最近の話題 2021年6月26日

1.Intelが機構改革。Data Platform Groupを2分割

  2021年6月22日のHPC WireがIntelの機構改革について報じています。基本的にはPat Gelsinger氏がCEOになり,Gelsinger氏のチームを構成するエグゼキュティブを選任したということのようです。

  これまでData Platform Groupを率いていたNavin Shenoy EVPは7月6日にIntelを去り,EVPのSandra Rivera氏がDatacenterとAIを担当するEVPとなります。そして,Network Platforms Group, Internet of Things Group とConnectivity Groupの3つのグループをまとめたNetwork Platformsグループを作り,Nick McKeown氏が担当します。McKeown氏は現在はIntelのパートタイムのフェローですが,7月6日からは専業のSVPとなります。

  そして,Greg Lavender氏がIntelのCTO兼SVPに就任し,新設のSoftware and Advanced Technology Groupを担当します。Lavender氏はこれまでVMwareのCTOで,Gelsinger氏と一緒にIntelに移ってきたという形で信頼の厚い部下のようです。

  そして,IntelのGPU開発の立役者のRaja Koduri氏は,Accelerated Computing Systems and Graphics Groupを率いることになります。多少,カバー範囲は増えたようですが,GPU担当は変わりません。

2.Global Foundriesが$4Bを投資してシンガポールのFabの能力を増強

  2021年6月23日のEE TimesがGlobal FoundriesがシンガポールのFabに$4Bを投じて,能力増強を行うと報じています。最先端の微細なロジックではなく,Radio wave周波数のIC,アナログ電力IC,不揮発性メモリなどを製造するとのことです。現在,非常に不足しているのは自動車などのIC,LSIで最先端の微細LSIではないのと,Global Foundriesは最先端の微細LSIの製造技術を持っていないのですが,それでも作れるものを作るという狙いのファブです。

  シンガポールファブの建設はすでに始まっており,2023年には製造開始の予定です。


3.Akhan Semiがダイアモンド半導体を推進中

  2021年6月23日のEE TimesがAkhan SemiconductorというスタートアップがCVDダイヤモンドを半導体材料とするプロセスの開発を推進中という記事を載せています。先週,紹介したElement Six社はダイアモンド基板で量子ビットを作るという話ですが,こちらはダイアモンド基板を半導体として,FET素子を作るというアプローチです。

  Siは4価の元素で,ダイアモンドのC(炭素)も同じ4価の材料です。ダイアモンドはシリコンよりバンドギャップの広い半導体でSiCやGaNなどと同様に高耐圧の半導体を作ることができます。そして,ダイアモンドは非常に熱伝導率が高く,放熱に優れた材料です。

  Akhan社は,もともとの技術はArgonne国立研究所からダイアモンド半導体の技術の特許を導入し,それをArgonne国立研究所と共同で改良しているとのことです。そして,Akhanは,Si半導体の製造プロセスと互換性のある薄膜ダイアモンドの製造技術を開発し,さらにロジック素子とパワー素子を一緒に作るコ‐ドーピング技術を開発したとのことです。

  この記事だけでは,ダイアモンドでどのようなFETが作れ,どのようなLSIが作れるのか詳しいことは分かりませんが,面白い技術だと思います。

4.セキュリティーソフトのパイオニアのJohn McAfee氏がスペインの拘置所で死亡

  2021年6月23日のNewyork TimesがパソコンなどのセキュリティーソフトのパイオニアのJohn McAfee氏がスペインの拘置所で死亡しているのが発見され,原因は自殺とみられると報じています。

  1987年にアンチウィルスソフトのダウンロード販売を始め,1992年にMcAfee Associatesを設立して$80MのFounder’sstockを手に入れます。しかし,1994年にMacAfee Associatesを辞めます。これ以降,MaCafee氏はMcAfee Associates社とは関係が切れているとのことです。しかし,2010年にIntelがMcAfee Associatesを$7.7Bで買収し,McAfee氏は大金を手にした筈です。

  しかし,2008年の金融危機で,ほとんどの財産を失ったとのことです。その後はジェットコースターに乗ったような人生で,最近は,米国の税務当局から何年もの税金の未払いで訴追され,スペインの拘置所に収容されていました。

  そして,身柄の米国移送に反対し,スペインの当局に移送しないように訴えていたのですが,最近になってスペイン当局が米国送還を認め,送還が避けられなくなったことが影響したのかも知れません。これだけが理由で自殺を選んだかどうかは不明で,以前の住んでいたベリーズでは近所に住んでいた人がMaCfee氏の家で射殺体で発見されており,McAfee氏に疑いが掛かっているなど,叩けば,もっとほこりが出るのかも知れません。

5.CentOSの置き換えのRocky LinuxのGeneral Availabilityが発表された

  2021年6月21日のHPC WireがICentOSを置き換えるRocky LinuxのGAの発表を報じています。

  CentOSはRad HatのEnterprise Linuxと互換のフリーのLinuxで,HPCやデータセンターなどでは広く使われています。これはデータセンターではCPU台数が多く,Rad HatのEnterprise Linuxライセンス料が馬鹿にならないからです。

  CentOSはフリーですが,Red Hatがサポートしており,使い勝手が良かったのですが,Red HatがIBMに買収され,CentOSの開発方針が変わり,将来のCentOSではバグ修正や機能追加が独自に行われることになり,現在のCentOSとの連続性が保証されない可能性が出てきました。

  このため,CentOSを使い続けることはできず,替わりの解を探す必要が有ります。ここで,名乗りを上げたのがRocky Linuxです。CentOSを作った中心人物はRocky McGaugh氏とGregory M. Kurtzer氏ですが,McGaugh氏は若くして亡くなられ,Kurtzer氏がCentOSを引き継ぐ開発を立ち上げました。そして,そのOSをMcGaugh氏の貢献を記憶するために,Rocky Linuxと名前を付けたとのことです。Rocky Linuxは,互換性を維持する方針で作られているので,CentOSを使っているシステムにドロップインして使えるとのことです。

  Rocky LinuxはRocky Enterprise Software Foundation (RESF) という団体が管理することになっており,Red HatとかIBMとかの大きな会社の方針には影響されない体制になっているとのことです。

  しかし,大企業の助けがないとすると,今度は,財務的にやっていけるのかどうかが心配になります。

6.Teslaの巨大AI学習クラスタ

  2021年6月22日のHPC WireがTeslaの Andrej Karpathy氏がCCVPR2021での講演に於いて,自動運転の学習に巨大なGPUクラスタを使っていることを明らかにしたと報じています。このクラスタは,NVIDIAのDGX-A100を720台ならべたもので,A100 GPUを5760個使用しています。これはLIPACKで,Top500の5位位に入る規模というKarpathy氏の説明と一致しています。

  Teslaは自動運転車に取り付けたカメラからのビデオ信号を入力として,自動運転コンピュータのAIのトレーニングを行っているとのことです。

  TeslaのElon Musk CEOは,Dojoと呼ぶ,さらに強力なAI学習システムを開発していると述べています。DojoのAIエンジンはGPUではなく,自社開発のLSIとのことですが,どのようなものかの具体的な情報はありません。しかし,TeslaもAIスパコンでシミュレーションで自動運転システムを学習させて開発を行っているようです。

7.MicrosoftがWindows 11のオンライン発表会を開催

  2021年6月24日にMicrosoftはWhat’s next for Windowsと題した記者発表会を開催し,Windows 11を発表しました。各種メディアが報道していますが,ここではPC Watchのページをリンクしておきます。

  今回は発表だけで,正式な提供開始は,秋ごろになるとのことです。ユーザインタフェースが刷新されるとのことで,大きく変わるのはWebページとWindowsアプリの整合性が改善される点でしょうか?また,ストアが改善され,Microsoftにお金を払わなくてもストアが使えるやり方ができたりしています。しかし,androidアプリはアプリストアでサポートされるのですが,Appleのアプリは仲間に入っておらず,MicrosoftはAppleとは戦うということでしょうか?

  Windows 11を動かすハード要件をチェックするプログラムは,Microsoftから,ダウンロードできるようになっています。Core i3~7では8xxxはOKですが,7xxxとそれ以前のCPUは不適合となっています。







inserted by FC2 system