最近の話題 2019年8月31日

1.MicrochipがCPM/Memory間のボトルネックを解消

  2019年8月28日のEE Timesが,2019年の8月に開催されたFlash Memory SummitでBest Showアワードを受賞したMicrochip社のSMC 1000 8x25Gという製品に関する記事を載せています。SMC 1000 8x25Gは片側の口は例えばDDR4-3200 DIMMが繋がり,反対側の口ではIBM等が推進するOpen Memory Interfaceに見えるというデバイスです。

  OMIは25.6Gbpsで伝送を行うので少ないピン数でデータを送れます。従って,このデバイスはDDR4-3200の72ピンのデータを8ピンのOMIで伝送します。ちょっとバンド幅の計算が合わないようですが,OMIではプロトコル用のピンがあるので,それを一部データ用に使うとか,なにかトリックがあるのでしょう。

  IBMのPOWER9 CPUはOMIでCPUチップからのピン数を減らしていますが,チップを開発する時に,OMIを使えばピン数を減らす,あるいは同じピン数ならば4倍のメモリバンド幅の製品を作ることができます。

  OMIのインタフェースマクロは,オープンで無料で使うことができるので,OMIインタフェースのSoCを設計する時にライセンスの心配はありません。

  また,メモリメーカーからOMIインタフェースのDRAMが発売されればボードの作り直しは必要ですが,SMC 1000 8x25Gチップを取り除けばその分,安くて,消費電力も小さくできます。

2.PIMでメモリボトルネックを解消するupmem

  Hot Chips 2019でupmemというスタートアップが,前述のMicrochipとは全く異なるメモリボトルネックを解消する解を提案しました。

  DDR4-2400チップに8個のプロセサを埋め込み,DRAMチップで処理を行うことにより,RAM on Chipのプロセサのデータ伝送は多くても,メインプロセサとDRAMのデータ伝送は減らして性能を上げようというアプローチです。

  DRAMプロセスでCPUを作るため,各プロセサの性能は低いのですが,DIMM1枚に16個のDDR4チップがあれば,それだけで128個のCPUが有ることになります。そして,システムでは8枚のDIMMがあるとると全体では1024CPUあることになります。

  このDRAMチップに載っているCPUコアで色々な処理をやらせれば,性能を上げられるというのは理解できます。ローカルなデータ処理が多いアプリでは20倍の性能というのもあり得ることと思います。そして,エネルギー効率は10倍とのことです。

  このようなプロセサ付きのDRAMを作っても,コストアップは僅かとのことです。

  ワークロードに対してPIMを適切にプログラムする必要があり,それをどうやって実現するのか容易ではなく,広く普及するのは難しい気がします。しかし,PIMで大幅に性能を引き上げられる用途が大きければ,経済的に成立する可能性はあり得ると思われます。  しかし,複数の容量のP/Nのチップを作り,故障ビットの分布に対応したメモリ容量の製品を作るには手間が掛かります。

3.イスラエルのHailoが26Topsのエッジ用認識デバイスを発表

  2019年8月29日のEE Timesが,Embedded Vision SummitでのイスラエルのスタートアップのHailoの認識エンジンの発表を報じています。ピーク性能が2Topsで,ResNet-50の実行時に2.8Tops/Wの電力効率を持つとのことです。この認識は224×224で672fpsのビデオを8bit精度,バッチサイズ=1で入力した場合だそうです。この成績は,現在市場に出ているこの手の製品より一桁は高い性能だそうです。

  従って対向車までの距離が遠くても認識ができますし,あるいは安いレンズを使えるなどのメリットがあります。

  ResNet-50などではレイヤーを作って認識を行いますが,レイヤーごとに必要な演算器を割り当て,次のレイヤーの演算器を近くになるように配置して消費電力を減らしています。しかし,このようなやり方は他社も行っており,Hailo-8がなぜ性能が高いかの説明にはなっていません。創立者たちはイスラエル軍の情報部隊の出身で,いろいろとノウハウがあるのかもしれません。

4.盗難を防ぐUWBを使うキーレスエントリをVWとNXPが開発

  2019年8月26日のEE Timesが,VWとNXPが開発したUWBを使うキーレスエントリについて報じています。無線で近傍まで行けばドアが開けられる車は多いのですが,車からのキーシステムの無線信号を受信し,それを家の中に置いてあるキーに中継することで,ドアを開け,エンジンをかけて車を盗むRelay Theftの被害が増えています。

  このVWとNXPのチームが開発したUWB(Ultra Wide Band)方式は,Time of Flight方式で,車とキーの間の距離をcm単位で測定できるので,遠くに置いてあるキーからの中継された信号なのか,キーを持った人が近傍に居るかを区別できます。また,車の持ち主が歩いて近寄る場合,その歩行のパターンを記憶させ,持ち主かどうかをAIで判定させることができるとのことです。

  このように,持ち主の歩き方のパターンで車に近づいてきたのかを識別すれば,単純に車とキーの間の電波を中継するRelay Theftではドアを開けることができなくなります。

5.IBMがOpenPOWERプロセサの設計図を無償公開

  2019年8月29日のThe Registerが,IBMがOpenPOWER CPUをローヤリティーフリーで公開したと報じています。

  これでOpenPOWERの命令セットはだれでも無償で使えることになります。IBMとしては,OpenPOWERを使う人が増え,関連のソフトウェアツールやアプリケーションが増えることを期待しているわけです。

  そしてMicrowattというソフトコアがGitHubで公開され,自由に使えるようになりました。これにはVHDL 2008 で書かれた回路が入っているとのことです。

  しかし,まだ,これは正式の発表ではないのか,IBMのサイトではCreative Commonsに入っており,OpenPOWER Foundationの許可を必要とすることになっています。

  それから,このコードは完全ではなく,キャッシュやSupervisor Modeはtodo listに入っているとのことです。

  

  


  


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