最近の話題 2020年3月21日
1.英国のIsambard 2にA64FXパーティションが付く
2020年3月8日のNext Platformが,英国のIsambard 2スパコンに富士通のA64FXプロセサのパーティションが付くと報じています。
現在のIsambardはThunder X2プロセサを使うarmスパコンで10,496コアのスパコンですが,次期のIsambard 2は,Thunder x3プロセサを使い,コア数を21,504コアと約2倍にするとのことです。ただし,Thunder X3はX2のマイナーチェンジとのことです。
しかし,Isambard 2には富士通のA64FXプロセサを使うCrayのCS500の164ノードのクラスタシステムが付くとのことです。Isambardを開発しているブリストル大は,色々なテクノロジを組み込んで,どんな性能や使い勝手になるかを試したいとのことで,Thunder X3には無い,SVEベクトル機構とHBM2の高バンド幅3Dスタックメモリが,どう効くのかに強く興味を持っているようです。
2.IntelがLoihiチップで電子の鼻を作った(その1)
2020年3月18日のHPC Wireと次の2020年3月17日のEE Timesが,Intel研究所のLoihiニューラルチップと,それを使って作った電子の鼻という記事を載せています。
LoihiはIntelの第5世代のニューラルチップで,2017年に発表されましたが,鼻のように具体的な成果が発表されたのは初めてではないかと思います。
Loihiは学習モジュールを組み込んだ128個のコアを集積したチップで,131K個の計算ニューロンを含んでいます。そして,Pohoiki Springsというボードは768個のLoihiチップを搭載しています。そして,IntelのNahakuボードはPohoiki SpringボードとArria10FPGAなどを搭載しており,通常のサーバ5台分の大きさとのことです。しかし,消費電力は500W以下と書かれています。(Loihiと周囲のFPGAを加えて0.7W以下という計算で,少なすぎると思います。)
Intelは,Kapoho BayというLoihi 2個の小型のものも作っています。
3.IntelがLoihiチップで電子の鼻を作った(その2)
2020年3月17日のEE Timesが,Intelの電子の鼻を報じています。Intelの研究所はスパイク型のニューロンを研究しています。多くのニューロチップは複数bitの信号線で一つのニューロンの信号を伝達していますが,Loihiと呼ぶこのチップでは,信号のパルスで伝えられ,パルスの時間間隔が短くなるにつれて強い信号を意味します。
そして,そのシナプスを通る信号が頻繁になると,信号が通り易くなり,その信号が伝わり易くなるという学習が行なわれます。
IntelはCornel大学の神経医学者と協力して,電子的な鼻を実験的に作ったとのことです。このシステムは72種の化学物質を検出するセンサーを持ち,それに10種類の物質の個別の臭いを嗅がせて学習させ,次に10種の物質を適当な比率で混合して嗅がせ,どの臭いが含まれているかを検出させる実験を行いました。
その結果,含まれている10種の物質を正しく当てることができたとのことです。
このシステムをより改良して,臭いの似ている物質の区別をしたり,
例えば体臭のようにばらつきが大きい臭いでも同じクラスの臭いと判別できるようにしたいとのことです。
鋭敏な電子的な鼻ができれば,医療やセキュリティーの分野で色々な用途で使えるようになります。
4.NVIDIAが遺伝子解析ツールキットを90日間無償提供
2020年3月19日のHPCwireが,NVIDIAが今日から,Parabricks遺伝子解析ツールキットを新型コロナウイルスの解析を行う研究者に90日間無償提供すると報じています。普通は数日かかる遺伝子解析を50倍加速することができるとのことで,COVID-19を理解し,ワクチンを作ったりする研究を加速することが期待されます。
ただし,今回の無償提供は遺伝子解析ツールキットのライセンスだけで,GPUは研究者の方で用意する必要があります。
NVIDIAはこのようなCOVID-19と戦うのに役立つ資源を提供してくれるパートナーを募集しています。
5.英国ではノートパソコン,モニタ,WLANなどが飛ぶように棚から消えている