最近の話題 2019年10月12日

1.黒人の顔認識画像の取得でGoogleに非難

  2019年10月6日のThe Registerが,GoogleのTensor Flow 2.0のリリースと,顔認識で引き起こした問題について報じています。

  GoogleはTensor Flowの改良を続けており,待たれていたTensor Flow 2.0がリリースされました。

  それとは直接関係はないのですが,Googleの顔認識は,黒人,特に黒人の女性の顔の認識能力が低いことが指摘されています。これはトレーニングに使った大部分の画像が白人で,黒人のサンプルが少ないことに起因しているようです。

  ということで,Googleは顔の色が濃い人の画像を集めることにして,Randstadという請負会社に収集を発注しました。

  Randsadは画像を撮影する人に$5のバウチャー(具体的にどのようなバウチャーかは書かれていませんが,例えばマクドナルドで$5として使える券など)を提供して,人を集めたのだそうです。そしてスマホに表示される丸を目で追いかけてもらい,色々な表情の顔の画像を撮影したのだそうです。

  しかし,Randstad社は画像の取得目的を説明して撮影許可を取っていなかったとのことです。さらに,撮影に応じた人の中にはかなりの数のホームレスが含まれていたとのことで,なぜ,最も社会的弱者であるホームレスをターゲットにしたのかという批判が出ているとのことです。

  Googleは次に発売するPixel 4スマホの画像認識の学習にこのデータを使おうと思っていたのですが,このデータ収集プロジェクトはしばらく中断とのことです。

2.EUが5Gネットワークのリスク評価結果を発表

  2019年10月10日のThe RegisterがHuaweiなどの5G機器のリスクの調査報告の公表を報じています。この評価報告ではHuaweiを名指ししてはいませんが,明らかに,米国がHuaweiの5G通信機器はセキュリティーリスクがあるから買うなと言っている件から行われた調査の結果報告です。

  私なりに調査結果を要約すると,Huaweiが機器に細工をして,情報を抜き取れるようにしたということは見つかっていないようです。しかし,5G通信機器はソフトウェアでコントロールされる部分が3Gや4Gの機器に比べて多いという違いがあります。これは機器を入れ替えることなく新機能を追加できたりして便利なのですが,外部からの攻撃に弱くなります。

  また,4G機器では独立していたセキュリティー機能もよりソフトウェアコントロールできる部分に近くなっているとのことです。この状態ではアタックサーフェスが大きく,侵入を許してしまう恐れが大きくなります。

  この点ではHuaweiに限らないかも知れませんが,Software DefinedでNetwork Function Virtualise Networkの5G機器は被攻撃リスクが高いと言えます。

  もう一つの中国の会社としてのリスクは,政府が通信の情報の提出を陰に陽に強制した場合,どうなるのかというものです。

  しかし,2019年10月10日のThe Registerが報じているように,英国のモバイルネットワーク会社はHuaweiを使うべきと議会の問い合わせに答えたとのことです。ただし,英国単独では市場が小さく影響力が小さいので,Brexitになっても,5Gに対する規制ついてはEUと合わせたいとのことです。

3.瞳に写ったイメージから住居を割り出し

  2019年10月10日のThe Registerが自撮りの瞳に写ったイメージから21歳の女性の住所を割り出して襲ったという事件を報じています。この事件は日本の事件で,当然,日本でも報じられており,ご覧になった方も多いかと思います。

  アイドルグループのメンバーのこの女性は自撮りの写真をネットで公開しており,襲った方の26歳の男は,これらの自撮り写真の瞳に写った風景とGoogle Street Viewのイメージを比較して女性の自宅のある駅を割り出し,駅で待ち伏せして女性を尾行して自宅を突き止めました。そして,その後,自宅で待ち伏せして襲ったとのことです。

  スマホのカメラが進歩するのも,良し悪しですね。AIで画像を加工して瞳の反射を読めなくするような機能がスマホに組み込まれるのでしょうか。

4.中国のウイグル族に対する迫害に顔認識が使われている

  2019年10月9日のThe Registerが,中国政府はウイグル族の人を顔認識システムで常時監視し,数百万人の人を強制収容所にいれてイスラム教を捨て,文化を捨てさせる同化政策を進めていると報じています。

  この少数民族への迫害に反対する米国は,新疆ウイグル自治区の政府や関係機関,そして顔認識システムを作っている監視カメラでは世界一のメーカーのHIKvisionや顔認識で高い技術を持つSenseTimeなどを(Huaweiなどと同様に)Entity Listに入れました。米国の会社は取引できないことになりました。また,関係者には米国のビザを発給せず,米国に入国できなくするとのことです。

  HIKvisionは,米国製の部品の調達に影響がでる可能性があります。HIKvisionの現世代の製品は米国のOn Semiconductor社のPythonシリーズのイメージセンサを使っており,これの輸入は止まると思われます。新製品はSonyのIMXシリーズのイメージセンサチップを使っていますが,日本はどうするのでしょうか?

5.IntelのXeグラフィックスは来年6月に登場

  2019年10月7日のThe Inquirerが,Intelの次世代ディスクリート グラフィックスであるXeは2020年6月に発表,あるいは発売されると報じています。これはIntelのチーフアーキテクトのRaja Kouduri氏がTeslaのModel Sのお尻の写真を投稿したことによります。

  Model Sのナンバープレートが写っているのですが,カスタムナンバーのところがTHINKXEで,プレートの有効期限のところがJUN 2020になっています。これが2020年6月の根拠となっています。

  この時期は,これまでの情報や採用を予定しているAuroraスパコンの稼働時期とも矛盾しません。そして,時期から見てComputexでデモされると予想しています。

6.高速の大容量メモリは大事

  2019年10月9日のHPC Wireが,IntelとLenovoがFlatiron Instituteのクラスタの構築で協力したという記事を載せています。元々はLenovoのThinkSystem SD530を使った700CPU程度のシステムだったのですが,Intelが協力してCascade Lake CPUをCascade Lake APにアップグレードし,メモリ階層はDRAM DIMMをOptane DC Persistent Memoryに交換したようです。

  これで,CPUは24コア/チップから58コア/チップに増え,DIMMのメモリ容量は64GBから512GBに増加しました。また,CPUの計算能力は倍精度浮動小数点数ではAVX512で強化され,AI演算ではDLブーストで強化されて8倍程度に向上しています。

  結果として,遺伝子解析では,当初のシステムでは遺伝子の2%のデータしかメモリに持ってこられなかったのですが,新システムでは1000個の遺伝子を並列に扱えるようになり,大幅に性能が向上したとのことです。メモリ容量が64GBから512GBでは8倍の増加で,なぜ1000個の遺伝子配列を並列に扱えるようになったのかは記事からは良く分かりません。

  CPUチップを入れ替え,DIMMをOptane DCメモリに入れ替えるのは安くないアップグレードと思いますが,大幅に性能が上がるケースであればIntelの営業部門としてはLenovoと協力しても意味のあるケースなのでしょう。

7.ARMがCotex-Mにカスタム命令の追加を認める

  2019年10月11日のEE Timesが,arm Techconで,Cortex-M33にカスタム命令の追加を認めることを発表しました。これまでarmはソフトウェアの互換性が損なわれるという理由から,カスタムの命令の追加は許していませんでした。

  ユーザ拡張機能を追加したCortex-M33は,無料アップグレードとして提供されます。

  一方,Tensilicaは昔からカスタム命令の追加を許容するのがウリで,それでユーザ拡張の機能を作って処理性能を上げています。また,RISC-Vもユーザ拡張の命令の追加ができるようになっています。

  ユーザ拡張の命令の追加を拒んでいてはお客が離れる心配があるとの判断で,armもユーザ拡張命令の追加を可能にしたものです。しかし,TrustZoneなどのセキュリティーに影響を与えるものでないことの確認などが必要であり,今回は,コントローラ用のCortex-M33だけが対象です。

  その他のシリーズについては,次はCortex-R,Cortex-Aも追加命令を許すようにする方針だそうですが,Cortex-Aはかなり時間が掛り,次世代のMatterhornコアでの対応になるとのことです。


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