最近の話題 2019年9月14日

1.MITの研究者がカーボンナノチューブFETでRISC-Vプロセサを作成

  2019年9月19日のEE Timesが,MITの研究者がカーボンナノチューブFETを使った16bitのRISC-Vプロセサを作ったと報じています。DARPAの資金を使って開発したものです。

  FETを作るためには半導体のナノチューブが必要なのですが,ナノチューブを作ると金属性のものもできてしまいます。しかし,プロセスの改良で,金属性ナノチューブができる確率が1万分の1程度になったとのことです。記事には,金属性のような欠陥があっても機能に影響がないパターンを使うと書かれているのですが,欠陥位置を把握してそのトランジスタを使用しないだけなのか,あるいは欠陥位置の把握はやらないで,確率的に欠陥が影響しないパターンを選んで,ゲートとして動作しない確率を減らしているのか分からない書き方です。

  製造では,カーボンナノチューブを溶剤に混ぜた材料をウェファにかけて,それを乾燥させて必要なところにカーボンナノチューブを付着させますが,たくさんつきすぎてダマになった部分を溶剤で溶かしてダマを洗い流すとか,付着してほしくないところについてしまったカーボンナノチューブを洗い流すなど,なかなかトリッキーな製造プロセスで高い歩留まりで製造するのは難しいと感じました。

  カーボンナノチューブ自体は導電性が高い分,高速のトランジスタが作れ,ひいては高速のプロセサなどが作れるという期待がありますが,この記事では,RISC-Vのクロック周波数などは書かれていません。

2.Western Digitalが4カ月以内にMAMRディスクのサンプル出荷を開始

  2019年9月4日のThe Registerが,Western Digitalが4カ月以内にMAMR(Microwave Assisted Magnetic Recording)ディスクのサンプル出荷を始めると報じています。

  ビット密度を上げて隣接ビットとの距離が短くなると,隣接ビットの影響で記憶が反転することが起こります。これを避けるには記憶した磁化が反転しにくい材料を使えば良いのですが,そうすると,通常のデータの書き込みで磁化の反転が出来なくなってしまいます。

  この問題を解決するには,ディスク表面の書き込みを行う部分だけ温度を上げて書き込みを容易にするという方式が本命と考えられます。この加熱をマイクロウェーブで行うのがMAMRという方式です。

  記憶容量の増大が要求されており,Western Digitalは,18TBと20TBのMAMRドライブをサンプル出荷するとのことです。

  なお,Western Digitalは,DC HC550というHe封入の16TBと18TBの通常記憶の製品を持っており,また,20TBのDC HC650という製品を持っています。HC650は,レコードトラックを刺身状に斜めにオーバラップさせるShingled Magnetic Recordingという方式を使っています。

3.Windows 7/8.1の7月のSecurity Only Updateには使用監視ソフトが仕込まれていた

  2019年9月13日のThe Inquirerが,マイクロソフトのWindows 7とWindows 8.1の7月のSecurity Onlyのアップデートには,PCがどのように使われているかをマイクロソフトが監視できるスパイウェアが入っていたと報じています。

  Windows 7は2020年1月14日にEnd of Lifeになります。EOLになっても使用することはできますが,プログラムのバグ修正や改良などのアップデートが行なわれなくなります。改良には,新しく出回ったウイルスに対する防御のための修正も含まれますので,それらに感染してしまう危険性が大きくなります。

  そのため,Windows 7を使い続けているユーザに警告を出し,Windows 10に乗換を促すために,どう使われているかを把握する目的でスパイウェアを埋め込んでいるわけです。

  マイクロソフトは,スパイウェアの埋め込みを否定していますが,Task Managerを起動して動いているプロセスを見て,ProgramDataUpdater, Microsoft Compatibility Appraiser, AitAgentというのが,それがEOLになったことを監視するスパイウェアだそうです。

  このスパイウェアがPCの動作に悪影響を与えるとは思えませんが,マイクロソフトにWindows 7を使い続けていると通報して,Windows 10へのアップグレードの勧誘などが頻繁に来ることになると思われます。



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