最近の話題 2019年4月6日
1.Intelが56コアXeon SP,Agilex FPGA,Optane DCメモリを発表
2019年4月2日のThe RegisterがIntelの第二世代のXeon SPプロセサ(Cascade Lake),Agilex FPGA,そしてOptane DCメモリの発表を報じています。
第二世代のXeon SPは,14nmプロセスで作られています。今回は,ネットワーキング向けとか高密度仮想化サーバア向けなどと用途を分けた製品になっており,合計では50以上のSKUが発表されました。目新しいのはXeon 9200シリーズのプロセサで,最上位の9282は2チップを一つのパッケージに搭載して,56コア,112スレッドでベースクロックは2.6GHz,ターボでは3.8GHzで動作します。ただしTDPは400Wで,水冷です。
中身は2チップですから,PCIeは96レーン,DDR4メモリは12枚で最大192GiBとなっています。56コアの各コアには1MiBのL2キャッシュが付き,L3キャッシュは77MiBとなっています。
新しい機能としては,Deep Learning Boostが付き,SpectreやMeltdown対策のハードウェアになっているというのがあります。ただし,このハードウェアでオーバヘッドなしにこれらの攻撃を防げるわけではなく,これまでのハードウェアとソフトウェアによる防御よりはオーバヘッドが小さくなるという程度のものです。
なお,9200と8200はXeon Platinum,6200と5200はXeon Gold,4200と3200はXeon Silverと呼ばれています。
今回発表されたXeon SPは即日発売ですが,9200だけは,今年の前半(多分6月ころ)の発売となっています。
Agilex FPGAは,10nmプロセスを使うFPGAで,AlteraがIntelに買収されてから初めて出す新しいFPGAです。これまでのStratix 10と比べて性能が40%アップ,あるいは消費電力が40%低減とのことです。
Agilex FPGAのサンプル提供開始は2019年の後半となっています。
Optane DCは3D Xpointメモリを使うメモリデバイスで,DRAMより多少遅いのですが,容量が大きく,電源を切ってもデータが消えないという特色があります。メモリスティックとしては128GiBから512GiBのものが出るとのことですから,512GiBのスティックを12枚付ければ6TiBという驚異のメモリになります。大量のデータを扱う用途では威力を発揮しそうです。
1モジュールの読み出し速度は8.3GB/s,書き込み速度は3.0GB/sとなっています。インタフェースはDDR4でDRAMと同様に使うこともできますが,不揮発性を生かそうとすると,Intelが開発したDDR-Tインタフェースを使う必要があり第二世代のXeon SPプロセサを使う必要があります。
不揮発性を本格的に使うには,OSでのサポートが必要となります。
CPUとの接続に新しいキャッシュコヒーレントなCompute Express Link(CXL)を使っています。
技術的には2019年4月2日のEE Timesの方が詳しく書かれています。
2.大手のシステムベンダーが新XeonとOptane DCを採用
2019年4月2日のHPC Wireが,Intelの新Xeon SPプロセサとOptane DCメモリの発表を受けて,大手のシステムベンダーが採用を発表したと報じています。
Dell/EMCはPowerEdgeサーバに第二世代Xeon SPプロセサとOptane DCメモリを採用すると発表しました。トランザクション処理の性能があがり,最大2.7倍のトランザクションを処理できるようになるとのことです。
また,CrayはCS500とXC50にXeon Gold 6200とXeon Platinum 8200を搭載すると発表しました。
Lenovoは15種のThink Systemサーバと5種のThin Agileアプライアンスに新Xeonを採用すると発表しました。電源が落ちてもデータは消えないので,メモリDBのリカバリが12.5倍速くなるとのことです。
Supermicroは,X11シリーズの全機種で新Xeonを採用すると発表しました。OptaneメモリとDeep Learning BoostでAIの加速が大きくなると述べています。
CISCOはUCSサーバで新Xeonを使うと発表しました。そして,Optane DCの128GB,256GB,512GBのモジュールを使うそうです。UCS Managerを使うと,Optaneをmemoryモードで使うか,app directモードで使うか,あるいは両方かをダイナミックに指定できます。memoryモードではOptaneはDDR4 DRAMとペアで使います。app directモードでは高速の不揮発メモリとして直接アクセスされます。
その他に,Huawei,Inspur,Tyan,RSC,Fujitsuなども新Xeonを使うサーバを出すと発表しています。
3.Amazonが3236基の衛星を使うブロードバンドネットワークの構築を発表
2019年4月5日のThe Inquirerが,AmazonのProject Kuiperについて報じています。
748基の衛星を高度367マイル,1297基を379マイル,1156基を391マイルの高度に配置し,南緯56度から北緯56度の範囲にブロードバンド接続を提供するもので,人口の95%をカバーするとのことです。この衛星通信網により,現在はインタネット接続の恩恵を受けられない人達にブロードバンド接続を提供するのだそうです。静止軌道の衛星を使う場合は高度が高いのでレーテンシが問題になりますが,このAmazonの衛星は600Km程度の高度なので25ms程度の遅延に収まるはずです。
このProject Kuiperの趣旨に賛同する企業との協業も視野に入っているとのことです。
Amazonがどのようにして投資を回収するつもりでいるのかは分かりませんが,Amazonのサービスだけに取り込まれてしまわないで,もっと自由にインタネットが使える環境をぼロードバンド接続を使えない人達に提供できるとすれば素晴らしいことです。