最近の話題 2019年12月21日

1.NVIDIAがXavierの7倍高速の自動運転用SoCのOrinを発表

  2019年12月19日のEE Timesが,中国の蘇州で開催したGTCにおける,NVIDIの自動運転用SocであるDrive AGX Orinの発表を報じています。

  Orinは17Bトランジスタを集積し,9BトランジスタであったXavierの2倍近いトランジスタを集積しています。Orinは,INT8では200TOPSの演算性能を持ち,Xavierと比べると7倍近い性能となっています。Orinの電力効率はXavierの3倍とのことで,フルに動かしたときのチップ当たりの消費電力は2倍強ということになります。

  そして,12個のarm Herculesコアを搭載しています。さらに次世代のGPUコアや新しいディープラーニングコアや新しいコンピュータビジョンのアクセラレータも搭載されていますが,その内容は発表されませんでした。

  また,Orinはレベル2からレベル5の自動運転車を実現しようするもので,ISO 26262  ASIL-Dレベルの安全性を実現できるとのことです。発売時期は,顧客の2022年の自動運転車の量産に間に合う時期になるとのことです。

  AIが十分な学習を積んで安全な車ができるのかは分からないところがありますが,自動運転用のSoCの処理能力という点では,十分という所に到達しつつあるという感じがします。

2.GreenWaveが超低電力のAIチップを発表

  2019年12月18日のEE Timesが,フランスのGreenWaveのGAP9 AIアクセラレータの発表を報じています。

  GAP9はGlobal Foundryの22nmのFDSOIプロセスで作られ,最大50GOPSのAI演算性能を持っています。そして,50GOPSの演算を行っているときの消費電力は50mWとのことです。そして,GAPを使って,MobileNet V1の160×160の画像をチャンネルスケール0.25で認識した時の消費電力は12mWで,806μW/frame/sとのことです。

  GAP8は8個のRISC-Vコアを使っていたのですが,GAP9では1コア増えて9コアになっています。また,GAP8のクロックは175MHzであったのですが,GAP9ではクロックは400MHzに引き上げられています。このように低電力になると,エッジにAIを搭載することが可能になってきます。

3.IntelがHabana Labsの買収を発表

  2019年12月16日のIntelのニュースリリースでIntelはHabana Labsを買収したことを発表しました。買収金額は,約$2Bとのことです。Intelはこの買収によりIntelのAI戦略を推し進め,顧客が必要とする性能の製品を提供することができると述べています。

  しかし,12月17日のThe Registerは,IntelはAIアクセラレータの分野で非常にうまく行っているので,他のAIスタートアップの買収に$2Bを投じたと皮肉っています。

  HabanaのGaudiは学習用アクセラレータで,同社によると,NVIDIAのV100 GPUの3.8倍のスループットを持つと言っています。一方,推論用のGoyaはNVIDIAのT4よりも性能が高く,ResNet-50の画像認識では処理速度は3倍と述べています。

4.東京エレクトロンデバイスがCerebrasとの代理店契約締結を発表

  2019年12月16日のマイナビが,東京エレクトロンデバイス(TED)がCerebrasと代理店契約を締結し,ウエファスケールのAIアクセラレータ(Wafer Scale Engine)を搭載するCS-1システムの受注を開始したと報じています。

  東京エレクトロンデバイス(TED)は,半導体製造装置の大手の東京エレクトロンの子会社で,半導体やコンピュータ関係の部品や製品の販売やサポートを行う会社です。Cerebras Systemsは,AMDに吸収されたSeaMicroを立ち上げたAndrew Feldman氏とGary Lauterbach氏らが立ち上げた会社で,Feldman氏はCerebrasのCEOで,Lauterbach氏はCTOを務めています。

  Cerebrasは30cmのウエファ1枚をまるごと使うAI用のアクセラレータのWafer Scale Engineを開発しているスタートアップです。なお,CerebrasのCS-1は,既に,Argonne国立研究所で動いており,驚異的な性能を発揮しているとのことです。TEDはこれを日本でも販売しようとしているわけです。

  なにしろ,1チップ(215mm角のサイズでチップとは呼びにくいですが)に40万コアを集積しており,大型GPUと比較して50倍とか100倍の計算エンジンを持っています。これだけのハードウェアを普通に実装すると,19インチロッカー1本は必要になってしまいます。従って,CS-1は配線が短く,ケーブル遅延が少ない分高速で動作し,消費電力も少なくて済みます。

  なお,Cerebrasという社名は,お気づきかもしれませんが,Cerebral Cortex(大脳皮質)から取られています。




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