最近の話題 2021年3月27日

1.Intelの新CEOが戦略を発表

  3月15日にIntelのCEOに就任したPat Gelsinger氏が,2021年3月24日にIntelの戦略方針を発表しました。3月24日のThe Registerが,この発表を報じています。また,この発表はYotubeでも公開されています。

  Gelsinger CEOの戦略は,IDM 2.0と呼ぶもので,第一の柱は全てのものをIntelで作るのではなく,Intelでの製造がメインではあるのですが,TSMC,Samsungなど社外のファブも使って製造を行うという物です。

  また,Intelは,(今までもある程度やってはいたのですが)ファブとして他社のチップの製造を行うとのことです。Gelsinger氏は,AppleとかQualcommの仕事も取りに行くといっており,TSMCとSamsungを加えてIntelを含めた3社がAppleの製造請負を争うという事態になるかも知れません。

  そして,ファウンドリ事業の開始に備えて,$20Bを投じてアリゾナ州に2つの工場を建設することを発表しました。これらの工場が何nm対応かは明らかにしませんでしたが,EUVを入れると言明しました。Gelsinger氏は,Intelが微細化で遅れをとったのは,EUVの採用に慎重で時期が遅れたのが原因と言い,今では問題は解決したと言っています。

  ただし,TSMCやSamsungは5nmの製造に差し掛かっており,Intelは1周遅れで,これが追い付かないと最先端の受注をAppleやQualcommから取ることは難しいと思います。

  そして,テクノロジとしては,チップレット(Intelはタイルと呼んでいる)でモジュラーに作り,複数のタイルを組み合わせて最終チップをつくるという方法になっており,Intelは次世代スパコンに使われるPonte Vecchio GPUではタイルごとに発注先は個別で,それらのタイルの集合でGPUを作ると発表しています。

  Intelのプロセス技術は,最先端をキャッチアップする必要がありますが,タイルでLSIを作る技術はトップレベルで,製品全体としての競争力は十分だと思います。

  また,Intelは研究開発でIBMと協力すると発表しました。詳細は分かりませんが,これもプラスです。

  Gelsinger CEOは,工場の建設についてはIntelの戦略であり,政府の後押しが無くてもやると述べましたが,サプライチェーンの国内化の点から,政府の後押しも十分期待できる情勢ですから,良いタイミングです。

  ということで,Intel is Back! と締めくくりました。

2. GoogleがIntelのサーバチップ開発のVPを引き抜き

  2021年3月23日のThe Registerが,GoogleがIntelのサーバチップの開発チームを率いていたVPのUri Frank氏を引き抜き,独自のサーバ向けSoCを開発すると報じています。

  Googleのシステムインフラ担当VPのAmin Vahdat氏が,2016年から2020年にIntelでVPとディレクタの肩書で次世代コアプロセサを開発していたUri Frank氏を雇ったとWebに書き込んだことで判明したとのことです。

  Googleは,これまでマザーボードに各種の部品を搭載してサーバなどのシステムを作っていたのですが,ムーアの法則が減速している状況では,十分に性能が上がらないので,一つのチップの中に複数のチップを集積する,あるいは複数のチップを一つのパッケージに入れるというアプローチで密度を上げることが必要と考えています。このような半導体チップを作るために,Frank氏を雇ったようです。

  これで,自社で必要な機能だけを詰め込んだインフラを作ろうという狙いと思われます。

  しかし,x86,arm,RISC-Vなどのどの命令アーキを使うか,どのようなSoCを作ろうとしているのかは分かりません。2. GoogleがIntelのサーバチップ開発のVPを引き抜き

3. SamsungがDDR5 DRAMと512GBのDIMMを発表

  2021年3月24日にSamsungが,High-K Metal Gate(HKMG)トランジスタを使うDDR5 DRAMを発表しました。CPUではHKMGを使うのが普通ですが,DRAMのトランジスタはそれほどの性能は必要ないのでHKMGは使っていなかったのですが,DDR5の性能に追いつくためにトランジスタ性能を上げる必要がでてきたようです。

  そして,16Gbitのダイを8枚とIOダイをスタックしてTSVで繋いで16GBのメモリチップを作り,これをプラスチックパッケージにいれたという感じです。Samsungの発表のDIMMの写真をみると,16GBのパッケージが20個搭載されています。1個はECCのための追加でしょうが,もう一個はコストダウンのために固定不良ビットの救済のためのスペアでしょうかね。

  このDDR5 DIMMのデータ伝送速度は7200MHzとなっており,現在のDDR4の3200MHzの2倍を上回っています。

  7200MHz伝送の場合でも,消費電力は消費電力はDDR4より13%少ないとのことです。

  8枚のDRAMダイを積層するHBM2メモリは$120という値段が出回っているので,このDIMMの16GBチップが同じ値段とすると,512GBのDIMMは$2000以上になる計算です。不良救済スペアがあっても半値にはならないでしょうね。3. SamsungがDDR5 DRAMと512GBのDIMMを発表


4. CSCSがPiz Daintの後継のAlpsを設置

  2021年3月25日HPCwireが,スイスの国立のスパコンセンタであるCSCSがPiz Daintに替えて,Alpsといいうスパコンを設置すると報じています。Piz Daintは,現在はTop500の12位で,欧州3位ですが,長らく欧州では1位のマシンでした。

  後継のAlpsはCray/HPEのShastaスパコンで,3期にわたるエンハンスが計画されており,最終形態になるのは2023年春の予定です。Alpsの性能ターゲットは公表されていませんが,現在のPiz DaintがHPLで21.23PFlopsですから,その10倍とすると200TFlops程度の規模にはなると思われます。


  

  


 

  

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