最近の話題 2020年8月15日

1.Intermolecular社がALD薄膜の新型3D Xpointメモリを開発

  2020年8月11日のEE Timesが,ドイツの大手化学品メーカーのMerckの子会社のIntermolecular社が新型の3D Xpointメモリが作れる可能性を持つ4成分CalcogenideをAtomic Layer Depositionで作ることに成功したと報じています。

  GeAsSeTeの4成分をCVDやPVDで作ろうとすると同じ成分比の均一な膜を作るのは難しく,この辺がIntelやMicronが量産に苦労している理由と思われます。加えて3D Xpointメモリでは,印加電圧が閾値を超えると特性が大きく変わるObonic Threshold Switch(OTS)を実現する必要があります。

  スレショルド電圧を揃えて,急峻なスイッチ特性を持たせることはさらに難しいようで,これが歩留まりに影響してコストが下がらないのではないかと思われます。

  これに対して,Intelmolecular社はALDでカルコゲナイド膜を作り,OTS特性も優れた膜を作ることに成功しているとのことです。

  Intelの3D Xpointメモリは,現在,最大でも4bitの積み重ねですが,Intermolecularの方式では,3D積層のフラッシュメモリのように多数のビットを積み重ねられます。

  3D Xpointが3D積層フラッシュのビット密度に近づけばコンピュータの記憶階層に革命が起こる可能性があります。

2.AAAのADAS機能のテストの結果は?

  2020年8月11日のEE Timesが,AAA(American Automobile Association)の実施したADAS(Advanced Driving Assistance System)のテスト結果を報じています。

  AAAは日本で言えばJAFのような団体ですが,規模が大きく,歴史も長いので技術的な蓄積もしっかりしています。

  AAAは,ADAS付きの2019 BMW X7,2019 Cadillac CT6,2019 Ford Edge,2020 Kia Telluride,2020 Subaru Outbackを使ってテストを行いました。その結果,学習したシナリオは比較的うまくこなすのですが,近くにダミーの車が走行している状態では2/3のケースでダミー車と衝突を起こし,平均の衝突速度は25Mile/hrだったとのことです。

  自動運転は,路上などに固定の障害物がある場合については色々なケースで良く学習されているのですが,ダミー車が走っている状態に対応しきれていないことが指摘されました。

  また,ADAS車は,ADASで対応しきれない状況になると,人間のドライバに運転を変わってもらうようにするのですが,その時に十分な交代時間が取られていないことが指摘されました。少なくとも,人間のドライバが何をしているのかを監視するDriver Monitoring Systemを搭載し,何時,人間に運転を変わってもらえるのかを考えることが必要と思われます。

3.Intel Architecture Day 2020

  2020年8月13日にIntelはArchitecture Day 2020を開催し,先端のプロセステクノロジ,新規のメモリ階層,先端パッケージング,単一の抽象化ソフトウェア層により組み込まれる光速のインタコネクト,セキュリティーといった広範な技術について発表しました。

  プロセステクノロジについてはSupeerFinと呼ぶ,Finなどの低抵抗化やMIMキャパシタの5倍の増加など性能改善に効果の大きいところを改良し,定量的な発表ではありませんが,合わせ技で半導体の1世代の微細化に相当する改善を達成したとのことです。

  このSuperFinを適用したWillow CoveコアはTager Lake SoCに1世代分の性能ジャンプをもたらしていると述べています。

  そして,複数の小さなチップをEMIBやFoverosなどのテクノロジを使って相互接続してより大きな機能を実現する手法はFPGAやXe GPUにも採用されています。Xe GPUはTere FlopsからPeta Flopsまでスケールするアーキテクチャで,低電力のXe-LPはTiger Lakeにも搭載されます。

  そして,DG1と呼ばれるディスクリートGPUもXe-LPベースです。また,サーバ向けGPUにもXe-LPが使われます。

  Xe-HPはデータセンター向けでマルチタイルで高性能のGPUアーキテクチャで,ペタスケールのAI性能とラックレベルのメディア性能となっています。Xe-HPはSuperFinとEMIBテクノロジを使い複数タイルを一つに纏めています。

  そして,Xe-HPGはゲーミングに最適化したGPU,ArgonneのAurora向けのPonte VecchioはXe-HPCだそうです。

  なお,Architecture Dayのプレス発表資料は,ここから見られます。

4.Groqが,今秋にTensor Streaming Processorの詳細を発表予定

  2020年8月13日のHPC Wireが,Groqが今年の秋のAI Hardware Summitに於いて詳細を発表する予定と報じています。このほどGroqは投資集めに成功し,投資総額を約2倍に増やし,来年末には,さらに2倍に増やす目途がついたとのことで,開発を計画通り実行できるという自信がついたものと思われます。

  GroqのTSPについては2020年のISCAで発表されており,技術的な発表ではなく,ビジネス的な発表が中心になるのかも知れません。



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