最近の話題 2020年7月4日

1.Green500で1位となったPFNのMN-3スパコン

  2020年6月22日に発表されたGreen500で1位を獲得したpreferred Networks(PFN)のMN-3ですが,どんなシステムでしょうか?

  Preferred Networksはマシンラーニングのソフトやハードを開発しているスタートアップですが,大手企業から多額の投資を集めて事業を拡大しており,日本のスタートアップの中で企業価値最大のユニコーンです。

  マシンラーニングを研究開発するには,強力なハードが必要ということから,MN-1,MN-2というマシンラーニング用サーバを開発し,MN-3はその3代目のマシンです。MN-1,2はNVIDIAのGPUを使って作ったのですが,MN-3は自社開発のMN-Coreという自社設計のエンジンを使っています。

  MN-CoreはFP64では8.2TFlops,FP32では32.8TFlops,FP16では131TFlopsの演算性能を持ち,TSMC製のこのチップを4個,1枚のプリント基板に搭載しています。これにメモリなどを付けたのもがノードで,MN-3aシステムは48ノードのシステムですが,Green500で1位となった結果を得たのは40ノードを動かした測定の場合です。

  測定結果は,HPLは1621.1GFlops,消費電力は76.8kWで,電力効率は21.10807292GFlops/Wで1位となっています。

  このチップの開発にあたって,仕様策定を主導したのが神戸大学の牧野淳一郎教授の研究グループで,東大の平木 敬名誉教授には高速伝送基板の評価を指導いただいたと書かれています。このお二人は日本のいろいろなスパコンの立ち上げに貢献してきておられます。また,平木先生はPFNの西川社長の恩師という関係にもあります。

2.GoogleがあなたのASICを無料で作ってくれる

  2020年7月3日のThe Registerが,Googleがあなたの設計したASICを無料で作ってくれると報じています。ただし,設計したものはオープンソースでパブリックという条件で,完全に設計を公開し,誰でも使えるものでなければなりません。また,使えるプロセスは130nmで,20年前の先端プロセスで,チップサイズは10mm2です。

  応募が多い場合は最大40グループを選択します。最初の製造は,今年の11月の予定で,その次は2021年の早い時期を予定しています。応募して,選択されると,プロセスをやってくれ,大体,100チップが提供されます。

  Googleからはプロセスルールなどを含むオープンソースのProcess Development Kitが無償で提供され,設計したASICはCypressからのスピンアウトのSkywater Technology Foundryとのことです。

  古いプロセスでチップサイズは小さいのですが,設計したASICがシミュレータ上で動いたというのと,実際のチップになって動いたというのは大きな違いです。


3.BerkeleyのオープンソースのSonicBOOM RISC-V

  前の記事と同じですが,2020年7月3日のThe Registerが,BerkeleyのオープンソースのRISC-VプロセサのSonic BOOMについて報じています。これはOut-of-Order実行を行うBerkeleyのRISC-Vの3世代目のプロセサで,64bitのRV64GCアーキテクチャのコアで32KBのL1命令キャッシュと32KBのL1データキャッシュを備えています。性能は3.93DMIPS/MHz,あるいは6.2CoreMark/MHzで,2006年頃のIntelのCoreプロセサ程度の性能です。

  それでも,完全に無料で,ソースを見て分岐予測やOut-of-Order実行のメカニズムなどが学べるというのも意義があります。

  SonicBOOMはChiselで記述されており,パラメタを与えて合成を行えるようになっています。あるいは,FPGAで実現することも可能です。


4.IBMもBlue Gene/Qのコアを公開

  前の記事と同じですが,2020年7月3日のThe Registerが,IBMがBlue Gene/Qに使用されたA2I POWERプロセサコアのVHDLのソースコードを公開したと報じています。OpenPOWER Foundationに申請すれば,ソースコードはCreative Commonsのライセンス条件で使用することができます。

  なお,公開されたソースコードには浮動小数点演算器(FPU)は含まれておらず,Blue Geneスパコンのような使い方をするには,FPUを自分で設計するかIPを調達する必要があります。


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