最近の話題 2020年3月14日

1.Xilinxが最大規模のVersal Premiumシリーズを発表

  2020年3月12日のEE Timesが,XilinxのVersal PremiumシリーズのFPGAの発表を報じています。現在のFPGA製品と比べて3倍のバンド幅,2倍の計算密度を持ち,消費電力は60%削減されるという新製品です。

  現在のVertex UltraScale+は16nmプロセスで製造されていますが,Versal Premiumは7nmプロセスを使っています。

  今回,7品種のVersal Premiumが発表されたのですが,最小規模のVP1102は1.6M個にSytem Logic Cell,720K個のLUT,1.9K個のDSPスライスを搭載しています。最大規模のVP1802は7.4M個のSystem Logic Cell,3.4M個のLUT,14K個のDSPスライスを搭載しています。

  Versal PremiumはAIやML用の特別なコアは持っていないのですが,このFPGAの使い方ではそれほど高いAI能力は必要とされず,このFPGAで作れるとのことです。そして,ResNet50での画像認識ではVP1802でTesla V100の1.6倍,Tesla T4の2.3倍の性能,Yolov2でのオブジェクト検出ではV100の4.6倍,T4の7.7倍の性能,異常検出のRandom ForestではIntelのCascade Lakeの65倍の性能が出せるとのことで,これで十分と考えているとのことです。

  Random Forestは,ウイルスの侵入で通信パターンが変わったような異常を見つけるAIだそうです。

2.Bill Gates氏がMicrosoftの取締役を退任

  2020年3月13日のThe Registerが,Bill Gates氏のMicrosoftとBerkshire Hathawayの取締役の退任を報じています。ビルゲーツ氏は,およそ45年前にMicrosoftを創業し,今日まで取締役の地位にあったのですが,MicrosoftとBerlshire Hathawayの取締役を退任し,人類の健康問題と気候変動の問題の解決に時間を使いたいとのことです。

  アメリカの大金持ちは慈善活動にお金を出す人が多いのですが,ビルゲーツ氏はMelinda夫人と二人で慈善活動に大金を出し,途上国のエイズ,マラリア,結核の根絶や教育,貧困,保健,介護,識字,子育て,疲労,無戸籍者の水準の改善などに尽力しています。

  ビルゲーツ氏は,資産が10兆円レベルという超金持ちですが,夫妻の死後50年以内に資産を使い切ってBill and Melinda Gates財団の活動を終えると発表しています。

  なお,もう一人のMicrosoftの創立者で2018年に亡くなったPaul Allen氏もアレン脳科学研究所や音楽史美術館などを設立し,また,武蔵を始めとする沈没した戦艦の探索にもお金を出しています。

3.HPEがスパコンロードマップを説明

  2020年3月11日のHPC Wireが,Rice大のRice Oil & Gas conferenceでのHPEのHPC and AIのCTOであるSteve Scott氏の発表を報じています。なお,この記事からリンクされているHPC Wireの記事からのリンクにこの発表のビデオが張り付けてあるので,興味のある方は,そちらも参照ください。

  HPEによるCrayの買収で各種の製品を持つことになったのですが,基本的には液冷のプラットフォームはShastaに統合し,空冷のプラットフォームはHPE  Apolloに統合する。そして,ストレージはClusterStoreに統合するとのことです。

  富士通のA64-FXを使うシステムは時間が無かったことから,CS500プラットフォームを使うことになったとのことです。しかし,将来的にはHPE-Apolloに統合されるとのことです。

  また,Shastaが販売されるようになっても,現在のハイエンドのXCラインは残るとのことです。

  ShastaのOlympusアーキテクチャのプラットフォームですが,4つのキャビネットに1台にCDUがついており,最初はキャビネットあたり250KWまでの冷却ですが,300KWにアップグレードし,その後,必要に応じて400KWまで拡大するとのことです。各キャビネットには表側から8台のコンピュートキャビネットが挿入されます。そして裏側からはスイッチシャシーが入り,それにスイッチブレードが挿入されます。キャビネットには64台のSlingshotスイッチが入ります。

  高RadixのSlingshotスイッチを使用しているので,3回のSw-SwホップでFrontier規模のシステムまで構成でき,ケーブルの90%は短距離で信頼性も高い電気ケーブルで,光ケーブルは全体の10%です。

  それから,これまでCrayはAriesを使ってきましたが,Slingshotでは標準と戦うのは止めてEthernetプロトコルを使うことにしたとのことです。ただし,合わせたのはプロトコルで,中身は高性能のスパコン用ネットワークで高い性能を持っているとのことです。

  具体的にどのようになっているのかは発表では触れられていませんでしたが,実際に24GB/s程度の高い伝送速度が出ているグラフが示されました。

  Shastaの特徴は構成の柔軟性とのことで,PCIeやEthernetの数などを自由に選べる柔軟性が大きいと言います。

4.AIスタートアップのNeural MagicがFacebookを告訴

  2020年3月11日のThe Registerが,AIスタートアップのNeural MagicがFacebookとNeural Magicの元従業員でFacebookに移ったエンジニアを企業秘密を盗んだとして告訴したと報じています。

  Neural MagicはGPUやAI用のハードウェアを使わずにGPUを使った場合と同レベルの性能が得られるコンパイラを開発しています。

  Aleksandar Zlateski氏はTechnology DirectorとしてNeural Magic社に雇われていたのですが,1年余り後に,Facebookに移りました。その時にNeural Magicの企業秘密のアルゴリズムを盗み,Facebookの従業員のチームに渡し,その後,FacebookはそれをGitHubに公表しました。

  これはAleksandar Zlateski氏がNeural Magicとの守秘義務契約を破っており,Facebookにそのコンパイラの使用を止めるように文書で申し入れたのですが,聞き入れられなかったとして訴えたものです。

  Neural Magicのコードは低精度の行列乗算を効率よく実行するものです。FacebookのコンパイラはSPARSE GEMM JITと呼ばれているとのことで,疎な低精度係数を使う行列乗算を無駄を省いて,高性能で実行するアルゴリズムに特徴があるようです。


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