最近の話題 2020年2月22日

1.英国気象庁が現状の6倍の計算能力の次期スパコンを計画

  2020年2月17日のEE Timesが英国気象庁が,現行システムの6倍の性能の次期スパコンを計画していると報じています。現行のシステムはCrayのXC40スパコンを3システム使っており,システム全体では46万コアを使っています。

  しかし,現用のシステムは2022年9月に退役の予定で,新システムは,それまでに稼働する必要があります。

  この計画は2032年までの10年間の気象予報システムを構築するもので,英国の天気予報や異常気象の予報に使われます。英国気象庁は,EUが推進しているEuro HPCとは関係ないプロジェクトとのことです。

  提案を招請している段階とのことですが,少なくとも開発の50%は英国で行うことが要求されています。また,消費電力に対する要求は数値としては示されていませんが,気象庁は消費電力には強い関心を持っており,エネルギー消費量については高い要求を出すと見られます。

  2032年までの期間のプロジェクトの予算総額は£1.2B(約1700億円)で,そのうち,スパコン本体に使われる予算は£854M(約930億円)とのことです。

2.米国のNOAAがが現状の3倍の計算能力の次期気象計算スパコンを導入

  2020年2月20日のHPC Wireが米国のNational Oceanic and Atmospheric Administrationが現行の気象予報用のスパコンを更新することを発表したと報じています。このシステムは現在のシステムと比べて全体の計算能力は3倍で,ストレージの容量は2倍,インタコネクトの速度も2倍とのことです。

  このシステムは12PFlopsの計算能力のCrayのShastaスパコン2システムで構成され,1システムはメインに使用するもので,もう1システムはバックアップで,メインが故障しても天気予報が出せなくなってしまわないようにしています。このような2重化,3重化は気象予報を行うシステムでは常識です。

  この更新で,気象計算のシステムの性能は米国が1位になるとのことです。

3.パソコンで天気予報が計算できる新アルゴリズムSPA

  2020年2月19日のHPC WireがドイツのJohannes Gutenberg University MainzとイタリアのUniversità della Svizzera italianaが共著の論分で,Scalable Probabilistic Approximationという新しいアルゴリズムを開発し,このアルゴリズムを使えば,現在はスパコンを必要とする気象計算はパソコンでも計算できるようになり,スパコンでの計算よりも誤差も小さくなるとのことです。

  そして,このアルゴリズムは気象計算だけでなく,Breast Cancerの診断からNeuroscienceまで応用範囲が広いとのことです。マシンラーニングを使う方法も成果を上げていますが,マシンラーニングを使うと,なぜ,うまく行くのかが分からないブラックボックスになりますが,SPAではどのように計算されていくのかが分かるとのことです。

  論文はこのリンクから見られます。スパコンに比べて5桁から6桁小規模な計算で済むという夢のような話でにわかには信じがたい話です。Bayesian and Markovian modelingに基づくアルゴリズムだそうですが,この辺に詳しい方に解説して頂けると嬉しいです。

4.ドイツのHLRSのHawkスパコンが運用を開始

  2020年2月29日のHPC Wireがドイツのシュトゥットガルト大学のHigh-Performance Computing Center(HLRS)のHawkスパコンの運用開始を報じています。

  HLRSはHazel Henという昨年11月のTop500で35位(5.6PFlops)のスパコンを持つ,欧州ではトップクラスのスパコンセンターですが,このほど,新スパコンHawkの運用を開始しました。

  HawkはHPEのApollo 9000スパコンで,AMDのEPYC Rome 7742 CPUを使っており,ピーク演算性能は26PFlopsとなっています。このシステムはEPYC 7742を2個搭載する計算ノードを5632個使用しメモリは1.44PB搭載されています。ノード間のインタコネクトはMellanoxのInfiniBand HDR200を使用し,25PBのストレージはDDN製です。

  消費電力は通常運用では3.5MWで,HPLを走らせた状態では4.1MWとなっています。

  Hawkの予算の合計は€76Mとのことです。

  

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