最近の話題 2020年7月25日
1.Intelが7nmプロセスの遅延を発表
2020年7月24日のToms Hardwereが,7月23日の決算報告でのIntelの7nmプロセスの遅延の発表を報じています。
それによると7nmプロセスの製品の投入開始は,従来の発表の時期から6ヵ月遅れで,7nmプロセスの歩留まり改善は計画と比べて12カ月遅れと発表しました。ということはGranites Rapids CPUやPonte Vecchio GPUの登場は2022年の遅い時期から2023年に遅れることになってしまいます。
Intelは,遅れを小さくするため,他社のファウンドリを使うことも検討しているとのことですが,異なるプロセス用に設計を変更するのは簡単ではなく時間が掛りますし,TSMCやSamsungのファブに余裕があるかどうかも問題です。そして,先端チップの外注はコストも上がりますから,Intelの業績がどうなるかも波乱要因です。
2.フロリダ大が700PFlopsのスパコンを設置
2020年7月22日のEE Timesが,近々,University of Floridaが教育機関では最大のスパコンを持つと報じています。
NVIDIAの共同創立者であるChris Malacowsky氏がフロリダ大学の出身で,フロリダ大に$25Mを寄付することを決断し,NVIDIAは会社として同額の$25M相当の機器,ソフト,トレーニングやサービスを寄付することに決めました。また,大学もAI関係のプログラムに$20Mを用意すると表明し,合計$70Mが集まったというわけです。
それでNVIDIAのDGX A100 140台のSuperPODを設置して,AI開発の拠点を作るのだそうです。このシステムは大学のマスコットにちなんでHiPerGator 3.0と名付けられるとのことです。140台のすぺrPODはピークAI性能は700PFlopsになるとのことです。このシステムはA100 GPUを1120個,MellaoxのQuantum 200G InfiniBand Switchを170台,15kmの光ファイバと3.5TBのストレージを含んでいるとのことです。
BF16フォーマットでSparsityを使ってTensor Coreで演算すればピーク性能は624TFlopsで,それが1120個ですから,ピーク性能は698.880PFlopsで,まあ,700PFlopsと言っても良いでしょう。
この記事にUniv. Floridaに設置された様子の絵(https://www.eetimes.com/wp-content/uploads/UF_NVIDIA_supercomputer_render.jpg?w=1024)が添付されているのですが,床に後列のキャビネットの反射が映り込んでいたり,ガラスドアでの反射や回折が起こっていたり,レイトレーシングを使っていると思われる絵で,A rendering ofと書いて無ければ本物と区別がつきません。Renderingと断らなければ,こういうのもフェイクの一種ですよね。
3.アナログで学習もできるAIチップ
2020年7月23日のEE Timesが,スタートアップのRain NeuromorphicsとMilaというカナダの研究機関の共同研究で完全アナログの学習チップが作れることが示されたと報じています。
アナログの演算回路は特性がばらつきます。回路が大規模になるとそのばらつきを抑えることは困難で,Back Propagationを使うアナログの学習チップを作るのは困難です。
しかし,Yoshua Benjio先生とBen Scellier氏がEquilibrium Propagationという学習法を考案し,エネルギー型のニューラルネットならこのEqProp法で学習させられることを示しました。ただし,チップごとに最適な重みは異なるので,チップごとに学習を行うことが必要です。これは,人間は一人ずつ違っているので,学習も異なるのと同じことです。
Rain NeuromorphicsはこのEqPropとメモリスタ的な特性を示すナノワイヤを使うニューラルネットワーク(MN3)技術を組み合わせて大規模なアナログネットワーク作ろうとしています。
Rain NeuromorphicsはMN3のテストチップをTSMCの180nmプロセスで作ろうとしており,既にテープアウトし,規模の大きいチップを今年テープアウトする予定とのことです。EqPropのテストチップのテープアウトは2021年を計画しています。
2020年7月22日のThe Registerが,NVIDIAがソフトバンクからarmを買うことを考えていると報じています。ソフトバンクは保有する株などの値下がりから大赤字で,armを良い値で現金化して穴埋めしたいと考えており,NVIDIAがarmの買収を考えているならば渡りに船というところでしょう。
ただ,NVIDIAが大金を払ってもarmを買いたいと思っているのかどうかは,私は疑問ではないかと思います。