最近の話題 2020年12月12日


1.Appleが自社開発のarmアーキテクチャのM1プロセサを使うMacを発表

  2020年12月9日ころにAppleがM1チップを使うMacを発表したとToms  Hardwareが書いています。遅ればせですが,Appleの発表で舞い上がったほこりが落ちついて,実像が見えてきました。

  M1の搭載製品はMacBook Air,MacBook ProとMacBook Miniの3つです。Miniのお値段は$699~となっています。

  まず,チップですが,TSMCの5nmプロセスを使い16Mトランジスタと発表されています。そして,big-LITTLEの8コアのAppleアーキテクチャのCPU,8コアのGPU,16コアのニューラルエンジンなどを搭載しています。

  メモリは8GB または16GBのLPDDR4X-4266で,CPU,GP,NPUなど全てのユニットがこのLPDDR DRAMを使っています。そして,このLPDDR4X DRAMとM1チップはインタポーザに搭載されてCPUチップのリングの中に入っています。配線が短いので,メモリを高速に動かし,かつ,消費電力を減らしています。一方,メモリの増設はできません。まあ,PCのメモリを増設する人は少ないので,良い割り切りと思います。

  M1プロセサを使ったApple MacBook Miniなどの3製品ですが,ARMプロセサですからこれまでのMacのIntel命令のプログラムはそのままでは動作せず,Rosetta2などで変換して実行する必要があります。

  M1の性能ですが,Geekbench 5でシングルプロセサで1619,8CPUコア使うと6292となっています。この性能は,2020年のi7 MacBookを上回るものです。また,DellのXPS 9310は1496/3053,i7 10850Hを使うThinkPad X1 Carbon Extreme Gen 3は1,221/6,116となっており,M1の高性能が目立ちます。ただし,TigerlakeやAMDの新しいRyzen 5000との性能比較はまだで,今後のお楽しみです。

  グラフィックス性能は,1440p Manhattan 3.1.1はM1は130.9FPSに対してNVIDIAの1050Tiは127.4FPS,Radeon RX 560は101.4FPS,より負荷の重いAztec Ruins High Tier testではM1は77.4FPS,1050Tiは 61.4FPS,RX560は82.5FPSとGPUの性能でもM1が勝っているという状況です。

  なお,現在の性能はx86バイナリをRosetta 2で変換して動かしている状態ですが,アプリ各社はM1のネイティブバイナリの作成にかかっており,ネイティブが出てくると数パーセントは性能が上がる可能性があるとのことです。

.GrAI Matter Labが$18Mを調達

  2020年12月7日のEE TimesがGrAI Matter LabのSparsityを利用するインファレンスチップについて報じています。GrAI Matter LabはフランスのVision Institute in Paris研究成果をもとに設立されたスタートアップです。今回のA+ラウンドで$15Mを集め,これまでに集めた開発資金は$29Mになります。

  2次元のメッシュネットワークで接続されたニューロンコアは,ニューロンプールに加えてニューロンメモリ,シナプスメモリとEvent Control & Generationという部分を持っており,自立してある程度,プロセサ的に動作できるようです。

  そして,画像処理で言えば,前のフレームから入力が変化した部分だけをCNNで処理する,あるいは時系列でも同じことを繰り返しているところは毎回処理を繰り返さないとのことで,Sparseの実行になるところを省いて動作電力を節約し,1フレームの処理時間を40msから2msに短縮できたとのことです。

  28nmプロセスで作ったProof of ConceptのGrAI Oneは196セルしかなく,ResNet-50などは収容できなかったのですが,次の製品版はResNet-50などを収容できる規模になるとのことです。製品版の提供開始は2021年の予定です。

3.Esperantoが約1,100コアのRISC-V MLチップを発表

  2020年12月8日のHPCWireがEsperanto TechnologyのRISC-Vのチップの発表を報じています。Esperantoは2014年に設立されたので,製品の発表まで6年掛かっています。Esperantoの創立者はDave Ditzel氏で,Ditzel氏はBell研,Sunを渡り歩き,その後,Tansmetaというトランスコードでx86バイナリを実行する低電力のプロセサを作る会社を興しました。その後もいろいろな会社を作っている人です。Esperantoは,なかなか,製品が出てこないので,どうなったのかと思っていたのですが,今回のRISC-V Summitでやっと発表がありました。しかし,よく読むとシリコンは,まだ,出来ていないようです。でも,本物らしいダイプロットの写真が載っていますから,設計は終わりに近づいているようです。

  ET-SoC-1と名付けられたこのチップはET-MaxionというOut-of-Orderのスーパスカラコアを4個と,ET-Minionという電力効率の高い小さなコアを1,088個搭載し,さらにサービスプロセサというプロセサを1個搭載しています。ET-Minionはインオーダ実行のマルチスレッドプロセサで,ML向けの大きなコプロセサを搭載しているとのことです。

  ダイプロットでは,DDR4Xのメモリコントローラのブロックが8個搭載され,メモリ容量は最大32GBとのことです。1枚のPCIeカードに,このプロセサを6台載せることができると書かれています。

  製造プロセスはTSMCの7nmプロセスでトランジスタ数は23.8Bと書かれています。チップの面積や消費電力は発表されていません。

  エミュレーションの結果ですが,recommendationの場合で,競合製品と比べて50倍の性能,画像分類では30倍の性能と言っています。そして,推論/Wのエネルギー効率は100倍が期待できるとのことです。


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