最近の話題 2020年4月4日


1. 今年のCool Chipsはオンライン開催 

  2020年4月2日のマイナビが,今年のCool Chipsはオンライン開催と報じています。これまで長年,横浜の情報文化センターで開催されてきたCool Chipsは,今年は,日立中央研究所での開催で準備を進めてきたのですが,新型コロナウイルスの感染が広がる中,オンライン開催ということになりました。

  マイナビの記事は,私の書いたCool Chipsの紹介記事で,どんな発表が行なわれるかはそちらを参照してください。

  横浜の住人の私としては国分寺の日立中研に行くのは大変で,オンライン開催で助かりました。

2. Microsoftが今年のイベントは全てディジタル開催に変更

  2020年4月2日のThe Registerが,Microsoftは2020年の人が集まるイベントは全て止めて,ディジタル開催に切り替えると発表したと書いています。

  9月にニューオルリーンズで開催予定だった2万人を集めるMicrosoft Igniteもディジタル開催となります。

  Microsoftはこの機会を利用して,最高品質のディジタルファーストの経験を提供するプラットフォームを試みると言っており,ディジタル開催の使い勝手が改善される可能性があります。

  旧知の友達と会ったり,製品の展示を見るなどの人が集まるコンファレンスの良さにどこまで迫れるかは分かりませんが,このコロナの危機を逆に機会ととらえてディジタル開催の技術を進歩させるのは正しい姿勢だと思います。しかし,ディジタル開催が便利になれば,コロナが収まってもコンファレンスのやり方は元には戻らないでしょうね。

3. 2019年の半導体各社の売り上げトップはIntel

  2020年4月2日のThe Registerが,半導体チップの売り上げトップはIntelと報じています。なお,このランキングは半導体製品を作っている会社のランキングで,二重カウントになってしまうので,TSMCのようなFabは含んでいません。この調査はOmdia(旧IHS Markit)が行ったものです。

  2019年は前年と比較してAIアクセラレータ関係の半導体は7%ダウン,DRAMは37.2%ダウン,NANDは24.5%ダウン,無線関係のチップは13.3%ダウンと散々な年で,ほとんどの会社が前年より売り上げを下げた中で,Intelは1.3%アップ,Broadcomは5%アップとこの2社だけが売り上げを伸ばしています。

  Intelが伸びた理由は製品の多角化で,一時はPCプロセサが主力だったのですが,現在はデータセンタチップ,IoTチップ,AIアクセラレータ,FPGAなどと色々な製品を作っており安定した収益基盤を築いているのが強みというのがOmdiaの分析です。また,2019年4Qの決算では,データセンタ向けのチップの数量が12%増加し,販売単価も5%上がったと書かれており,データセンタで稼いでいるようです。

  そして,SamsungはDRAMやNANDの不調で売り上げが落ち込み,売り上げの世界シェアではIntelが16.5%で世界トップ,2位はSamsungで12.3%,3位はSK Hynixで12.2%となっています。Broadcomは5位で4.27%です。

  Qualcommは売り上げ$14.4Bで6位,NVIDIAは売り上げ$9.5Bで9位となっています。AMDは$6.7Bでトップ10にははいっていません。

  なお,この売り上げとランキングには新型コロナウイルスの影響は入っておらず,今年の結果は色々と変わってくるものと思われます。

4. SスタートアップのPerceive社が20mWのエッジAIチップを発表

  2020年4月2日のEE Timesが,情報理論に戻ってニューラルネットワークの計算法を再発明し,55TOPS/Wの超高効率のエッジAIチップの発表を報じています。このチップはYOLOv3ニューラルネットワークで30fpsの入力の物体検出を20mWの消費電力で実行できるとのことです。これは他社のAIチップと比べると20~100倍高い電力効率です。なお,20mWはErgoと呼ぶチップだけの電力で,メモリの電力は含んでいません。

  PercieveはXperiからのスピンオフで,これまで開発資金はXperiが出しており,ベンチャーからの資金は入っていないとのことです。Perceiveの創立者でCEOのSteve Teig氏はXperiのCTOで,現在も引き続きXperiのCTOを務めているそうです。

  犬が写っているかどうかを判定する場合は,犬らしさの情報を処理すればよく,その他の情報はノイズである。ノイズも含めて処理するから計算量が多くなり,消費電力が増えるという話が載っていますが,どうやって犬らしさの情報だけを処理することができるのかは書かれていません。

  また,ハードウェアアーキテクチャの点でもMACのアレイは使っていないとのことですが,どうやって計算を行っているのかは明らかにされていません。

  このErgoチップは既にサンプルとリファレンスボードのサンプル出荷を開始しており,今年2Qには量産開始の計画です。

5. Samsungが液晶を止め,量子ドットパネルに注力

  2020年3月31日のThe Registerが,今年の末でLCD(Liquid Crystal Display)の製造を止めると報じています。LCDは中国のメーカーが高額の補助金を使って安値攻勢をかけており,採算が取れないのだそうです。

  現在のスマホでは,自己発光する素子なので明るく,表現できる色の範囲も広いAMOLED(Active Matrix Organic LED)が使われており,LCDパネルの使用量が減っているということもあります。

  Samsungは国内の持つ液晶ラインに£8.65B(約1100億円)以上をかけて量子ドットパネルの製造ラインに転換する計画とのことです。

  OLEDは有機半導体を使っているので,経年変化で劣化しやすく,発光で劣化するため長時間表示した絵が焼き付くなどの欠点がありますが,量子ドットはそのようなっ問題が無く,AMOLEDよりも発光が明るく,屋外で使われることもあるスマホのディスプレイとしては最適とのことです。そして,量産が進めば製造コストもAMOLEDよりも安くなると見られています。

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