最近の話題 2019年5月25日

1.Post Kの正式名称が富岳に決定

  2019年5月23日に理研ポスト「京」(Post K)と仮称してきた日本の次期フラグシップスパコンの正式名称が「富岳」に決定したと発表しました。

  富士山の高さがポスト「京」の性能の高さを表し,富士山の裾野の広がりがポスト「京」のユーザの広がりを意味するとのことです。

  ケチをつけるつもりはありませんが,富士山は日本国内では高さは一番ですが,世界的に見ればより高い山はたくさんあり,それが「富岳」という命名にも反映しているのではないかという見方もできます。

2.GPUの老舗のImaginationが,SiFiveのDesignShareへの参加を発表

  2019年5月20日のEE Timesが,GPUのIPベンダーとしては老舗のImagination Technologiesが,SiFiveのDesignShareでGPU IPの提供を行う報じています。

RISC-Vを推進するSiFive社は,単にCPUコアを提供するだけでなく,契約した各社の周辺IPをCPUコアのユーザに提供するDesignShareというプログラムを行っています。DesignShareに登録されたIPは,それを使うチップが量産に入るまでは,非常に安いライセンス料で使え,量産を開始するときにフルのライセンス料を払えばよいという仕組みになっています。

一般に3rdパーティーのIPを使おうとすると,設計を始めるまえにライセンス契約を行って,かなり高額のライセンス料を払う必要があるのですが,これはお金のないスタートアップには大きな負担で,カスタムLSIの開発に踏み切るハードルは高くなっています。しかし,DesignShareの場合は,サンプルLSIが出来て,デモなどができるようになってからで良いので,第2ラウンドの投資を集めてライセンス料を払うことも考えられます。

一方,IPベンダーから見ると,DesignShareでカスタムLSIの開発に踏み切るハードルが低くなり,IPを使ってくれるユーザが増えればトータルのライセンス料輸入が増えるというメリットがあります。

  Imaginationは以前はAppleにGPU IPをライセンスしていたGPUの老舗で,PowerVR Series8 XE GPUとPowerVR Series3 NX NNA(Neural Network Accelerator)IPをSiFiveのDesignShareで提供を開始するとのことです。

3.GlobalFoundriesが$740MでASICビジネスを売却

  2019年5月20日のEE Timesが,GlobalFoundriesがASICビジネスを$740MでMarvellに売却すると報じています。

  GlobalFoundriesは,TSMCをファブとして使うのにあたり,800人のASIC開発部隊をAveraとして独立させていたのですが,その部隊をMarvellに売却すると発表しました。Averaはアナログやミックスドシグナル,カスタムSoCの設計などに強みを持っているとのことです。

  GlobalFoundriesは昨年8月に7nmプロセスの開発の中止を発表し,大リストラを開始しました。その方針に沿って,今年1月には200mmのFab3Eを$236Mで台湾のVanguardに売り,4月にはFishkillの300mmファブを$430MでON Seniconductorに売却しており,今回のAveraの売却はそれに続くものです。

  今回の売却では,Averaの進行中のビジネスを引き継ぎ800人の従業員も受け入れます。また,GlobalFoundriesとMarvellの間の長期のウエファ供給契約が結ばれます。

  もちろん,この売却には株主や独禁法当局の承認が必要になります。

4.地裁がQualcommのライセンス方式を否定

  2019年5月22日のEE Timesが,地裁のLucy Koh判事が,Qualcommの特許の使用契約を結ばないと,チップの供給を行わないというやり方は,不当に競争を制限している。Qualcommは,standards-essential patents (SEP)を競争相手にもライセンスしなければならないという判決をくだしました。

  これは,AppleがQualcommに対して,多額の特許使用料を払わなければならないという和解を実質的にひっくり返す判決です。当然,Qualcommは反対しており,上訴すると思われますが,Qualcommには痛手の判決です。


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