最近の話題 2020年8月22日

1.2020年のHot Chipsはバーチャル開催

  2020年8月21日のEE Timesが,バーチャル開催のHot Chips 32について報じています。今年はバーチャル開催でレセプションでのワインや休憩時間のアイスクリームも無くなったので,IEEEの会員の場合は$100強の費用で参加できたのできました。このため,参加者が2300人程度と例年の2倍くらいになりました。

  ただし,カリフォルニアのPDTで起きて,8時間以上も講演や発表を聞いているのは大変なので,どうしても生で(ビデオで同時に)聞きたいものはともかく,それ以外はビデオが発表直後の公開であったので,日本時間で無理のない時間にビデオで見ました。

  ただし,通常は事前に配布される予稿集が発行されなかったので,資料を見返すのがやりにくいという不便がありました。

  興味をもったのは,IntelのRaju Koduri EVPのNo Transistor Left Behindと題する基調講演です。10nmプロセスで躓いて先端の座から転げ落ちた印象のあるIntelですが,EMIBやFoverosとその先まで見通したパッケージ技術の開発,ソフト開発でoneAPIを推進し,ハードウェア非依存のアプリインタフェースを推進する戦略などは流石と思いました。

  それから,注目していたのはCerebrasの第二世代のWafer Scale Engineですが,Cerebrasの発表の大部分はソフトの話で,第二世代WSEは最後のスライドで登場しただけで,プロセスは7nmになり,2.6Tトランジスタを集積し,搭載コア数が850Kに増えたというだけの発表でした。

  GoogleはTPUv2とTPUv3を発表したのですが,その中身の情報は発表されていなかったのですが,今回はv2とv3について中身が発表され,面白い発表でした。

2.真実がSAEの5段階の自動運転レベルにノックアウト攻撃

  2020年8月21日のEE Timesが,真実がSAE(Society of Automotive Engineers)の5段階の自動運転レベルにノックアウト攻撃と題する記事を載せています。EE-TimesのColin Barnden記者の記事で,同氏は25年以上技術的なアナリストをやっており,20年以上自動車について書いてきている人とのことです。

  初期の自動運転の開発時期には,人間のドライバより格段に事故率を下げられるという楽観論が多かったのですが,このところ,自動運転の難しさが認識されてきています。また,SAEはレベル3までは,主体的に運転を行っているのは人間のドライバで,ADASが行っているのは便利な機能を時々補っている過ぎず,自動運転には入らないという解釈に替わってきています。

  そして,Barnden氏は,レベル5はユニコーンだけが住んでいるおとぎ話の世界の話で,現実には存在しない。

  そして,レベル4は投資家を燃やす焼却炉で,入れる物は何でも焼却するが,予想やキャリア,名声などは特に燃えやすいとのことです。

  レベル3は人間にハンドオーバする時間が最長45秒で,それまでの間,車がハイウェイ速度で走り続けたらどうなるか?レベル3は危険である。

  Bernden氏のバイアスもあるかも知れませんが,自動運転は予想していたよりもずっと難しく,開発コストも嵩む。そして,センサーなどもたくさん必要で,機器も高価になる。そんな自動運転車を使ってペイする市場があるのかという懸念も出てきているようです。

3.米国と中国はエレクトロニクスのサプライチェーンを分離する?

  2020年8月19日のEE Timesが,米国と中国のエレクトロニクス産業のサプライチェーンは分離する方向に向かっていると報じています。

  世界最大の受託製造会社のFoxconn(鴻海)のCEOのYoung Liu氏が,かつて言われた世界の工場なるものは,もう,存在しないと説明したとのことです。インドでも東南アジアでも,中南米でも,それぞれに個別の製造エコシステムが作られると述べたということです。

  Foxconn,Quanta,Pegatronなどの台湾の大手受託製造会社は,新しい工場を台湾,ベトナム,インドなどに作って中国での生産を移行しているとのことです。これは米国による中国製品への高い関税を避けるためですが,セキュリティーや知的財産権の関係もあり,サプライチェーンの分離が始まっているとのことです。

4.スマホでドアの鍵をハックする

  2020年8月21日のThe Registerが,国立シンガポール大の博士課程の学生が,スマホのマイクで鍵を挿入して廻された時の音を聞いて,その情報から鍵の形状を推定し,3Dプリンタなどで鍵を複製するという技術を発表したと報じています。

  メカニカルな鍵は鍵の凹凸で内部のピンを押して,そのピンの移動で施錠や解錠を行います。このピンの動きが発する音をスマホのマイクで聞き,その音から鍵の凹凸の形状を推定します。Spikeyという名前のこのソフトは94%以上のケースで,聞いた音から10種以下の鍵パターンに候補を絞り込むことができるとのことです。そして,標準的なケースでは3種に候補を絞り込めるそうです。

  鍵のプロはピンに接触してピンを動かすツールとピンの動きの手触りなどの熟練の技で解錠するのですが,熟練の技のところをスマホのマイクとソフトに置き換えた訳です。



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