最近の話題 2020年12月5日


1.IntelがLoihiと通常のAIアクセラレータのベンチマーク結果を公表

  2020年12月3日のEE TimesがIntelのLabs DayでのLoihiと通常のAIアクセラレータのベンチマークの結果の発表を報じています。LoihiはIntelの研究所が開発しているスパイク型のニューロンを使うニューロモルフィックチップです。

  Intelの発表したのは,他のAIアクセラレータの消費エネルギーと実行時間を,Loihiを1.0に正規化した値をプロットしたグラフです。他のアクセラレータとしては,CPU,GPU,IntelのMovidiusとIBMのTrueNorthの測定が含まれています。そして,キーワード検出,イメージ認識,イメージ分割,CFIR-10の画像認識,ジェスチャー認識など,13種のタスクを実行させています。しかし,あるタスクを動作原理が異なる別のシステムで動作させるのは,大変に手間が掛かるので,あまり多くの測定がなされていないとのことです。

  結果のグラフを見て驚くのはエネルギー比では0.3倍~8万倍,計算時間では0.004倍~600倍まで測定値がばらついていて,計算時間が長いものほど消費エネルギーが大きい傾向が見える程度で,それ以外はあまりはっきりとした傾向がみられないことです。

  また,今回の測定ではプロットされたシンボルの点のサイズはLoihiのシステムのネットワークサイズを示し,大きいものでは500個以上のLoihiチップを使っているとのことです。一方,比較対象のシステムは1個のCPU/GPUとメモリという構成を使っています。

  この結果から,Loihiベースのシステムは,ディープラーニングでは一般的なフィードフォワードのネットワークでは,優位性はほとんど無いとのことです。一方,Loihiの優位性が目立つのはRNNの場合で,1/1000倍~1/10000倍のエネルギーで100倍速く答えを出しています。

  同じスパイク型のIBMのTrueNorthとの比較は1点しかなく何を読み取るべきか分かりませんが,TrueNorthはLoihiの6倍のエネルギーを使い,8倍程度の計算時間となっています。


2.Amazon AWSが2021年にGaudiを使うEC2のインスタンスの提供開始

  2020年12月2日のHPC WireがAmazon AWSがHabanaのGaudiチップを使うAI向けのインスタンスを2021年前半に提供開始すると報じています。Habana Labsは$2BでIntelに買収されて,現在はIntelの一部になっています。

  AWSによると,Gaudiを使うことにより,今日の最良のGPUを使う場合よりも40%向上した性能/価格を提供できるとのことです。

  一つのEC2 MLインスタンスは最大8個のGaudiチップが含まれ,このフルのインスタンスを使えばResNet-50のイメージ処理の場合,12,000画像/秒で処理ができるとのことです。

  現在のGaudiはTSMCの16nmプロセスで作られていますが,Habanaは7nmプロセスを使ってGaudi2の開発を予定しているとのことです。

  さらに,AWSは完全に新設計のTrainiumというチップ群の開発を計画しているとのことです。Trainiumはその名前のように,AWS最適化された学習チップで,Habanaのチップよりコスト効率が良くなるとのことです。


3.BoomはAWSクラウドで超音速民間旅客機を設計する

  2020年12月2日のHPC Wireが,Boom Supersonic社が旅客用の超音速ジェット機の開発にあたり,AWSを設計に使うと報じています。同社は2025年にはOvertureと名付けた超音速機が世界の500以上の航路で運航されると見込んでいます。

  Overtureは現在の民間航空機より2倍速く,シアトルから太平洋を越えて東京まで4時間半で飛ぶとのことです。

  この設計を効率化するため,BoomはAWSのクラウドを使うとのことです。自社にサーバを設置すると,持っている計算機リソースの範囲でしか処理ができませんし,仕事が無ければ計算機が遊んでしまいます。しかし,AWSであれば,大量のサーバを使って並列に多数のシミュレーションを流して開発を加速すれば,6倍,開発効率が上がるとのことです。

  BoomはこれまでにAWSを53M計算時間使っており,設計全体では100M計算時間使用する予定です。

  Booはプロトタイプ機のXB-1の設計データ525TBをAWSのストレージに置いているとのことです。このようにAWSのクラウドを使う設計で,これまでより,速い速度で開発ができるとのことです。




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