最近の話題 2020年6月13日

1.TSMCが4nmのN4プロセスの存在を発表

  2020年6月9日のEE Timesが,TSMCが5nmと3nmノードの間に4nmプロセスが入ると発表したと報じています。

  TSMCは5nmのN5の生産を開始しており,2022年にN5P,2023年にN4の量産へと進む計画です。N4の存在がTSMCの発表以前に一部のメディアにリークしたことから,TSMCはN4に対してこれ以上の情報は発表しないとのことです。

2.Amazonが計算最適化とメモリ最適化したGraviton 2インスタンスを発表

  2020年6月12日のThe Registerが,AWSでの計算最適化したインスタンスとメモリ最適化したインスタンスの提供開始を報じています。Amazonは5月に汎用のサーバであるM6gインスタンスの提供を開始したのですが,それに続く,計算サーバに最適化したC6gインスタンスとメモリ処理に最適化したR6gというインスタンスの提供を開始しました。

  Graviton 2 CPUは64コアを搭載しているので,M6gインスタンスにはCPUが,2,4,8,16,32,48,64のバリエーションがあり,1つのvCPUには4GBのメモリがついています。ネットワークのバンド幅は16vCPUまでは最大10Gbpsで,32vCPUの構成では12Gbps,48vCPUでは20Gbps,64vCPUでは25Gbpsとなっています。

  そして,Elastic Block Storeのバンド幅は,8vCPUまでは最大4750Mbps,16vCPUでは4750Mbps,32vCPUでは9000Mbps,48vCPUでは13500Mbps,64vCPUでは18000Mbpsとなっています。

  今回,提供されるC6gはIntelのCascade Lakeを使ったC5インスタンスと比較すると最大40%高い性能/価格となるとのことです。また,R6gは現在のXeon Platinum 8175を使うR5インスタンスと比較すると40%高い性能/価格を提供するとのことです。

  なお,Graviton 2は7nmプロセスで製造され,armのNeoverseコアを64個搭載しています。各コアには1MBのL2$を持ち,全コアに共通の32MBのL3$を持っています。

3.Pittsburgh Supercomputingセンターが2台のWafer Scale Engineを搭載するAIスパコンを導入

  2020年6月9日のHPC Wireが,Pittsburgh Supercomputing CenterがHPEのSuperdome FlexサーバにWafer Scale Engineを搭載したCS-1サーバを接続したNeocortexと呼ぶAIスパコンを導入すると報じています。PSCはカーネギーメロン大とピッツバーグ大の共同の研究施設で,NSFから$5Mの資金を得て,このシステムを導入します。PSCはカーネギーメロン大とピッツバーグ大の共同研究施設で,NSFから$5Mの資金を得てこのシステムを導入します。

  CrebrasのWafer Scale Engineは400,000 AIコアを12インチウェファ1枚取りのチップに搭載したAIプロセサで,これをSuperdome Flexに2台接続しているので,全体では共通メモリで800,000コアのAIスパコンとなっています。さらにSuperdome Flexは32個のIntel Xeon CPU,24TBのメモリ,205TBのFlashストレージを持っています。そしてWSEを搭載したCS-1サーバは12本の100GbEを持っているので1.2Tb/sのバンド幅でマシンの間を接続できます。

  このシステムは共通メモリなので,全部のコアを纏めて使うこともでき,通常のGPUの800-1500倍の処理能力を持つとのことです。そのため,BERTやMegatron-LMのような数100MからB個のパラメタを持つ巨大モデルにも使えるとのことです。

  なお,Argonne国立研究所でも1台のCS-1が動いています。

4.arm ChinaのCEOのAllen Wu氏は解雇されたのか?

  2020年6月10日のEE Timesが,armの中国法人のトップのAllen Wu氏について,辞めさせられたという説と,人事の変更は無くAllen Wu氏はCEOの職についているという発表が交錯していると報じています。

  2020年6月12日のThe Registerの方が分かりやすいので,こちらをもとに記事を書きなおしました。

  6月9日にCambridgeのarm本社がarm ChinaのCEOであるAllen Wu氏を解任し,Phil Tang氏とKen Phua氏をinterim co-CEOに選任したと発表しました。

  しかし,翌6月10日にarm ChinaはWeChatでAllen Wu氏の役職に変更はなく,CEO職を継続していると発表しました。arm Chinaは中国に設立された独立の会社で,役員会でWu氏を解任する決議を行っておらず,Wu氏はCEOのままであるというロジックです。

  それに対して,arm本社はarm Chinaの大株主のHopu investmentと一緒に,Conflict of Interestを開示しなかったという理由でAllen Wu氏を解任したと発表しました。

  これに対してarm Chinaは,Phil Tang氏は重大な規約違反があり,5月26日にarm Chinaを解雇されており,arm Chinaを代表する資格がないと発表しました。

  役員会でのバトルは,ソフトバンクがarmを買収した2年前にさかのぼり,ソフトバンクがarmの中国事業の51%を中国の投資ファンドなどに$775Mで売却したことから始まったとのことです。つまり,英国のarm本社と中国の投資ファンドの戦いのようで,簡単には決着はつきそうにありません。

5.Jim Keller氏がIntelを去る

  2020年6月11日のThe Registerが,6月11日付でIntelを辞めると報じています。Jim Keller氏は伝説のDEC Alpha 20164,20264の開発に携わり,その後,AMD,PA Semi,Appleなどを渡り歩き,Teslaに在籍していたこともあります。

  2018年にIntelに移り,シリコンエンジニアリング担当の上級副社長として勤めました。辞任の理由は,個人的な理由とのことです。辞任は6月11日付けですが,6か月間はコンサルタントとして勤める約束になっているとのことです。その後,何をするのかについても,明らかにされていません。

6.Top500のErich Strohmaier氏がリタイヤ

  2020年6月11日のHPC Wireが,Top500の結果のチェックや集計,発表などを引き受けてきたBerkeley LabのErich Strohmaier氏がリタイヤすると報じています。

  Strohmaier氏はドイツ生まれでManheim大で故Hans Meuer教授についたことから,スパコンの世界の性能性能リストの作成に引きずり込まれたのですが,彼が居なければ,毎回発表されているスパコンの性能の推移の詳細な分析は出来なかったと思います。

  当初はMeuer教授のところで働いていたのですが,そのプロジェクトが終わってしまったので1995年に米国に来て,米国に居ついたとのことです。

  SCやISCでは,毎回,Erichとはよく話をしていたのですが,それも出来なくなるのかと思ったのですが,HPC Wireの記事をよく読むとTop500との関りは続けるとのことです。


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