最近の話題 2019年6月29日

1.Finite State社がHuawei製品に多数のセキュリティー欠陥を発見

  2019年6月27日のThe Registerが,Finite Stateという米国のIoTセキュリティー会社がHuaweiのスマホやスイッチなどの製品に大量のセキュリティー欠陥を発見したと発表したと報じています。

  Finite Security社は,Huawei製品に使われている1.5M個以上のファイルを解析し,Huaweiの製品は大きなセキュリティーリスクがあり,他の銘柄の製品に比べてセキュリティーが弱いと結論づけたとのことです。

  調査したHuawei製品の55%は少なくとも一つの潜在的バックドアを持っているとのことです。ただし,これらのバックドアとして使える欠陥が,製造上のセキュリティー欠陥なのか意図的に仕込まれたのかどうかは調査しておらず,分からないとしています。

  Finite Stateの調査ではHuawei製品のファームウェアには平均102個の知られているCVEを含んでおり,そのうちの27%はHighあるいはCriticalなCVEだそうです。例えばOpenSSLでは79の異なるバージョンが使われており,古いものでは1999年のものが使われていたとのことです。OpenSSLは暗号通信の基本的なモジュールですが,Huaweiがセキュリティーパッチを適用していたかどうかは分からないとのことです。

  極端なケースでは一つのファームウェアイメージから1400個以上のCVEが検出された例もあるとのことです。また,暗号化キーとしてデフォールトの値がハードコードされていたりしているとのことです。

  これらについて,The RegisterはHuaweiの見解を問い合わせていますが,まだ,回答は得られていないとのことです。

  これまで,米国は根拠を示さず,Huawei製品のセキュリティーリスクを非難してきましたが,Finite Stateの調査結果を信じれば,Huawei製品は危険度が高いという指摘は正しかったことになります。

2.イスラエルのNeuroBladeが$23Mを調達

  2019年6月26日のEE Timesが,イスラエルのスタートアップNeuroBladeが$23MのシリーズA資金調達を行ったと報じています。NeuroBladeは推論用のAIチップのテープアウト目前の状態で,2019年か2020年の早い時期にサンプル出荷の予定です。

  CNN,RNN,LSTM,GANのネットワークを作ることが出来,IntelやNVIDIAのチップと変わらない性能で,チップが小さいのでコストが安いとのことです。

3.AspinityがReconfigurable Analog Modular Processorを発表

  2019年6月25日のEE Timesが,ピッツバーグのスタートアップのAspinityのReconfigurable Analog Modular Processor(RAMP)の発表を報じています。スマートスピーカは,常時,キーワードが聞こえるのを待っているわけですが,そのため,待っている間にもかなりの電力を消費してしまいます。

  Aspinityのデバイスは,このような作業をアナログで実行するので,10uAの消費電流で実行できてしまいます。このため,電池駆動のデバイスにもキーワード起動の機能が付けられます。

  また,機械の異常な振動のモニタやガラスが割られる振動のモニタなども低電力で長時間モニタできるようになります。

  このチップは2020年の前半には量産の予定です。また,Aspinityはチップの販売だけでなく,IPとしての販売も考えているとのことです。

4.なぜAIで宇宙の進化の予測がうまく行くのか?

  2019年6月28日のThe RegisterがAIを使う銀河などの進化の予測の論文について報じています。Deep Density Displacement Model (D3M)という論文はNational Academy of Sciences of the United States of America誌に掲載されたれっきとした論文です。

  宇宙の進化などを解くのはN体の動きを計算してそれぞれの粒子がどう動くかを計算していくのがオーソドックスな方法ですが,このD3M法は,いろいろな配置の場合についてオーソドックスなN体計算で,どのように進化していくかを計算し,そのデータをAIに学習させ,その学習に基づいてAIで,どのように進化していくかを予測します。

  ここでは,それぞれ32,728個の粒子からなる8000個の銀河が6億光年の範囲に散らばっている状況を作り,そこからどのように進化するかをN体計算で求めて,これを正解として学習をさせています。

  そして,1000ケースの配置からの進化をAIで予測した結果とFastPMと2LPTというN体シミュレータの結果と比較をしています。その結果は,FastPMの結果との相対エラーは2.8%,2LPTとの相対エラーは9.3%で,これは,それほど悪い結果ではないと書かれています。特に,オーソドックスな方法では1つのシミュレーションに何日もかかるのに対して,D3Mでは30msと非常に速く(あるいは安価に)結果が得られる点がメリットです。

  研究者たちが驚いたのは,ダークマターの量を変えたAI予測のケースで,AIはダークマターの量を変えた状態の進化について学習を行ったことが無いのに,正確な予測を行ったという点です。これは犬と猫の写真しか学習していないAIが,象の写真を見せられて正解したようなもので,なぜ,そのようなことになるのか頭をひねっているとのことです。

5.四日市の停電で東芝メモリの8-10月の生産が24%ダウン

  2019年6月28日のThe Registerが6月15日に四日市で起こった13分の停電で,東芝メモリの製造ラインが止まり,完全なフル稼働にもどれるのは7月中頃になると報じています。結果として,東芝メモリの8-10月の製造は24%ダウンし,短期的には5-10%程度のFlashメモリの値上がりが発生すると書いています。

  Western Digitalは,この停電の結果,6Exa Byteのメモリが失われたと言っており,東芝側の発表はありませんが,4:6の比率で引き取ることになっているので,東芝は9Exa Byte程度のロスと見られています。


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