると発表しました。

  NVIDIAとMellanoxはIBMと一緒に,Top500首位のSummitスパコンを開発した仲で,多くのトップクラスの性能のスパコンはNVIDIAのGPUとMellanoxのInfiniBandインタコネクトを使っています。トップレベルのスパコンの開発力の強化という点では,両社が一緒になることは望ましいと思われます。

  NVIDIAはGPUのトップメーカーですが,GPUの分野ではAMDという強力なライバルがあります。MellanoxもInfiniBandでは独占に近いトップメーカーですが,インタコネクトという点では,IntelのOPAやEthernetではBroadcomなどの強力なライバルがあり,NVIDIAがMellanoxを買収したとしても,市場の競争が減り,消費者に不利になるとも思われません。従って,各国の当局の許可は問題なく得られると思われます。

  $6.9Bという買収額ですが,1株$125で現金で買収するとこの金額になるとのことです。Mellanoxの株価は買収発表直前は$118.1程度ですから5%程度のプレミアムで,比較的安い値付けです。

  もちろん,NVIDIAのGPUとMellanoxのInfiniBandが,より強化されて競争力が増し,これまで以上に売れて儲かるということになるのが買収の目的でしょう。

2.FacebookがSonicsを買収

  2019年3月13日のEE Timesが,FacebookがNetwork on ChipのIPを提供する会社であるSonicsを買収したと報じています。集積度が上がるにつれて,一つのチップに詰め込まれる機能が増えており,それらの機能の間をどのように繋ぐかが重要になります。そのようなチップ内のネットワークを作り,そのためのIPコンポーネントをライセンスしているのがSonicsです。

  Facebookは,Sonicsの技術をどのように使う積りであるかを発表していませんが,アナリストの中には,自社データセンターのAR,VRのサーバ用チップを開発するのではないかと見ている人もいます。

  巨大データセンタを運用していれば,この機能を専用チップにオフロードすれば性能が上がり,コスト的にもメリットがあるということが分かるので,GAFAなどが独自チップの開発に乗り出してきています。

  前の話題のNVIDIA-Mellanoxはデータ処理ノードを繋ぐネットワークで,こちらはチップ内の接続ネットワークですが,規模が大きく成って来ると接続が重要になるので,このような動きが広がってくるのは理解できます。

3.Intel,Googleなど9社がCompute Express Linkコンソーシアムを旗揚げ

  2019年3月14日のHPC Wireが,Intel,Google,HPE,Dell EMC,Microsoft,Facebook,Cisco,Huawei,Alibabaの9社がCompute Express Link(CXL) Consortiumを立ち上げ,第1版の仕様を策定したと報じています。CXLはCPUとアクセラレータ,メモリを含む装置で,キャッシュコヒーレントなデータ伝送が行なえる汎用のインタコネクトを提供します。

  インタコネクトの媒体としては32Gbit/sで通信するPCI Express 5.0を使用し,この上にキャッシュコヒーレンシを実現するプロトコルを載せるようです。

  キャッシュコヒーレントなインタコネクトとしては,既にOpenCAPI,CCIX,GenZ,NVLinkがあり,既に種類が増えすぎている感じもあり,新参のCXLコンソーシアムのメンバー数はまだ少ないのですが,ビッグプレイヤーが並んでいるので,無視はできません。この先,キャッシュコヒーレントなインタコネクトが主流になっていくのは確かとしても,どれが生き残るのかは注視が必要です。

4.石油探査などのデータ処理企業のDUGが,単精度250PFlopsのクラウドを建設

  2019年3月13日のHPC Wireが,オーストラリアの石油探査などのデータ処理サービスを提供する企業であるDownUnder GeoSolutions(DUG)がテキサス州のヒューストンの郊外に単精度で250PFlopsになる業界最大のHPCクラスタを建設すると報じています。

  このクラスタは,Intelが製造打ち切りを決めたKnights Landing(KNL)を使い,Intelに残っている38,000枚のKNLのウエファを総仕舞するのだそうです。DUGは2004年にもKnights Corner(KNC)のウエファを総仕舞しており,ソフトウェアがそのまま動くのがメリットとのことです。

  なお,この次のXeon Phiは無いのですが,XeonがAVX-512をサポートしており,コア数もKNLに近づいており,次はXeonで行けると考えているようです。

  このサーバ群は浸漬液冷で,冷媒にはpolyalphaolefin(PAO)を使っています。さらにこのタンクに水冷の熱交換機を取り付けています。この部分の水の温度上昇は4~5℃で,テキサスの暑いときでもクーリングタワーで冷やせるので経済的とのことです。
Polyalphaolefinは高級なエンジンオイルみたいなもので,比較的粘性は低いのですが,普通では蒸発せず,部品の交換時などに床に垂れた油が残ってしまうという問題があります。東工大のTSUBAME-KFCでもPAOを使いましたが,この問題からまだ,実用には使えないということで,TSUBAME-3.0では採用されませんでした。また,Googleなども検討はしたようですが,床に油が垂れるのが問題で,採用していません。DUGがこの辺をどう解決しているのかは興味があるところです。

  なお,PEZYはフロリナートを冷媒に使っており,こちらは残った冷媒も蒸発してしまうので,床がべとつくという問題が無いのですが,ビールの大びん1本で1万円という値段がネックです。

  なお,このシステムは4ノードをPCIeでまとめて1本の50Gb/sのリンクで接続しています。通常のHPCシステムでは各ノードに1本のInfiniBandという構成が一般的ですが,この業界では,バンド幅やレーテンシの要求はそれほど厳しくないようです。ネットワークの強化が必要となる,Top500で高いランキングを目指すことは必要なく,測定にも興味が無いとのことで,Top500に顔を出すことは無さそうです。

  このシステムの稼働開始は今年の2Qの予定です。


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