最近の話題 2021年3月6日

1.MIPSは残った

 2021年3月1日のEE Timesが,MIPSは残ったと報じています。MIPSはMIPS RISCの発明者のJohn Hennessy教授らが札率してから色々と親会社が変わるという歴史を経てきましたが,最近ではディープラーニング用チップを開発するWave Computingに買収されて,Waveの一部になっていました。しかし,昨年4月にWaveが倒産し,Chapter 11となり,再建計画が検討されてきました。

 それが2月10日に破産裁判所の承認が得られたとのことです。それによると,Wave Computingとその子会社はMIPSという名前になるとのことです。新しいMIPSの主要な出資者はTallwood Venture Capitalです。そして,Sanjai Kohli氏がCEOとなるとのことです。


2.量子光アンテナで事実上無制限のバンド幅が可能か

 2021年3月4日のEE Timesが,UC BerkeleyのBoubacar Kante准教授のグループがコヒーレントな光のOrbital Angular Momentum(OAM)という性質を利用することにより,事実上無制限の通信バンド幅を得ることができると発表したと報じています。

 OAMは竜巻の中の渦に似ていて,光の場合,無限の自由度があり,電波の偏波面のように,その自由度が異なれば,別の情報を送れるのだそうです。この光のトポロジカルアンテナはInGaAsPの表面に格子パターンをエッチングし,それをYFeガーネットの表面にボンディングしたものだそうです。グリッドは3つの同心円をなし,一番外側の円は直径50ミクロン程度の量子井戸となるとのことですが,私には全く理解できないので,説明はできません。

  Nature Physicsに論文が載ったとのことですから,興味のある方は,そちらを見てください。


3.Quanergy社のOPA Lidar

 2021年3月2日のEE Timesが,Quanergy社のLidarについて報じています。Lidarはレーザ光でスキャンして,反射してくる光の遅延で距離を知り,反射光の強弱などで対象物の情報を得ます。真っ暗な夜と直射日光が当たる昼間では,レーザ光の反射以外のノイズは全く異なります。このような状況で,100mとか200m先の障害物を検知する能力が必要となります。

 初期のLidarは回転ミラーなどでレーザービームを振ってスキャンを行っていたのですが,メカニカルなミラー振りではLidarが大きく,重くなる,寿命が短いなどという問題があります。

 これに対して,Quanergy社のLidarは戦闘機のレーダーなどで使われているフェーズドアレイ方式でレーザビームを振ります。小さな光アンテナを並べ,個々のアンテナの位相をコントロールして,ビームの方向を振ります。

 原理はレーダーの場合と同じですが,波長のずっと短いレーザ光での位相コントロールは大変そうですが,開発できれば小さく,安くできます。Quanergyは100mのレンジのLidarは既に開発済みで,200mレンジのものを今年末までに完成させようという目標です。


4.Pete UngaroがHPE/Crayを去る

 2021年3月2日のHPC Wireが,Pete Ungaro氏がHPEのCray部門を辞めると報じています。Ungaro氏は2005年にCrayのCEOになり,2019年にCrayがHPEに買収されるまで,CEOの地位にありました。また,HPEに買収されてからもCray部門を率い,Aurora,Frontier,El Capitanという3つのエクサスパコンの受注に成功しています。

 そのUngaroが今年4月に辞めると発表しました。次は何をするのかは発表されていません。ただし,辞めてから6か月間はコンサルタントとして残るそうです。

 なお,正式な発表は無いのですが,CrayのCTOであったSteve Scott氏も辞任してMicrosoftのAsure部門に移ったと昨年の6月15日に報道されており,昔のCrayの顔であった二人が相次いでいなくなることになります。


  


 


 


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