最近の話題 2021年5月8日


1.IBMが2nmプロセスのテストチップを発表

  2021年5月6日のEE Timesが,2nm世代のプロセスで製造されたテストチップを発表したと報じています。この2nmプロセスを使うと,現在製造されている最先端の7nmプロセスと比較すると,同じ消費電力なら45%高速になり,同じ速度なら75%消費電力を減らせるとのことです。

  IBMが見せたテストチップは,50Bトランジスタが集積されたものだそうです。トランジスタの構造はナノシートをゲートで包んだGate All Aroundで,ナノシートは厚さは5nmで,幅は40nmで,電流を増すため3枚のナノシートトランジスタをスタックした形になっています。トランジスタのピッチは44nmでゲート長は12nmだそうです。なお,2nmトランジスタと呼んでいますが,2nmという寸法は,どこにも出てきません。

  このチップを製造したのは,IBMのAlbanyの研究所で,量産できるようになるのは2024年末頃と考えています。ウエファの写真が載っていますが,300mmウエファで,小規模な実験室での製造では無く,300mmウエファが扱えるファブで,PowerやZを作っているファブでの製造と思われます。


2.TeslaのAutopilotはMusk CEOが言う程,賢くない

  2021年5月7日のThe Registerが,TeslaのAutopilotはElom Musk CEOが言う程,賢くないという記事を掲載しています。

  カリフォルニア州のDepartment of Motor Vehicle(DMV)は運転免許試験から,免許の発行,車両の安全基準の制定など自動車の安全関係に広い権限を持つお役所です。Musk CEOが年末にはLevel 5の自動運転を達成すると述べたことについて,DMVがTeslaのAutopilotのソフトウェアのDirectorのCJ Moore氏に聞き取りを行ったというドキュメントが作られ,公開請求がなされたことにより,真相が明らかになってきました。

  それも,公開されたドキュメントでは,かなりの部分が削除されていたのですが,白地に白文字が残っているという状態で公開されてしまったので,簡単に消された部分の文章を読めたとのことです。しかし,これが意図的に文字色を白にして出したのか,あるいは目に見えなければ,情報が抹消されたと思い不適切な消し方をしてしまったのかは分からないとのことです。

  2021年の1月1日には,Musk氏はTeslaのFull Self-Drivingは平均的な人間の運転手より安全性が高いことには自信があると述べましたが,エンジニアの認識は,Musk氏の言っていることとは異なるとMoore氏は述べた書かれていたとのことです。そして,現在のTesla車はLevel 2で,自動運転をするには1~2Mマイルに1回のドライバの介入にする必要がある。Musk氏は改良のペースを外挿してLevel 5の達成時期を楽観的に述べたのだろうということです。

  Teslaは消費者がテクノロジの限界を誤解していることに気が付いており,そのような誤解は悲劇的な結果を生じさせるので,Teslaは顧客に明確なメッセージを伝える必要があるとDMVのドキュメントには書かれているとのことです。

  現実に2016年5月7日にはTeslaが交差点を横切っているトレーラトラックの横腹に突っ込むという死亡事故,2018年3月23日にはカリフォルニア州のフリーウェイの分岐点でModel Xが分離帯に突っ込んで死亡事故が発生しています。どちらも減速しないで,フルスピードで突っ込んでおり,障害物の存在に全く気が付いていない感じです。


3.LRZのSuperMUC-NGがPhase 2でアップグレード

  2021年5月5日のHPC Wireが,ドイツのLRZのSuperMUC-NGのPhase-2のアップグレードについて報じています。

  SuperMUC-NGは2個のSkylake CPUに96GBのメモリを付けたノードを6336ノードと,メモリを672GBにしたファットノードを144ノード持っていますが,Phase-2ではCPUをSaphire Rapidsにして,Ponte Vecchio GPUを接続するノードを240ノード追加するとのことです。このノードはLenovo製でSD650-I v3という名称で商品化されるものだそうです。この組み合わせはArgonne国立研究所のAuroraと同じ組み合わせですが,このLenovoのノードがAuroraのノードと同じであるかは分かりません。

  SuperMUC-NG納入は2022年の春の予定ですが,これに間に合うかどうかが一つのポイントです。

4.SSDはHDDより大幅に故障が少ない

  2021年5月5日のBlocks &Fileが,Backblaze社のAndy Klein氏がBlogに「SSDはHDDよりも故障が少ない」と書いたと報じています。

  Backblazeはクラウドバックアップやストレージの提供を行っている会社で,SSDはブートドライブとして使われたり,システムアクセスのログを書き込んだり,診断結果を書き込んだりする用途に使われているとのことです。

  Flashは読み出しだけだと寿命が長いのですが,そのような使い方ではなく,書き込みも行われる使い方のようです。

  2021年のQ1の統計ですが,SSDは1,518台あり,平均使用期間は12.66カ月で,2回の故障が発生したとのことです。これは年間故障率(Average Failure Rate)にすると0.58%となります。一方,HDDの方は1,669台あり,平均使用期間は49.63カ月で44回の故障発生で,AFRにすると10.56%となります。

  この結果から見るとHDDはSSDに比べて約18倍,故障が多いことになります。しかし,SSDの方は1年ちょっとの使用であるのに対して,HDDの方は4年あまり使用した古いディスクであるので,HDDには不利な条件です。そこで,2013年4月20日から2021年3月31日までの故障を数えると,SSDの方は合計450,503ドライブ日の稼働で8回の故障で,AFRは0.65%。HDDの方は3,375805ドライブ日の稼働で559回の故障で,AFRは6.04%という結果になりました。

  一つの四半期の故障だけを数えると,HDDはSSDの約18倍の故障率ですが,より生涯故障に近い数え方をすると9.3倍となります。SSDもHDDも新しいドライブを揃えて,ヨーイどんで測れば,もう少し差は縮まりそうですが,それでもSSDの方が圧倒的に故障が少ないというKlein氏の結論は揺るがないと思われます。

5.Intelが$3.5BをNew MexicoのRio Ranch工場に投資

  2021年5月3日のHPC Wireが,Intelがニューメキシコ州のRio Ranch工場に投資し,FoverosやEMIBなどの3D実装の開発,製造拠点を作ると報じています。IntelのPonte Vecchio GPUはFoverosやEMIBを使い47個のタイル(AMDはチップレットと呼ぶ)を集積するとのことです。複数年で$3.5BのRio Ranchoキャンパスの面積は40%増加し,建設作業員1000人,ハイテクの工場作業員700人の仕事が生まれるとのことです。

  良く分からないのは3D Xpointメモリの製造です。3DXpointの製造はRio Ranchoの仕事と言われているのですが,今回発表された$3.5BにはRio Ranchoに3D Xpointメモリのファブを作る費用は含まれていないと見られます。

  Micronは3D Xpointからは撤退を発表しており,IntelはLehi工場は売却すると発表しており,このままでは3D Xpointメモリが作れなくなってしまいます。Intelは当然,どうするかを考えている筈ですが,その選択はまだ不明です。

6.Intelは数年でTSMCに追いつく

  前のHPC Wireの記事の中で,IntelのPat Gelsinger CEOは,プロセス開発のもたつきで,ライバルのTSMCやSamsungに2~3年遅れてしまったと現状を認め,しかし,数年後には,IntelはTSMCに追いつくと決意を表明しました。  


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