最近の話題 2021年8月14日

1.商用核融合炉の実用化レース

  2021年8月10日のEE Timesが,General Fusionという会社がカナダのCanadian Nuclear Laboratoriesと協力して,核融合炉の実用化を進めているとのことです。また,General Fusion社とCanadian Nuclear Laboratoriesは核融合炉の商用化に向けて燃料として使う三重水素の取り出し法の開発も行っているとのことです。

  General Fusionの核融合炉はMagnetized Target Fusionという方式で,磁界によってプラズマを閉じ込める方式で,溶融金属を回転させて作った空洞の中にプラズマを閉じ込めて,温度を1億度以上に上げて核融合を起こすのだそうです。そして,加熱された溶融金属から熱を取り出して発電を行うということになっています。

  再生可能エネルギーの場合は,発電密度が低く,送電線が多く必要になったり,太陽光のように発電力が変化するため,これらの問題に対応するために追加の費用が掛かったりするのですが,核融合炉は小型で一定の発電力が得られます。

  また,従来の原子炉は核分裂のエネルギーを使っているので,強い中性子が発生しているので,燃料棒や炉の内部が強い放射能を帯びてしまうのですが,核融合の場合はエネルギーの大きな中性子が発生しないので,原子炉に比べてクリーンというのもメリットです。

  さらに,現在,実用化を狙っている核融合炉は,核融合を始める点火には特別の条件が必要で,パルス的に点火して,消えるという動作で,原子炉のようにメルトダウンは起こらないというのも望ましい性質です。

2.QualcommがVeoneerに$4.6Bで買収提案

  2021年8月5日のFierelectronicsが,Qualcommがスエーデンの自動車部品メーカーのVeoneerに対して$4.6Bでの買収提案を行ったと報じています。自動運転システムではIntelのMobileye部門や,NVIDIAが先行していますが,QualcommもSnapdragon Ride Platformを立ち上げて追いつこうとしているところで,Veoneerの買収が成功すれば,追い風になります。

  Veoneerは同業の大手自動車部品メーカーのMagnaからの合併提案を受け取っていますが,Qualcommの提案は1株$38と,Magnaの提案より一株当たりの価格が18%18%高いとのことです。

  この発表で,Veoneerの株は23%上がったとのことです。しかし,Qualcommの株は,発表直後には一旦,値下がりし,その後,値上がりに転じたとのことです。

3.AMD EPYCのSecure Virtual Encrypted Virtualizationが破られた

  2021年8月13日のThe Registerが,ベルリン工科大学の研究者がEPYCのセキュリティープロセサから秘密の暗号カギを読み出し,任意のコードを実行させることに成功したと報じています。

  ただし,このためには,セキュリティープロセサの入力電圧を操作し,ROMのブートローダーを誤動作させる必要があるとのことで,リモートアクセスではだめで,サーバのハードウェアが盗まれたというようなケースで暗号かぎを盗むことができるというバグです。

  本来,セキュリティープロセサとしては暗号化された鍵が読み出されてしまうのはまずいのですが,リモートでは盗めないので,危険は少ないと思います。

4.NSAの$10Bクラウドが秘密裏にAWS決まっていた

  2021年8月11日のHPC Wireが,アメリカ国家安全保障局の$10Bのクラウドの契約が秘密裏に行われ,AMSの受注に決まっていた。これについてMicrosoftはGovernment Accountability Office (GAO)に反論を提出したと報じています。

  米国は,Hybrid Compute Initiativeにより,安全保障局内部に情報を保持するか,コマーシャルクラウドに情報を保持するかをNSAが決められるようにするものだそうです。

  何しろ1兆円を超える契約ですから,マイクロソフトがNSAは正当な評価を行わないでAWSに決めたといちゃもんを付けるのは当然です。Wild and Stormyと呼ばれるこのシステムの契約プロセスは,確かにWildでStormyです。

  GAOは10月29日に裁定を出す予定だそうです。

5.NVIDIAの創立者の一人でCEOのJensen Huang氏がRobert Noice賞に決定

  2021年8月12日のFierce Electronicsが,今年のSIAのRobert Noyce賞はNVIDIAのJensen Huangに授与されると報じています。Robert Noyce賞はIntelの創立者のRobert Noyce氏にちなんで創立された章です。

  NVIDIAはGPUという新しいプロセサの分野で先頭を走り,GPUをマシンラーニング処理用のプロセサという新しい使い方を確立しました。結果として,半導体メーカーとしてはNVIDIAは時価総額ではIntelを抜いて世界第3位の企業になりました。

  この目覚ましい発展に対するJensen Huang氏の功績は大であり,この度のRobert Noyce賞の受賞は当然でしょう。



  


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