最近の話題 2019年4月27日

1.IntelのClientプロセサのロードマップがリークか?

  2019年4月25日のEE Timesが,Tweekersが掲載したIntelのClent CommercialとClient Mobileプロセサのロードマップを報じています。ただし,インテルは,このような情報にはコメントしないという立場で認めていません。

  Clent Commercialは45W,65WのH/Gシリーズ,15-28WのUシリーズ,~5WのYシリーズ,38/65/95WのSシリーズがあります。新製品としては2020年2QのComet Lakeですが,これもプロセスは14nmです。2021年2QにU,Yシリーズに10nmのTiger Lakeという記述がありますが,これらは(TBD)となっており,本決まりではないようです。

  Client Mobile CPUではH/Gシリーズ,Uシリーズ,Yシリーズに加えて,6-10WのNシリーズ,3-5WのMシリーズなどSoC用のコアがあります。Client Mobileの方は2019年2QにYシリーズとU シリーズのIce Lakeが10nmと書かれていますが,limitedと書かれておりボリュームは制限されるようで,本格10nmの量産は2020年2QのTiger Lakeからということになりそうです。また,2020年3QのUシリーズではRocket LakeのCPUは14nmですが,組み合わせるGPUのgfxは10nmと書かれています。

  この流出ロードマップが正しいとすると,今年,Intelは10nmプロセスのIce Lakeを出してくるかも知れませんが,本格的な量産とはならないようです。本格的な10nm製品は2020年2QのTiger Lakeからとなります。しかし,10nmプロセスを使う製品は一部で,Intel CPUの大部分が10nmに移行するのは2021年になると思われます。

2.TSMCのプロセスロードマップ

  2019年4月24日のEE Timesが,TSMCのロードマップを報じています。TSMCは3月にN5プロセスのリスク量産を開始しました。N5は現在量産中のN7と比べると,80%密度が向上し,15%高速,あるいは30%低電力となっています。そして,新しいeLVTトランジスタを使えば(リークは増えるのでしょうが)25%高速にできるとのことです。

  そして,TSMCは新たにN5Pプロセスを発表しました。来年にリスク量産を開始するN5Pは,N5よりも速度を7%速く,あるいは電力を15%減らせるとのことです。この性能向上の一部はフルに歪を掛けた高移動度チャネルによってもたらされるとのことです。

  TSMCのN5プロセスのSRAMウエファは,昨年は歩留まり80%でしたが,今年は90%に改善してるとのことです。

  また,TSMCはN6というプロセスを発表しました。N5があるのになぜN6をやるのかですが,N6はN7と同じ設計ルールやIPブロックを使って,N7に比べて18%の縮小が得られ,設計が容易でチップのコストを下げられるという利点があります。ただし,N6のリスク量産開始は2020年のQ1の予定です。

  N7+はいくつかのクリティカルな層にEUV露光を使うプロセスで2019年3Qに量産開始の予定です。N6では,さらにEUV露光の層を1層増やし,N5ではさらに数層をEUVに替えるとのことです。EUVの使用により,マスク枚数は10%程度少なくなるとのことです。

3.TeslaがFull Self-Driving Computerを発表

  2019年4月23日のEE Timesが,TeslaがAutonomy Investor Dayに於いて,Full Self-Driving ComputerとRobo Taxについて発表したと報じています。

  記事に写真が載っていますが,Full Self-Driving Computerは,2個のTeslaのロゴがついてLSIが載ったボードで,2個合計で144TOPSの性能を持ち,消費電力は72Wとのことです。チップはSamsungの14nmプロセスで作られ,チップの大きさは260mm2で,250Mgate,6B Trを集積しています。

  なお,2個のチップは2重化して故障に備えるためで,実質的に使える計算能力は72TOPSです。

  このチップはTeslaの自社設計で,チップ当たり9216MACのアクセラレータを2個搭載しています。NVIDIAのXavierが2048MACのDLAが2個と比べると約9倍の演算能力です。また,ReLUのハードウェアやPoolingのハードウェアを持っていると書かれています。チップ写真が載っており,写真の説明によると,MACは96×96のMul/Addアレイになっており,クロックは2GHzのようです。

  144TOPSで72Wは1TOPS当たり0.5WでXavierが1TOPSあたり1Wに比べると半分の電力ということになります。

  TeslaはFul Self-Drivingと言っていますが,いわゆるLevel4やLevel5ではなく,人間のドライバが最終的な運転責任を持つLevel3程度の機能だそうです。現在のAuto Pilotも自動運転のように聞こえますがLevel2+というのと同じ命名法です。

  ただ,Teslaのコンピュータは,出荷後に無線でデータアップデートして,能力をアップすることができ,そのうちにはLevel4に到達するとTeslaは言っています。

  TeslaのRobo TaxiについてMusk氏がAutonomy Investor Dayで初めて説明を行いました。それによると,車の貸し出しプログラムに参加するTesla車のオーナーの車を,移動手段として車を借りたい人に貸し出すというシステムです。Teslaは売り上げの25-30%をコミッションとして徴収しますが,車のオーナーは,空き時間に車を貸して収入を得ることができます。

  しかし,車が自動的にお客のところに行って載せて,乗り終わったら戻るという動作をするのには,今のTeslaの自動運転のレベルでは無理で,2020年にRobo Taxiを始めるというMusk氏の発言は難しそうに思われます。

4.SamsungがGalxy Foldの発売を延期

  2019年4月22日のThe vergeが,Samsungが公式にGalaxy Foldの発売の延期を認めたと報じています。先週の話題で紹介したように,ジャーナリストに貸し出したGalaxy Foldに故障が頻発したのですが,遂に発売延期に追い込まれました。元々,4月26日の発売予定でしたが,5月,あるいは,それより先の発売になるとのことで,時期は明示されていません。

  iFixitがGalaxy Foldの解体を行い,その記事をWebに載せたのですが,Samsungからの要請でその記事を取り下げたという件がWebでは話題になっています。iFixitの解体記事は取り下げられたのですが,インタネットのアーカイブサイトで見ることができます。

  iFixitは,Samsung Foldの有機ELの折り曲げできるディスプレイは非常に弱く,すぐに壊れて高価な修理が必要になる。折り畳みのヒンジなどの部分に隙間があり,そこからごみやほこりが侵入する。特に砂などのかたいものが侵入すると有機ELディスプレイを傷つけると指摘しています。

  iFixitは,Galaxy Foldは信頼できるパートナーから提供されたもので,そのパートナーを通して取り下げの要請があったので,取り下げに応じた。Galaxy Foldが正式に発売されたら,再度,解体を行うと述べています。

  iFixitの解体記事を読んだ感じでは,この問題を解決するのは容易ではなく,1~2か月の発売遅延では済まないという感じです。

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