最近の話題 2020年10月31日

1.AMDがXilinxの買収を確認

  2020年10月27日のEE Timesが,AMDが$35BでANDを買収するという方針であることを公式に認めたと報じています。

  買収の主たる目的はHPC分野の強化であるとのことです。AMDのCPUやGPUの需要は引き続き盛んで,適応的なSoCやFPGAの需要も大きい,従って,Xilinxを買収することは意味があるとのことです。

  これらのアダプティブなチップビジネスを通してXilinxは,5GやSmart NIC,自動車,インダストリアル,エアロスペースの会社と関係を持っており,これらの分野にAMDが進出する足掛かりになると指摘しています。

  しかし,私の感じとしては,AMDのXilinxの使い方のビジョンがあいまいな感じがします。しかし,Intelの敵失で儲かっている時期にAMDがFPGAなどの関連分野に投資するのは悪くないと思います。

2.MLPerfのv0.7が発表された

  2020年10月27日のEE Timesが,MLPerfの推論ベンチマークの新版の発表を報じています。v0.7推論ではDLRMモデルを使うRecommendation,3D-UNetモデルを使う医療画像認識,スピーチからテキストへの変換のRNN-T,自然言語処理のBERTが追加されました。これらはユーザからの要請で追加されたとのことです。

  そして,v0.7では用途別のスイートという考え方が導入されました。データセンタースイートは全てのハイエンドベンチマークを含みますが,エッジやモバイル向けのスイートでは,一部のベンチマークは省かれています。また,モバイルとノートブッククラスではイメージの認識にはMobileNetEdge,オブジェクト検出にはSSD-MobileNetv2,イメージの切り分けにはDeeplabv3,自然言語処理にはMobileBERTが使われています。

  また,v0.7では,以前の版に比べて要求される精度が高くなっています。これはユーザからの要求を反映したとのことです。

  v0.7への結果の登録の85%はNVIDIAで他社の登録は僅かです。そして,NVIDIAはエッジについては結果を登録していません。その結果,データセンター向けではNVIDIAの圧勝という結果になっています。正確には,データセンターのImageNetの推論はGoogleのTPU v3の方が性能が高いとも言えますが,Googleは他社に公開しないResearchカテゴリの登録なので,商用ではNVIDIAが一位という主張は間違っていません。先週,v0.7ではGoogleの登録は無いと書きましたが,Researchのカテゴリに書かれていました。

  一方,推論についてはGoogleは結果を提出していませんし,Graphcore,Cerebras,Groqなどの有力スタートアップも結果を提出していません。

3.電源を小型化するPower Integrations社のMinE-CAP

  2020年10月28日のEE Timesが,電源を小型化するMinE-CAPというPower Integrations社のデバイスを紹介しています。

  ノートPCなどの電源は100Vから260VのAC入力で動作します。ACを整流したところでは100Vと比べて260Vではキャパシタに2.6倍の電圧が掛り,(260/100)2のエネルギーがキャパシタに溜まります。従って,キャパシタの容量は100Vでも必要なエネルギーが貯められる設計で,260Vでも耐圧的に耐えられるキャパシタが必要になります。その結果,キャパシタのサイズが大きくなってしまいます。

  Power Integrations社のアイデアは,260Vで必要になる容量のキャパシタと,100Vではエネルギー的に不足になる分を貯められる低耐電圧のキャパシタを使い,低耐電圧のキャパシタは高入力電圧の場合はGaNトランジスタを使うPowiGaNスイッチをオフにして切り離し,低入力電圧の場合は,GaNトランジスタを使って並列にキャパシタを繋ぐという方法で,必要な容量を確保するというものです。

  このやり方で,電源アダプタのサイズを40%小さくできるとのことです。

4.Honeywellが量子コンピュータを発表

  2020年10月29日のHPC Wireが,Honeywellの量子コンピュータの発表を報じています。H1と呼ぶ,このシステムは10qubitとqubit数は少ないのですが,IBMの提唱するQantum Volumeは128で,IBMのシステムのQVが64であるのに比べると,実用的な程度は高いとのことです。なお,超伝導ループで量子ビットを作るというアプローチが多いのですが,Honeywellのシステムはイオントラップ型の量子ビットを使っています。

  超伝導ループの場合は製造ばらつきなどがノイズ元となり保持時間が短くなりますが,イオンを使えば各qubitの造りにバラツキは無く,安定性の点で有利です。

  Quantum Volumeは,単にqubit数ではなく,ゲートのエラー率,コヒーレンスを維持する時間,qubit間の接続性,運用ソフトウェアの効率などを含めて算出した量子コンピュータの実用性のメトリックだとのことです。

  HonewellのH1は10qubitを直線に並べた構造ですが,これを40qubitまで増やす計画です。そして,2qubitゲートの忠実性は99.5%以上と高く,qubit間はAll-to-Allの接続が出来,Mid-circuitの測定もできるとのことです。

  そして,2年ごとのペースでH2,H3,H4を開発し,2030年にはH5を開発する計画です。H2はQubitの配置がRacetrackになり,H3からはグリッドにする計画です。そしてH4では接続にオプティックスを採用し,H5では大規模化を図る計画です。鍵になるテクノロジは既に実用化済であるとのことです。


  


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