最近の話題 2020年6月6日

1.iPad Pro 11のLiDAR Scannerを解体調査

  2020年6月5日のEE Timesが,iPad Pro 11のLiDAR Scannerの解体調査の記事を掲載しています。iPad Pro 11はA12Bionic CPUを搭載したのも目玉ですが,EE TimesはSystem Plus Consultingの解体調査の結果を載せています。

  それによると,iPad Pro 11はDirect Time Of Flight方式のセンサーを搭載した初めてのスマホとのことです。これ以前のスマホでは近赤外光でメッシュなどの規則的な図形を投影し,それの歪からセンサーから物体までの距離を求めるindirectなTOFでしたが,今回は照射した光が物体にあたってセンサーに戻ってくる時間を直接計測しています。

  光源はチップに垂直にレーザ光を出すVCSELで,Lumentum社の製品です。VCSELの電力とレーザービームの形状をコントロールするためにTIのドライバチップを使っているのですが,Wafer Scale Chip Level Packagingという技術を使っているそうです。

  さらにVCSELアレイの上にAmsAGのDiffractive Optical Elementというものがあり,これでDotパターンを形成するのだそうです。

  LiDAR Scannerと書いてありますが,初期の自動運転車に使われた回転するLiDARスキャンではなく,電子的にビームを振ってスキャンするものかと思ったのですが,この記事の表現では正確には良く分かりませんが,グリッドのような図形を投影してスキャンの効果を作り出しているように思われます。

  もう一つ大きな改良はSonyの近赤外光のセンサーアレイで,Single Photon Avalanche Diodeで近赤外の反射光を検出します。ピクセルのサイズは10μmとのことです。そして,このピクセルの中に全ての接続を収めて作られています。このセンサーが作れるのはSonyだけで,iPad Pro 11のデザインウィンで,$1B売り上げが増えるとこの記事は書いています。

2.ISC 2020 Digitalは後で視聴も可能

  ISC2020のレジストレーションにコメントを書き込める欄があり,フランクフルトで午後4時からの開催は日本では深夜で出席が大変,今回はディジタル開催でビデオがあるのだから事後でも見られるようにしてもらえないかと書きこんで,頼んでみました2020年6月29日にISC GroupのRegistration SupportのNicole Neumannさんから,つぎのようなメールをいただきました。

We recognized your comment within your registration and would like to explain,
that according to our agenda you can see on which day and time presentations are available.
Starting on that point they will be available continuously for registered participants (with login via our online agenda) and later for everyone (2 weeks after the event). So you can watch them whenever is suits you best.

  ビデオのコンテンツは,アジェンダに載っている時刻に公開されたら,その後,ずっと見られるとのことです。ただし,レジストレーションしていない人は2週間待たないと見られません。

  これで,Top500の発表くらいは日本時間の23時10分から見るとしても,大部分の発表は次の日の朝みてもOKです。

3.NVIDIAのデータセンタービジネスの半分はハイパースケーラへの売り上げ

  2020年6月3日のThe Registerが,NVIDIAのデータセンター向けのビジネスは半分がGooglr,Amazon。Microsoftなどのハイパースケーラ―と報じています。Bank of America Securitiesの2020年のGlobal Technology ConferenceにおけるNVIDIAのCFOのCollette Kress氏の講演で,明らかにされました。

  ハイパースケーラーのInference需要の伸びは非常に順調で,この四半期は2桁パーセントの伸びとのことです。まあ,ブラウザでの操作から個人の好みが記憶されて,その人が好みそうな製品の広告がどんどん表示される世の中ですから,推論の需要が増えているのは実感できます。

  そしてKress氏はA100 GPUも市場に出るので,データセンタービジネスの伸びは継続すると強気です。

4.Stanfordの研究者等がnm世代に変わる半導体プロセスのメトリックを提案

  2020年6月1日のHPCWireが,nmノードに代わる半導体プロセスのメトリックを提案したと報じています。7nmノードの半導体プロセスといっても本当に7nmの寸法のところは無く,各社の7nmプロセスの寸法で一番小さなFinピッチでも30nm前後です。これではノードの数字とメトリックが全く乖離しているので,もっとよく性能を表すメトリックが必要だとして,Stanford,UCB,TSMCなどの研究者が考え,Proceedings of the IEEEに発表しました。論文の第一著者はStanfordのPhilip Wong教授で,UCBのChenming Hu教授やStanfordのSubhasish Mitra教授などが著者に入っています。

  検討の結果,性能を高めるためにはロジックの密度(DL),オフチップのメモリの密度(DM)とチップとメモリの間を繋ぐ信号線の本数(DC;バンド幅)が重要ということで,DL, DM, DCというメトリックを提案しています。このメトリックは,現状では[38M TR/mm2,383M bit/mm2,12K 本/mm2]と結論付けています。

  しかし,数字が2つ以上になるとどちらが性能が高いかという比較ができなくなってしまいます。この辺が難しいところで,Top500のHPL性能はスパコンの実用的な性能を示していないという批判は強いのですが,いまだに一番ポピュラーなメトリックとして使われています。この点では,何nmノードという言い方も無くならないのでしょうね。


  

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