最近の話題 2020年11月14日
1.Appleが自社のM1シリコンを使うMacを発表
2020年11月10 日のThe Registerが,Appleが一部のMacでIntel CPUを搭載する品種の販売を止めると報じています。今回の発表は3機種ですが,2年を掛けて,全てのMacを自社のCPUに切り替えるとの事です。
CPUのアーキテクチャをarmベースの自社製CPUに切り替えることにより,CPUのコストは半分程度に下がり,現在は他社のPCと比べて高いMacのコストを下げることができます。また,IntelアーキテクチャのCPUがarmアーキテクチャになることにより,iPhoneやiPadとソフトが共通化できるというメリットがあります。
Intelの半導体プロセスがダントツに強かったころには,Intelのプロセスを使うことにより,製品を差別化出来ていたという面もあったのですが,TSMCに後れをとるようになっては,高いお金を払ってIntelのCPUを買う必要は無いと考えたのでしょう。
なお,M1はTSMCの5nmプロセスで製造されるようです。結果として,CPUは最大3.5倍高性能で,GPUは6倍,マシンラーニングは最大15倍高速とのことです。そしてバッテリ寿命は2倍とのことです。そして,M1ではユニファイドメモリになっているそうです。
そして,FP32では2.6TFlopsで,16コアのニューラルエンジンは15倍のマシンラーニング性能とのことです。そしてキャッシュは192KBの命令キャッシュ,128KBのデータキャッシュを持っています。
自社半導体を使うMacの第一弾は,13インチのMacBook Air($999+),13インチのMacBook Pro($1299+)とMacBook Mini($699+)の3機種で,従来の機種とは仕様が違っていますが,数百ドル安くなっています。
また,CPUをarmアーキに替えると,そのままでは従来のアプリは動かなくなるのですが,普通のx86アプリは,両用のUniversal BinaryかRossetta 2変換テクノロジで動作させるということです。
2.Intelはサーバゲームから脱落か?
2020年11月12日のSemiAccurateが,Intelの主要なサーバプロジェクトが大きく遅延しており,SemiAccurateの意見では,Intelはサーバ市場での競争力を失ったと書いています。
もちろん,Intelはこれを認めたわけではありませんが,独自の情報網を持ち,Intelなどの内部情報をいち早く報じることには定評のあるSemiAccurateの報道は無視できません。そのような可能性があることを頭の片隅においてIntel関係の報道を見てゆく必要があると思われます。
3.Micronが176層の3D NANDを発表
2020年11月10日のHPCWireが,Micronの176層の3D NAND Flashメモリの発表を報じています。Micronは既にこのメモリの量産出荷を開始しているとのことです。
この3D NANDはシリコンのパイプの上にSiNの記憶層を造り,その上にReplacement Gateでメタルゲートを付けています。メタルプリプレースメントゲートで性能を最大15%改善しているとのことです。
また,現在の64層の製品と比較するとダイサイズは30%小さくなっているとのことです。
4.COVID-19と富岳の戦い
2020年11月9日のHPCWireがCOVID-19と富岳の戦いを報じています。日本では,くしゃみなどで発生した飛沫の飛び方のシミュレーション映像がTVで流されることも多く,富岳の戦いはよく知られています。
特に最近の成果は,湿度が30%の場合は,湿度が60%の場合に比べて,2倍以上の飛沫が向かいに座っている人に届くというシミュレーション結果が得られたことです。湿度が低いと飛沫が蒸発してエアロゾルになって浮遊しやすくなるためだそうです。そのためか,寒くなってきて,国内の感染率は急増し始めています。
加湿器で室内の湿度を高めることと,浮遊しているエアロゾルを室内から追い出すための換気が重要とのことです。
富岳では,飛沫の発生から,大きな飛沫は近くに落ち,小さな飛沫は長く浮遊する状態をシミュレートし,飛沫の蒸発の過程も含めてシミュレートしています。
富岳のフルシステムは16万ノードを持っていますが,通常,一つの飛沫飛散のシミュレーションに必要なノード数は100程度だそうです。ただし,体育館のように大きな空間のシミュレーションを行う場合には500以上のノードを必要とする場合もあるとのことです。
それでも,全体は16万ノードですから,一つのシミュレーションに使うのはごく一部ですが,シミュレーションは飛沫の出方,飛沫を止めるマスクの特性,空気の流れなど,異なる条件でシミュレーションを行う必要があるので,全体では非常にたくさんの計算資源を必要とします。
理研は,これまでは室内での会話の状態などを中心にシミュレーションを行ってきたのですが,あちこちから,色々な状況でのシミュレーションをして欲しいという要求が出ており,タクシーの中,バスの中,飛行機の中,レストラン,病院,など色々な状態でのシミュレーションに手を広げようとしているとのことです。
5.IntelのOneAIとサーバ用GPUの発表
2020年11月11日のSemiAccurateが,IntelのOneAPIとXG310サーバ用GPUの発表を報じています。
Intelは2019年に全てのプロセサ(XPU)を同一のAPIでプログラミングできるOneAPIを発表し,開発を進めてきましたが,このほどGold Versionと称するOneAPI 1.0を発表しました。OneAPIはベースツールキットとドメイン特化のツールキットとOneAPIで動くAI Analytics ToolkitとOpenVENO Toolkitなどから構成されます。
そして,このOneAPIが使えるXG310 Quad-GPUカードを発表しました。XG310は4個のXeアーキテクチャのディスクリートのIris Xe Max GPUを搭載するPCIeボードで。それぞれのGPUには8GBのLPDDR4-2133メモリが付いています。GPUの消費電力は23Wで,クロックは900MHz(Base)と1.1GHz(Max)となっています。
このXG310ボードを2枚搭載したサーバでTensentの最も人気のあるゲームを720P-30で120ユーザでプレイできるとのことです。これはユーザあたりのGPUコストの大幅な低減になります。多分,消費電力の点でも大きな低減になると思われます。