最近の話題 2019年6月8日

1.スタートアップのIonQがイオントラップ型の量子コンピュータを開発

  2019年6月5日のHPC Wireが,IonQというスタートアップのイオントラップ型の量子コンピュータについて報じています。

  D-WaveやIBMやRiggettiなどは,超電導で量子ビットを作っていますが,この方法で作った量子ビットは雑音が大きくコヒーレントな状態を長く維持することが出来ず,量子ビット数が多くなるとエラー訂正を必要とし,必要な量子ビット数がさらに大きくなってしまいます。

  これに対してIonQは,Ybイオンのエネルギー状態で量子ビットを作ります。Ybイオンは超電導の量子ビットに比べると雑音が小さく,エラー訂正なしでも行けるとのことです。また,イオン自体はレーザで冷却して超低温にするのですが,系全体は常温で動作できます。

  面倒なのは,量子ビットをプログラムするには,イオンにレーザを照射し,マイクロ波を当てる必要があることです。IonQ者は11Qubitのシステムを3台開発し,開発に使用しており,毎年,量子ビット数を倍増させていくといっていますが,現状ではイオントラップ型は10~20Qubit程度しか作られておらず,本当に量子ビット数を増やして,実用的な規模の量子コンピュータが作れるかは未知数です。

2.中国電子と天津大が脳とコンピュータのインタフェースチップを開発

  2019年6月6日のThe Inquirerが,中国電子(Chine Eelctronics Corporation)と天津大学のチームのBrain Talkerという名前の脳とコンピュータのインタフェースチップの開発を報じています。

  Brain Talkerは大脳皮質の小さな電気パルスを検出し,それをコンピュータが解釈できる信号に変換するとのことです。天津大学のMing Dong氏は,BC3と呼ぶこのチップは微小な信号を識別して,効率的に情報を取り出す能力が高く,インタフェースの通信速度が速く,精度が高いと述べています。

  このBC3チップは,これまでに開発されたものより小さいとのことです。

  体にマヒがある人まどが,体を動かすことなく脳で考えたことをコンピュータに伝達し,例えば,ロボットハンドを動かして自分で食事をとることが出来るようにするなどの用途が考えられています。

3.InfineonがCypress Semiconductorを€9Bで買収

  2019年6月3日のEE Timesが,Infineon TechnologiesがCypress Semiconductorを€9Bで買収すると報じています。

  Infineonは元々はシーメンスの半導体部門で,NXPと並んで欧州を代表する半導体メーカーです。Cypressは通信用の半導体に強く,Infineonとしては,この買収でIoTの処理に加えて通信を手に入れ,自動車向けの半導体のトップサプライヤのポジションを固める目的と思われます。

4.QualcommもSiFiveに出資

  2019年6月7日のEE Timesが,Qualcommの投資会社のQualcomm VenturesがRISC-Vを開発するSiFiveに投資したと報じています。これまでにWestern Digial Capital,Samsung Venture Investment,Intel Capitalなどが投資しており,QualcommもSiFiveの将来性に見込みがあると見ているようです。

  SiFiveはこれまでに$65.4Mの出資を集め,それに加えて中国に設立したSaiFanも$11Mを集めたとのことです。SiFiveは18カ月前は40人程度の従業員だったのですが,現在では145人になったとのことです。CEOのNaveed Sherwani氏によると,これまで101件のDesign Winを獲得しており,さらに設計やIPライセンスなどの依頼が殺到しており,145人でも人が足りなくて対応が間に合わないという状態だそうです。

  SiFiveは使いやすいビジネスモデルを作り,ユーザはサーバやCADソフトを持たなくてもクラウドで設計を開始できるので,カスタムチップ開発のハードルをグッと下げており,多くの潜在顧客を集めているようです。

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