最近の話題 2019年6月1日

1.AMDがComputexで7nmプロセスのRyzen CPUを発表

  2019年5月30日のEE Timesが,Computexの基調講演でのAMDのLisa Su CEOの第3世代Ryzen CPUの発表を報じています。このCPUは7nmプロセスで作られたZen2コアを使っています。Zen2コアは,初代のZenコアと比較すると最大15%IPCが向上しているとのことです。

  Zen2では,キャッシュ容量の増大やFPUの再設計などが行なわれているとのことです。

  そして,Ryzen 9 3900Xという12コアのデスクトップCPUが追加されました。これらの新しいRyzen CPUの発売は,今年,7月7日からとなっています。

  また,第二世代EPICのRome CPUの発売は2019年の3Qの予定となっています。

  Lisa Su CEOは基調講演の中でデモを行い,NAMDのベンチマークでのプロテインフォールディングの計算で,第二世代のEPYCベースの2P CPUとIntelのXeon 8280の2Pサーバを比較し,EPYCの方が2倍以上速かったとのことです。

  なお,200Wで28コアのXeon 8280 は1個1万ドル程度で,値段も入れればEPYCの有利は拡大すると思われます。

2.armが性能を20%-40%改善したA77 CPUを発表

  2019年5月27日のEE TimesがarmのA77 CPUの発表を報じています。A77はA76と同じプロセスを使い,消費電力もA76と同じですが,性能は20%-40%向上しているとのことです。

  A77は,A76と比較して命令ディスパッチと,整数実行パイプのバンド幅の50%増加,BTC容量の33%増加,投機実行のウインドウの25%拡大などアーキテクチャの強化でこの性能向上を実現しています。当然,それだけ物量が増えている筈ですが,チップ面積も消費電力も増えていない(つまり,A76の設計が十分最適化されてなかった)とのことです。

  Mali G77グラフィックはValhallアーキテクチャで40%の性能向上を達成しているとのことです。Valhallアーキテクチャでは命令セットを簡素化し,4つのテクスチャマッパーや16チャネルのデータパスを備えています。G76では8チャネルだったので,バンド幅は倍増です。

  その結果,ゲームプレイの性能は30%高速化,あるいは同じだけの消費電力削減が得られています。

  G77は7-16個のシェーダコア,2-4個のL2キャッシュスライスという構成を取れます。結果として,L2キャッシュの総容量は512KB-4MBとなります。

  さらにMali D77ディスプレイプロセサは,グラフィックスコアの15%以上のサイクルを消費する処理をオフロードすることが出来ます。結果として,4320×2160ピクセルで90fps,あるいは3600×1800で120fpsの表示が可能です。そして,D77はVRの加速機構を備えています。

3.NVIDIAがエッジでAI処理を行うEGXを発表

  2019年5月28日のThe RegisterがNVIDIAのEGXの発表を報じています。EGXはNVIDIAのGPUを搭載したサーバでエッジで発生したデータをデータセンターに送ってAI処理を行うのではなく,エッジのデータをエッジのサーバでストリーミング的にAI処理を行うというサーバです。

  AI処理のためにエッジで発生したデータをデータセンターに送る必要がなくなるので,理論的には,短レーテンシの処理が可能になります。また,データセンターとの通信バンド幅を減らせます。

  このプラットフォームはRed Hatと協力して開発したもので,OpenShiftコンテナとNVIDIAのEdge Stackをくっつけた形になっています。NVIDIAのEdge StackはGPUのドライバ,CUDAコンテナのランタイム,Kubernatesプラグイン,CUDA-Xライブラリやコンテナ化されたAIフレームワークとアプリなどを含んでいます。

  EGXは小さいほうではJetson Nanoを搭載したボードでも動き,データセンターのラックいっぱいのT4 GPUで動作させることもできます。また,AWSのIoT GreengrassやMicrosoft Azure IoT Edge Serviceで使うこともできます。

  SeagateはディスクのR/Wヘッドの検査に使用,FoxconもPCのボードの検査に使用しているとのことで,滑り出しは順調のようです。

  2019年5月29日のThe RegisterはTyanが2U筐体にデュアルソケットのXeon SP,24枚のDDR4メモリ,12スロットのSATAと最大4個のT4 GPUを搭載するEGXサーバを発表したと報じています。

4.YouTubeのCtrl Shift Face

  2019年5月28日のThe Registerがインタネットで見たものは信じてはいけないと書いています。YouTubeのCtrl Shift Faceというチャネルには続々と高品質のDeep Fakeビデオがアップされており,登場している有名人の顔が徐々に別人に変わっていくというものもあるとのことです。

  また,2019年5月23日のThe Registerでは,SamsungのAIセンターとモスクワのSkolkovo Institute of Science and Technologyの研究者が開発した何枚かのスチル写真から顔の特徴を抽出し,喋りに合わせて表情を作るという技術を紹介しています。この技術を使えば,本人はしゃべっていないことをしゃべっているビデオが作れてしまいます。

  さらに,この技術を拡張して,写真でなく,絵から顔を抽出して喋らせるということもやっており,モナリザが喋っているというビデオが公開されています。

  なお,現状では,声を入れ替えるということはやっていませんが,やる気になればできてしまいそうです。

  インタネットで見たビデオは信じてはいけないという時代がそこまで来ています。

5.米中の認識ギャップが広がっている

  2019年5月30日のEE Timesに,Junko Yoshida氏が米中の認識ギャップが広がっているという記事を書いておられます。この記事をベースに私の考えを書いてみます。

  米国の中国への制裁関税やHuaweiへの米国製品や技術を含む製品の供給停止のような荒っぽい政策に対して,中国は非常に自制的な態度を取っています。

  このやり方でZTEは音を上げたのですが,Huaweiは問題は無いと言っています。そして,米国以外の取引できる供給元を開発しているようです。これらのPlan Bの供給先は,チャンスと見て,Huaweiが要求する品質の部品を供給しようと頑張っているとのことです。

  これに関しては,天河2号スパコンのことを思い出します。天河1号が軍事利用されており,これはIntelのXeon Phiチップの販売条件に違反するとして,次世代Xeon Phiの中国への販売を禁止しました。その結果,完成は1~2年遅れましたが,中国は自前でHPC用のDSPを開発し,天河2号を作りました。また,その後,太湖の光も自力で開発しました。

  米国の販売禁止は,2年くらいの遅れと引き換えに,ライバルを強力にするという結果になりました。今回のHuaweiへの販売の禁止は,似たような結果になるのではないかと思います。

  なお,天河1号の軍事利用は,どのようなものであったのかは公表されていません。兵器の開発にも役立つが,民事利用もあるというようなシミュレーションの場合,切り分けは微妙で,中国が違反していたのかどうかは米国の主張を信じるかどうかにかかっています。

  2つ目の論点は,中国が米国の技術を盗んでおり,その制裁のための措置というものです。また,Huaweiの通信装置にはバックドアなどの仕掛けがあり,そこを通して秘密情報が盗まれており,危険だからHuawei製品は使うなという要求が西側諸国に出されています。

  秘密情報は安全保障上,極めて重要でバックドアがあれば大問題で,不買は当然ですが,これまで米国は,具体的な証拠を示していません。大量破壊兵器を持っているとして,フセインのイラクを壊滅させたのですが,その後の捜索では大量破壊兵器は見つかっていません。Huaweiの機器のバックドアも同じような偽情報かもしれません。

  米国の技術を盗んでいるという点でも,製品の設計図やソースコードを持ちだしたという明白な産業スパイの場合はともかく,米国の研究者が発表した論文を参考にしたとか,米国人と中国人を含む研究チームの成果を参考にした場合などは微妙です。

  本当に制裁関税をエスカレートするような盗用があるのでしょうか。また,産業スパイのようなケースは刑法に基づく逮捕,投獄などが通常の対応で,制裁関税には結びつかないと思います。

  メキシコ経由の不法移民が止まらないから,制裁関税を上げるという滅茶苦茶な政策を取るトランプ氏ですから外からではどうしようもないのかもしれませんが,Junko Yoshida氏も書いておられるように,米国の公正さとか発言の自由とか,民主主義のベースとなる概念は大きく毀損しています。私は,米国の衰退の始まりではないかと感じます。

  翻って,日本は,安倍さんのような米国べったりの政治で大丈夫なんでしょうか?気が付けば,皆,身勝手な米国に愛想をつかして,付き従うのは日本だけということにならないようにして頂きたいものです。


  

  


  

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