最近の話題 2019年8月17日

1.El CapitanはCrayが受注

  2019年8月13日のEE Timesが,米国のLLNLに設置されるExaスケールのスパコンEl Capitanは$600MでCrayが受注したと報じています。これでCrayは米国のExaスケールスパコンの商談で全勝ということになります。

  El Capitanはピーク性能は1.5ExaFlops以上で消費電力は30MW,稼働は2023年とのことです。これでシステムベンダーは決まったのですが,CrayはShastシステムはCPU,アクセラレータには依存しないと言っており,まだ,決定していません。

  なお,ArgonneのAuroraは2021年の終わりころに稼働の予定で,CPUは将来のXeon,アクセラレータはXeで,プロセサはIntelの供給となります。そして,Oak RidgeのFrontierは2021年末までに稼働で,CPUはAMDのEpycで,Radeon GPUを付けるという構成で,CPUはAMDの供給となります。Frontierもピークは1.5ExaFlopsとのことです。

  現在のSimmitとSierraはPOWER CPUとNVIDA GPUを使っており,El Capitanで,IBMとNVIDIAが入り込むのかどうか興味が持たれます。

  なお,LLNLのEl Capitanは基本的には兵器開発などに使用されるもので,米国は30年ぶりに核弾頭を更新するが,核実験は禁止されているので,El Capitanでのシミュレーションで開発を行うとのことです。

  なお,El Capitanはヨセミテ国立公園にある巨大な岩壁で,岩登りのメッカです。

2.8月16日に京コンピュータが運用停止

  2019年8月16日の毎日新聞が,8月16日に京コンピュータが利用停止になると報じています。そして,30日までにデータのバックアップ等を行い,30日にシステムを停止するとのことです。

  後を継ぐ富岳の稼働は2021年の予定ですから,1年以上あいだが空くことになります。置き換えを考えて場所に余裕を持たせておけば,もっと長く京を稼働することができた筈ですが,勿体ない話です。

  富岳の計算速度は約40京回とのことで,40倍の性能です。しかし,幾つかの計算では100倍以上の性能を持つとのことです。

3.癌の診断でGoogle AIが好成績

  2019年8月14日のThe Registerが,Google AIが癌の診断で好成績をあげたと報じています。顕微鏡とカメラとコンピュータからなるシステムで,検体を調べることで,乳がんでは0.92,前立腺がんでは0.93という驚くべき好成績をあげたとのことです。

  ただし,カメラからのイメージは5120×5120pixelという大きなサイズで,NVIDIAのTitan XPを搭載したGPUボードで計算を行わせているとのことです。このシステムでリアルタイムに診断を下すことができるそうです。

4.NVIDIAがリアルタイムの会話ができるAIの実現にブレークスルー

  2019年8月13日にNVIDIAは,BERTという最も進んだ言語理解AIを53分という短い時間で学習させることに成功し,推論は2.2msで行えリアルタイムの会話を可能にしたと発表しました。

  ただし,学習にはDGX-2Hを92ノードのシステムを使っており,1472個のV100 GPUを必要としていますので相当高いシステムで,誰でもこの時間で学習ができるわけではありません。しかし,このシステムを使うことにより,これまで数日かかっていたBERT-Largeの学習時間を,53分に短縮したとのことです。

  推論の方はT4 GPUで実行し,2.2msと,リアルタイムアプリで閾値と言われる10msを十分にクリアしています。

  また,開発者は常に大きなモデルを求めており,Transformerをベースとした世界最大のカスタムモデルを作ってトレーニングを行いました。このモデルは83億のパラメタを持ち,BERT-Largeの24倍の規模です。

  Gartnerは2021年までに15%のカストマーサービスの会話はAIだけで可能になると予想しています。


5.研究者がNULLというナンバープレートを取得したら

  2019年8月15日のThe Inquirerが,NULLというナンバープレートを取得したらとい記事を掲載しています。少し余計に払えば好きな文字列のナンバープレートを貰えるので,ある研究者がNULLという文字列を申請したら,幸い空いていて取得することができたそうです。

  しかし,自動でナンバーを読み取るシステムが読めなかったスピード違反などは,違反者のナンバーがNULLになるため,ナンバー不詳の交通違反全部が集まって,この研究者に$12,000分の違反切符が送られてきたそうです。

  

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