最近の話題 2019年12月14日

1.CEA-LetiがRRAMを使うスパイク型のニューロチップを発表

  2019年12月11日のEE Timesが,IEDMにおいてフランスのCEA-LetiのRRAM(Resistive RAM)を使うスパイク型のニューラルチップの発表を報じています。

  このチップは130nmプロセスで作られ,RRAMのサイズは0.5μm×0.5μmとのことです。チップは11.5K個のRRAMを集積し,デモではタブレットに手書きされた数字を認識して見せたとのことです。

  学習した重みをRRAMに記憶するニューラルネットはコンパクトで,アナログ的にログ的にログ的に入力を足し算するのは回路的には簡潔ですが,精度などに問題があり,この方式で大規模なニューラルチップを作るのは容易ではありません。しかし,このチップは安定に動作したとのことです。RRAMを使うスパイク型のニューラルチップでまともに動作したというのは,この発表が初めてではないかと思います。

  そして,このチップはニューロンの出力がパルスで,パルス間隔で出力値を表すスパイク型となっています。スパイク型はパルスを出すときは電力を消費するのですが,動作をしていない時には電力を消費しないので,電力効率が高いという特徴があります。

  なお,IBMのTrue NorthやIntelのLoihiもスパイク型のニューロンを使っています。

2.MicrosoftがGame Awards 2019で次世代のXboxを発表

  2019年12月13日のThe Inquirerが,Microsoftの次世代のXboxであるXbox Series Xの発表を報じています。なお,これはThe Game Awards 2019での発表であり,製品発表ではありません。ということで,発売時期は2020年のホリディ―シーズンの予定で,価格も未定となっています。

  CPUはAMDのRyzenのカスタム版で,GPUもAMDのRDNAアーキテクチャののものが採用されるとのことです。4K解像度で60fpsの描画性能が目標となっているとのことです。

3.SiFiveがベクタ命令を持ったRISC-Vコアを発表

  2019年12月10日のThe Registerが,RISC-V Summitにおいて,ベクタ命令をサポートするコアのライセンスを発表したと報じています。なお,RISC-Vのベクタ演算命令の仕様が公表されるのは,これが初めてです。

  RISC-Vのベクタ命令では,VLENパラメタの設定で最大ベクトル長を変えることができるとのことです。VI2と呼ぶこのコアはVLENが512bitで,ハード的には128bit/cycleの処理ができ,DSPなどの32bitのベクタ浮動小数点計算に比べて約9倍の性能が得られるとのことです。

  詳しい仕様は見ていませんが,The Registerの記述を見ると,armのベクタ拡張命令と似たような考え方の命令のように思われます。

4.量子コンピューティングの話題

  2019年12月12日のHPC Wireが,最近のQuantum Computing業界の話題を集めた記事を掲載しています。

  最初は,RigettiがCircuit Depthを減らすことができる量子ゲートを発表し,クラウドでも提供を開始するという話題です。

  現在の量子ゲートはノイズが多く,エラー訂正ができないレベルのエラーが発生してしまいます。ゲートのエラーを減らすのは重要ですが,計算に必要なゲートの通過段数を減らしてもエラーの発生を減らせます。Rigettiは新しい機能を持つ量子ゲートを考案し,このゲートを使うとランダム回路の通過段数を32%減らせるとのことです。

  そして2番目は,Intelは~4 Kekvinで動作するCryo Controllerチップと高速の量子ビットの評価テクノロジを開発したという話題です。

  3番目はD-WaveがNECと協業し,NECのスパコンとD-Waveの量子コンピュータを組み合わせて使うサービスなどを提供するとか,D-WaveのLeapクラウドサービスをNECが販売するなどを行うとのことです。また,D-WaveのCEOを10年務めたVern Brownell氏は来年1月に退職し,Alan Baratz氏が新CEOになるとのことです。

  4番目は,AWSがAmazon Braket,AWS Center forQuantum Computing,Amazon Quantum Solution Labという3つの活動を始めるという話題です。Amazon BraketはD-Wave,IonQ,Rigettiなどの量子コンピュータをAWSで1か所で使えるようにするものです。AWS Center for Quantum ComputingはAmazonとCaltechその他の研究者を連携させて新しい量子コンピューティングテクノロジの研究,開発を行うとのことです。Amazon Quantum Solution LabはAmazonや関係する研究者と顧客を結びつけ,量子計算のアプリケーションの開発を推進するのだそうです。

  量子コンピューティング各社は,実用上役に立つアプリケーション開発の候補を見つけるために潜在ユーザを集め,協業するのに躍起のように見えます。

5.AppleがNuviaのCEOを告訴

  2019年12月9日のThe Registerが,AppleがデータセンターCPUを開発するスタートアップのNuvia社のGerard William氏をサンタクララの上級裁判所に告訴したと報じています。

  William氏はNuviaを設立する前は,Appleの高性能arm CPU開発のチーフアーキテクトをほぼ10年,務めていたとのことです。

  Apple側の訴えによると,Appleを辞める前から,Appleの設計者をNuviaに引き抜こうとしたり,Appleで開発しているテクノロジを使って新会社を設立すると話をしたりしており,これはAppleに忠実に働くという労働契約に違反しているということでの告訴です。

  Nuvia側は,Appleの労働契約は不備があり,法律的に有効ではない。また,誰もテキストメッセージを記録されることに同意しておらず,その情報は不適切な方法で入手したもので,証拠能力を持たないと主張して裁判で争う姿勢とのことです。

  裁判所での審議は2020年の1月21日から開始される予定です。

  Nuviaについては11月23日の話題で紹介しています。

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