最近の話題 2020年8月8日


1.HPEがスパコンのブランド名を決定

  2020年8月4日のHPCWireが,HPEのスパコンのブランド名の発表を報じています。HPEは昨年9月にスパコンの名門Crayを買収して,スパコンのブランド名が2系列になってしまっていました。

  今回,それを纏めて,HPE Cray EXとHPE Crayという名称に統一します。EXの方は水冷のハイエンドマシン,EX無しの方は空冷のマシンです。HPEはブランド名にCrayを入れるという約束を守りました。

  HPE Crayキャビネットには8台のシャシーが収容され,それぞれのシャシーには8枚のブレードが搭載され,8本のSlingshotのポートが付きます。

  それぞれのブレードには4つのデュアルCPUノードが付くので,1つのキャビネットには512CPUが収容されます。CPUとしてはAMDのRome EPYC 7002 シリーズがサポートされています。EX付きの方は将来はX付きの方は将来はCPUのアップグレードも計画されています。

2.富士通のA64FX搭載のマシンはどうなるのか

  2020年8月4日のHPCWireによれば,クラスタスパコンであるCray CS500は,今回のスパコン再編でEOLされるとのことです。そこで気になるのがCS500に搭載されるはずの富士通製のA64FX CPUです。

  これについてはHPE Apollo 80のシャシーに搭載するとのことです。ただし,Apollo 80は最大4ブレードで各ブレードには2CPU とのことで,最大でも8CPUのシステムに限定されてしまいます。Apollo 80にSlingshotが使えればより大きな構成が作れますが,Slingshotを付けるには PCIe4.0が必要ですが,A64FXはPCIe3.0しかサポートしていません。

  日本は富士通が自社のスパコン製品を出すでしょうから,より規模の大きなシステムは,そちらで間に合うとして,欧州はより大規模なarmスパコンが欲しいでしょうから富士通スパコンを売るのでしょうかね。それとも欧州はApollo 80をIBでつなぐのでしょうか。そうなると,Slingshotが標準の中では異端な構成になりますね。

  あるいは欧州の顧客を圧力に使って,A64FX CPUでHPE Crayブランドのスパコンを作らせるのでしょうか?その場合は,A64FXからPCIe4.0を出すのは必須ですね。

3.超低電力推論チップのSyntiantが$35Mを調達

  2020年8月4日のEE Timesが,超低電力のAIアクセラレータを開発しているSyntiantがCラウンドで$35Mを集め,ベンチャーキャピタルの投資総額は$65Mとなったと報じています。

  SyntiantのAIチップはキーワードが発言されたことの検出や,話者IDなどに使われており,その出荷数は1M個を超えたとのことです。

  SyntiantはNDP100とNDP101というチップを発売しています。これらのチップはUMCのシンガポールファブで製造されています。NDP100チップは1.4×1.8mmで,NDP101はI/Oのオプションが多いため,少し大きなチップです。

  Syntiantの特色は消費電力が小さいことで,最大100オーディオフレーム/秒でのキーワード認識なら3.4uJで出来るとのことです。同じ仕事をArmのM4ベースでやると685uJかかり,200倍のエネルギーを消費してしまいます。

  今回の$35Mは,第一に販売チームを強化して,売り上げを増やすのに使う。そして,第二世代のチップの開発は順調に進んでおり,既にチップの評価を始めており,2020年のQ4に量産を始められる見込みです。従って,今回の資金の一部は第3世代の開発やカストマベースの構築に使うとのことです。

4.トランプ 大統領が政府の契約ではH1-Bビザの保有者を雇っている企業との契約を禁止

  2020年8月4日のEE Timesが,トランプ大統領が, on Aligning Federal Contracting and Hiring Practices With the Interest of American Workersという大統領令を発し,一時的なビザ(ここではH1-Bをターゲットにしている)を雇っている企業と契約することの禁止を発表しました。

  米国のハイテク企業は,アメリカの大学で勉強して,卒業後,H1-Bビザでアメリカのハイテク企業に就職している中国人やインド人がたくさんいますから,この禁止令が有効になると,これらの人を雇っている企業は米国政府と契約ができないことになります。禁止令が既存の契約にも及ぶのかどうか分かりませんが,とにかく,大変な事態で,シリコンバレーの先端企業は大混乱でしょう。

  ホテル業界ではH1-Bビザの人をあまり雇っていないので,トランプ大統領はご存知ないのかと思いますが,ハイテク企業の反発は大きいと思われます。もっともハイテク企業の経営者などは,元からトランプ氏には投票していないので,眼中にないのかも知れません。


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