最近の話題 2020年10月24日

1.TSMCはHPCが次の変曲点になると見ている

  2020年10月20日のEE Timesが,TSMCはHPCが次の変曲点になると見ていると報じています。TSMCはHuaweiへの半導体のビジネスが止められてしまったのですが,他のメーカーからの受注が好調で,売り上げが減少しているということはない様です。

  特に,2021年,2022年あたりはEl CapitanとFrontierのCPUとGPUをAMDから受注しており,NVIDIAからもA100 GPUを受注しており,さらにAI向けのアクセラレータも受注を抱えています。ということでHPCがトレンドをけん引すると見ているようです。

  TSMCによると2020年の売り上げの8%が5nmの売り上げで,2021年にはそれが20%に増加すると見ています。そして,Morgan Chaseのアナリストによると,TSMCは7nm市場で88%という高いシェアを持っているとのことです。

  そして,Intelのプロセス開発の進展によっては,Intelが先進プロセスのCPU,GPU製品の製造をTSMCに委託するということもあり得ます。そうなると,7nm,5nm製品の供給は非常にタイトになります。

  TSMCの次のプロセスはN4です。N4はN5と互換性が高いプロセスで,N5に対して,性能,電力,密度の改善を見込んでいます。N4のリスク製造は2021年の4Qの予定で,量産は2022年の2Hの予定とのことです。

  そして,N5の次の世代の製品がN3で,N5に比べて70%のロジック密度(1/0.7の意味?),15%の性能向上,30%の電力低減を実現します。N3は2021年にリスク製造,量産は2022年の2Hの予定です。

  IntelがCPUの製造にTSMCをファウンドリとして使うかどうかは分かりませんが,調査会社のArete Technologyは,その可能性はあると見ています。また,それ以前にN4でTSMCでの製造,あるいはSamsungでの製造もあり得るという見方です。

2.MLPerf推論0.7はNVIDIAが完勝2.Flex Logixが性能価格比でNVIDIAに挑戦する推論アクセラレータを発売

  2020年10月21日のNVIDIA Developerが2020年10月21日に発表されたMLPerf Inference 0.7で,完勝と宣言しています。MLperfの推論は,学習と版数を合わせるため,0.5の次の0.6は飛ばして0.7が発表されました。

  大きな変更は,リコメンデーションモデルのDLRM,自然言語処理のBERT,スピーチ認識のRNN-T,医療画像処理の3D U-Netというアプリケーションが加わった点です。これで問題アプリの数は倍増しました。また,MLPerfは,一部の問題の結果だけでも登録は出来るので,昔のままの測定結果の登録も可能ではないかと思うのですが,0.5では多くの結果が登録されていたGoogleのTPUの測定値が0.7では姿を消しています。

  0.5の推論ではNVIDIAに対抗する大勢力であったGoogleが姿を消したことから,0.7 Inferenceの結果は大部分がNVIDIAということになり,NVIDIA完勝という結果になっています。

  アプリをチューニングして高い性能値を登録するには工数も掛かり,スタートアップでは余裕がないのかも知れませんが,NVIDIAが大部分のリストを眺めているのも淋しいものがあります。

  0.7からエッジというカテゴリができたので,こちらはNVIDIA以外の登録も多いのですが,エッジの場合,消費電力のような測定値が無いと優劣の判別が分かりません。

3.Flex Logixが性能価格比でNVIDIAに挑戦する推論アクセラレータを発売

  2020年10月21日のEE TimesがFlex Logixの推論アクセラレータの発表を報じています。Flex LogixのInferX X1というアクセラレータはYol v3による対象検出で,NVIDIAのJetson Xavierより30%高速とのことです。

  Flex Logixは,このチップはロボティックス,工場自動化,医療用イメージ認識,遺伝子解析,銀行のセキュリティー自動運転車などに使えると言っています。

  Jetson Xavierは350mm2のチップですが,InferX X1は54mm2と小さなチップです。そして,InferX X1のTDPは7-13Wと手ごろな消費電力です。最も速いクロック速度のパーツの場合,InferX X1は,1000個の場合の単価は$199 , 100万個のばあいの単価は$69とのことで,価格性能比で顧客を集める作戦です。

4.IntelがNANDビジネスをSK Hynixに売却

  2020年10月20日のThe Registerが,IntelがNANDビジネスを,$9Bで韓国のSK Hynixに売却すると報じています。最初に$7Bを支払い,残りの$2Bの支払いは2025年となっています。

  SK Hynixは,IntelのNANDビジネスの買収で,キオクシアを抜いてSamsungに次ぐ世界第二位のNANDメーカーになります。この売却はIntelが大連のNAND工場の売却を含めて,SSDなど全てのIntelのNAND関係の資産をSK Hynixに売り渡すことになります。

  不揮発性メモリですが,今回の売却にはOptane Storage-Class-Memoryは含まれません。

5.Intelの第3四半期の決算は売上4%ダウン

  2020年10月23日のThe RegisterがIntelの第3四半期の決算を報じています。

  売り上げは$18.3Bで前年同期と比べて4%ダウンです。データセンタグループの売り上げは$5.9Bで,これは7%ダウンですが,クラウドの売り上げを見ると15%アップとなっています。一方,エンタープライズと政府関係の売り上げは47%ダウンという大きな落ち込みです。

  その他に,IoTグループは33%ダウン,Mobileyeが2%アップ,不揮発性メモリが11%ダウン,FPGAが11%ダウンと厳しい状況で,IntelのSwan CEOは,CEOになってから最も厳しい状況と述べています。

  データセンタグループの販売量は4%増えているのですが,平均販売価格は15%下がっています。全体にコロナ禍で景気が厳しいのに加えて,AMDとの競争で販売価格が下がっていることをうかがわせます。

  PCを中心とするクライアントコンピューティンググループの売り上げは$9.8Bで,フラットです。ラップトップは自宅での仕事のためのラップトップ需要の増加で16%増えたのですが,デスクトップの売り上げは16%減って,全体ではフラットという結果です。


    


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