最近の話題 2019年7月20日

1.Toshiba Memeoryが10月1日にKioxiaに改名

  2019年7月19日のEE Timesが,Toshiba Memoryが10月1日にKioxiaと改名すると報じています。日本語のKiokuとギリシャ語で価値を意味するaxiaを繋げた造語です。

  Toshiba MemoryはBain Capitalを始めとするコンソーシアムが出資する会社で,東芝グループの会社ではなくなったので,Toshibaの名前を外すことにしたとのことです。

2.Intelが8MニューロンのPohoiki Beach開発システムを発表

  2019年7月17日のHPCWireが,IntelのPohoiki Beachの発表を報じています。Pohoiki BeachはIntelのLoihiチップを64個搭載したシステムで,合計では8M個のニューロンが含まれるシステムです。

  Spikeニューロンをつかっているので,このシステムは推論と学習を並行して行うことができ,Simultaneous Localization and MappingやPath Planningなどができるそうです。

  そしてIntelは今年末には768チップで100MニューロンのPohoiki Springsを出す予定だそうで,今回のPohoiki Beachで,100Mニューロンに向けた用意ができるとのことです。

  Loihiチップは14nmプロセスで作られ,128個のニューロコアを集積しています。そして,ユニークな学習エンジンを持ち,スパイク型のニューラルネットの学習を行います。

  IntelはLoihiはCPUと比較して1000倍速く,10000倍効率が高いと言っています。共同研究を行っているWatrloo大のChris Eliasmith教授は,GPUと比べて電力は109分の1で,専用のInferenceハードウェアと比べても1/5と言っています。

3.Renesasが8.8TOPS/WのPIM推論チップを発表

  2019年7月19日のEE Timesが,Renesasの8.8TOPS/Wの推論チップの発表を報じています。12nmプロセスを使う3mm角のチップは製品ではなくテストチップですが,通常の推論エンジンが1TOPS/W程度であるのに比べて,8.8TOPS/Wと効率が高いとのことです。

  重みの記憶セルは3値になっており,1と-1はどちらかのビット線を引き下げるのですが,0の場合はどちらのビット線も引き下げません。3値の重みとの掛け算は比較的簡単な回路で実現できるとのことです。総和は電流の足し算で計算しているようなことが書かれています。

  3値で記憶された値が0の場合はどちらのビット線からも電流を引かないので低電力です。また,読み出された値が全て0の場合はゼロデテクタで検出してセンスアンプの電流をカットします。

  CNNの場合は非ゼロの値は1%くらいしかないので,ゼロの場合の電力消費をなくすことで,1桁近く電力効率が上がるとのことです。

  テストチップは4MbitのPIMと1.5MBのSRAMを持ち,小規模なCNNなら外部メモリなしに動かせるとのことです。しかし,外部メモリを必要とするような大きなCNNの場合は消費電力が増えてTOPS/Wは下がると思われます。

4.ARMが初期費用を抑えるFlexible Accessを発表

  2019年7月16日のEE Timesが,ARMのFlexible Accessについて報じています。これまでは,ARMとライセンス契約をネゴして,契約を結んでライセンス料を払い込まないとARMのIPを使うことができなかったのですが,この方式では,契約のネゴにも時間が掛り,設計の着手が遅れます。そして,設計を開始する前に多額のライセンス料を払う必要があり,金欠のスタートアップには大変でした。

  しかし,RISC-VのSiFiveが,開発中は無料でIPが使え,開発に成功して量産という時点でライセンス料を払えばよいという方式を始めて人気を博しており,ARMを始めとする他社も無視できなくなってきています。

  ARMは,制御用のCortec-M1~M3についてはSiFiveのようなライセンスの方法をやり始めていたのですが,このほど,対象を大部分のARM IPに広げ,Cortex-A,Cortex-RシリーズやTrust ZoneなどのIPも入っています。ただし,高性能のAシリーズやGシリーズGPUなどは入っていないようです。

  また,このFlexible Accessに参加するには,年間一つのテープアウトの場合は$75,000/年,無制限テープアウトの場合は$200,000/年の費用が掛かります。

  そして,設計が終わり,テープアウトにこぎつけると使っているIPの1個いくらのローヤリティーを払う必要があります。従って,トータルでARMが受け取る金額は変わらず,支払い時点が遅くなるだけです。

  なお,量産に入るとローヤリティーが発生し,製品1個ついていくらかをARMに支払う必要があります。

  いずれにしても,ARMの豊富なIPが使いやすくなるのは魅力だと思います。ARMとしては,これで他に流れる顧客が取り戻せればメリットがあります。

5.英国のGoonhillyが液浸データセンターを公開

  2019年7月16日のHPC Wireが,Goonhilly Earth Stationの英国コーンウォールのデータセンターの拡充について報じています。

  システムのカーボンフットプリントを減らすため,350kWの太陽光発電を設け,浸漬液冷でサーバの消費電力を減らしているとのことです。

  液冷ですが,Submer社のクーリングシステムを使っており,Submer社のWeb pageによると,合成の非伝導性で,Bio-degradableな液体で,仮に漏れても危険はないとのことです。

6.アイルランドがEchelon社の100MWデータセンター建設を許可

  2019年7月19日のThe Registerが,データセンター開発業者のEchelon社がアイルランドのWicklow郡に100MWの電力を供給するデータセンターを建設する許可を取得したと報じています。このデータセンター施設の建設費は€500Mに上ると見られます。

  Echelon社は,ダブリンの近くのClondalkinに€500Mのデータセンターを建設中で,そのうちの40MW分は2021年の2Qに稼働開始の予定だそうです。

  アイルランドは寒冷な気候から冷却電力が少なくて済み,火山が多く地熱発電の電力も豊富ということから,データセンターの建設が盛んですが,環境破壊を懸念する反対もあり,このところ建設断念という案件も多かったのですが,政府の姿勢が建設促進に傾き,今回の建設が許可されたとのことです。

7.ダイヤモンドダストで部品の追跡性を確保

  2019年7月12日のEE Timesが,ダイアモンドダストで部品の追跡性を確保するという記事を掲載しています。セキュリティーというと情報のセキュリティーの方がホットな話題ですが,COTSの半導体部品市場には$75Bもの偽部品が出回っているとのことで,どのようにして部品の素性を確認するかが問題だそうです。

  DUST Identities社が提案する方法は,ナノダイアモンドを含んだ100um程度の小さなドットを吹き付けて塗装するというものです。このドットには平均的に400個程度のダイアモンドのナノ結晶が含まれており,その散らばり方を専用のセンサーで読み取るというものです。なお,DUST社のDUSTはDiamond Unclonable Security Tagから名づけられたとのことです。

  このダイアモンドダストを使うマーキングのコストは約1/1000セントだそうですから,入力やデータ処理の方がコストが掛かりそうです。

  そして,この部品情報をBlock Chainで管理すれば,容易に部品が正真のものかどうか確認できるので,同社はSAPクラウドでの運用に向けてSAPと話し合っているようです。

  ナノ結晶の分布は皆異なり,配置を変えることも難しいので,偽物を作るのは難しいとのことです。


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