最近の話題 2020年10月10日
1.AMDが$30BでXilinxを買う
2020年10月9日のEE Timesが,AMDが$30BでXilinxを買うという報道が流れていると書いています。AMDはIntelのプロセス開発の遅れに乗じて,x86プロセサのシェアを伸ばしており,株価も40%程度上がっています。
一方,XilinxはHuaweiへのFPGAの販売が制限され,目先の販売は芳しくありません。AMDとしては高い株価を利用して,大部分を自社株で支払う買収を仕掛けるには有利な状況です。
Intelは2015年にAlteraを買収してFPGAを手に入れており,今度,Xilinxを手に入れるのは,ある意味,Intelに対抗する動きとも言えます。
2.AMDがZen3ベースのRyzen 5000プロセサを発表
2020年10月8日のThe Registerが,AMDのRyzen 5000プロセサの発表を報じています。今回発表されたのは,Ryzen 9 5900X,Ryzen7 5800X,Ryzen 5 5600XとハイエンドのRyzen 9 5950Xの4品種です。
Ryzen 5900Xは前世代の3900Xと比べるとIPCが19%高く,クロックが上がり,その他の改善も入っているとのことです。5900Xでは8個のコアを同一のチップレットに詰め込んだので,4コア単位でキャッシュが分割され,切れ目を跨ぐオーバヘッドが大きかった点が改良されています。Zen3では32MBのキャッシュを切れ目なくアクセスすることができます。
また,FPUとIntユニットの幅が増えたことで演算性能が上がっているとのことです。
最上位の5950Xは16コア/32スレッドで,クロックは3.4GHz(ターボ時 4.9GHz),L2+L3$の容量は70MBでTDPは105Wとなっています。お値段は$799です。
なお,最下位の5600Xは6コアで65Wで,$299です。
汎用のコンテント生成では,Intelの10コアのi910900Kと比べると5900Xは,ビデオ編集で13%,レンダリングでは59%,CADでは6%,コンパイルでは14%性能が高いとのことです。
3.NVIDIAがBluefield-2 DPUを発表2020年10月4日のGTCで,Bluefield 2 DPUを発表しました。2020年10月5日のEE Timesが記事を掲載しています。データセンタではネットワークやストレージをソフトウェアデファインドにして効率的に使うのが重要になってきており,CPUでそれをやると負荷が大きいという状況になっています。
このような処理からCPUをオフロードしようというのがDPU(Data Processding Unit)です。Bluefield-2 DPUは8個のArm A72コアと2つのVLIWアクセラレータと1個のMellanoxのConnectX-6 Dx NICを搭載しています。そして,セキュリティー関係の処理,ネットワーク関係の処理とストレージ関係の処理を加速します。
Bluefield-2は6.9Bトランジスタで,チップの半分程度の面積をConnectX-DXが占めています。そして,100GbpsのIPsec,50GbpsのRegEx,100Gbpsのビデオストリーミング,5M NVMe IOPSの性能を持ち,データセンタのインフラとして,125個のx86 CPUコアを置き換えることができるとのことです。
Bluefield-2Xは,これにA100 GPUが付いており,マシンラーニングで8系統の信号を監視して以上の検知などを行います。Bluefield-2は70SpecINTのCPUと200GbpsのNICを持ち,Bluefield-2Xはこれに60TOPSのAIエンジンを持っています。
NVIDIAは2022年にはBluefieldd-3,2023年にはBluefield-4を出す予定です。Bluefield-3は350SpecINT,400GbpsでGPUは75TOPSSとなっています。
そして,Bluefield-4は1000SpecINT,400Gbpsで,400TOPSのAIアクセラレータを同一チップに内蔵しています。
4.NVIDIAがA100 GPUスパコンを英国に設置
2020年10月5日のNVIDIA Newsが英国で最も強力なAIスパコンを設置すると報じています。スパコンはNVIDIAのDGX SuperPODで,英国のヘルスケア関係の研究に使用されるとのことです。Cambridge-1と呼ばれるこのスパコンは,80台のDGX A100を使い,Linpackでは8PFlops,AI計算では最大400PFlopsの性能を持ち,英国のスパコンとしては最大で,Top500のランキングでは29位に相当するとのことです。
このスパコンはCOVID-19の研究を含むヘルスケア関係の研究に使われる予定で,製薬企業としては,アストラゼネカやグラクソスミスクライン,研究機関としてはKings College, Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trustなどの名前が挙がっています。
英国は,NVIDIAのarm買収での英国企業の流出に気をとがらせており,NVIDIAもarmの本社はCambridgeから動かさないと言っています。今回のCambridge-1スパコンのCambridgeへの設置は,この約束の裏付けの一環ではないかと思われます。