最近の話題 2019年11月30日

1.IntelがAuroraに使われるXe GPUを発表

  2019年11月27日のEE Timesが米国のエクサシステムのAuroraに使用されるPonte Vecchio GPUについて報じています。

  IntelはSC19の直前の11月17,18日に,SC19会場の近くでHPC Developer Conferenceを開催し,Raja KoduriシニアVPが講演したとのことです。それによると,Intelの新GPUのXeはTera FLOPSからExaスケールまでカバーする何種もの製品が作られます。最上位のエクサ向けのXe GPUはPonte Vecchioと名付けられています。

  そしてXeアーキテクチャは,GPUの標準となっているSIMT実行だけでなく,SIMD実行,最高性能を得るためSIMT+SIMDという実行モードを持つとのことです。

  Ponte VecchioはEMIBテクノロジを使い,GPUチップにHBMを接続し,メモリインタフェースのXe Memory Fabric(XEMF)チップはFoverosテクノロジを使ってダイスタッキングを行うとのことです。このチップにはRamboと呼ぶ大容量のキャッシュを含んでいます。

  そして,Auroraでは2個のSapphire rapidsと6個のPonte Vecchioを搭載したモジュールが使われます。一つのモジュールの中のメモリはユニファイドメモリになっており,CPUからもGPUからも単一の大きなメモリのように使うことができます。更に,oneAPIですから,CPUもGPUも同じAPIでプログラムできるようになります。

  なお,6個のPonte Veccio GPUはCXLのリンクで接続されます。CXLは物理層ではPCIe5.0を使っています。

  Sapphire rapidsとMonte VecchioはIntelの7nmプロセスで作られ,これらは初物です初物です。加えてMonte Vecchioはソフトも全て初物で,Auroraは初物の塊ですが,本当に大丈夫なのでしょうか?

2.SC19でのStudent Cluster Competitionは清華大が優勝

  2019年11月27日のHPCwireがSC19でのStudent Cluster Competitionの結果を報じています。今年の出場は16校で,米国からはNorth Carolina州立大,Purdue大,Tennessee大などチーム,UIUC(イリノイ大),Washington大,Wakeforest大の6チーム,中国からは北京大,上海交通大,上海科技大,清華大の名門ぞろいの4チーム,ヨーロッパからは理工系では世界的な名門校のスイスのETH Zurichに,ドイツのFAU,エストニアのTurtu大,ポーランドのWarsaw大の4校,そして,アジアの理工系の名門のシンガポールのNanyang Technological大,台湾の名門の国立清華大という顔ぶれです。

  この中で,Linpackの最高性能賞はNanyangが獲得し,総合優秀賞は清華大が獲得しました。清華大はこれまで8回優勝しており,これが9回目の優勝になります。清華大は今年はアジアのASC,ヨーロッパで開催されるISCでのコンペティションでどちらも2位に終わり,今回のSC19のSCCでは何としても優勝を狙っていました。

3.ウエファスケールの CerebrasがSC19に出展

  デンバーで開催されたSC19で,ウエファスケールのAIエンジンを開発したCerebrasが展示と発表を行いました。SC19に参加することで,実物がみられたり,CEOのAndrew Feldmanさんと話すことができたというメリットはありましたが,入手できた情報はCerebrasのWebページを見たのとほとんど違いはありませんでした。ということで,興味のある方は,同社のWebページを見てください。

  概要を書いておくと,WSEというチップは,TSMCの16umプロセスで作られ,215mm角と12インチウェファから1個採りという巨大チップです。1.2T個のトランジスタを集積し,最大のGPUの56倍と書かれています。そして,オンチップで18GBのSRAMメモリが載っています。

4.RISC-V Foundationがスイスに移転

  2019年11月26日のThe RegisterがRISC-V Foundationがスイス法人となる予定であると報じています。現在は,米国では多くの法人が設立されているデラウェア州の法人なのですが,米国法人であると,米国の技術を中国のメーカーには使わせないということで,政府から,RISC-VのISAやその他の技術の国外への提供を禁止される可能性があり得ます。

  そのため,RISC-V Foundationをスイスの法人として,米国政府の命令が及ばない形にすることについて,取締役会で賛成が得られ,これから必要な手続きを行うとのことです。

  これが終われば,米国の団体ではなくなるので,米国政府の政策の影響を受ける可能性は小さくなります。

5.韓国のLee Se-dol棋士が引退を表明

  2019年11月28日のThe Inquirerが,AlphaGoに破れたLee Se-dol棋士が,いくら頑張って人間としては最強の囲碁棋士となっても,私が勝てないものが存在すると述べ,棋士を引退することを表明したと報じています。

   Lee Se-dol棋士はAlphaGoとの5番勝負で1回はAlphaGoを破っており,これが人間がAlphaGoに勝った唯一の対戦です。その貴重な勝利をあげたSe-dol氏をしてもいくら頑張っても勝てないと思わせるというのは恐ろしいですね。


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