最近の話題 2010年5月22日

1.IBMがiDataPlexにNVIDIA GPUを搭載

  2010年5月18日にIBMは,高性能用クラスタ用と大量のストレージを必要とする用途向けのx86サーバを発表しました。

   SuperMicroやApproなどはGPUを搭載するサーバを発表していますが,いわゆるTier 1と言われる大手がGPUをサポートするのは初めてです。

  しかしながら,IBMのプレスリリースにはGPUという単語は出てきますが,NVIDIAのNの字も出てきません。まあ,x86CPUの方もIntelという名前は出てきませんが…

  2010年5月18日のCNETの記事には,IBMのDeep Computing部門のDavid Turek VPのインタビューの中の発言として「CPUがシステム全体の動きを調整するが,GPUは馬鹿な召使(Idiot Servant)で,黙々と数値計算をやる」と書かれており,IBMのGPUに対する評価は,こんなところなのでしょうかね〜。(「黙々と」は筆者の意訳です。)

  今回発表された製品は,iDataPlex dx360 M3という製品で,2Uの箱に1U分のトレイが2枚入っている構造で,両方をWetsmereのCPU 2ソケットにするか,一方に2台のTesla GPUを搭載するという選択ができるようになっています。iDataPlexは奥行は薄目ですが,42Uのラック2台分の特殊なラックを使っており,Dx360 M3を42ノード搭載できます。従って,全部をCPUにすると84ノード,1004コアとなります。2.93GHzクロックのCPUチップを使うと倍精度のピーク性能は11.8TFlopsとなります。

  これに対して,片側にM2050を2台搭載すると,CPUは504コアとGPUが84個で,49.2TFlopsとなります。しかし,ノードあたりの消費電力は,CPUノードは328Wなのに対して,M2050ノードは738Wとなっており,消費電力は2.25倍になります。

  謎なのはPower/Rackの項で,CPUオンリーの場合は27.55KWとなっており328W×84なのですが,GPUを使うケースが30.99KWとなっています。全部を半々に入れると44.77KWになる計算ですが,GPUは8ノードしか入れられないということでしょうかね。また,dx360 M3の仕様を見ると,高効率の電源を使っても900W,冗長電源の場合は750Wとなっており,CPUノード+GPUノードの1066Wは定格オーバーで,この辺の仕掛けは良くわかりません。

2.DELLがARMサーバをテスト

  2010年5月17日のEE Timesが,この夏に,DELLはMarvellのARMベースのサーバーチップを使ったサーバのテストを行うと報じています。

  DELLの企業向けサーバグループは,量がまとまると特注的なサーバを作っており,VIAの低電力プロセサを使ったサーバを5000台以上出荷した経験があるそうです。

  先週の話題で紹介したように,MarvellはARMベースのサーバ用プロセッサを開発しています。また,先週は書きませんでしたが,Marvellは4コアのARMベースのSoCも開発しており,それはもっと早く出るとのことで,DELLがこの夏に評価するものが,4コアなのか,その先の年内出荷というもののプロトタイプであるのかは明らかではありません。

3.Samsungの次世代Fabは9000億円

  2010年5月17日にSamsungは,現在のFab15の拡張と次期のFab16の初期の建設に2.52Tウォン(約1900億円)の投資を決定したと発表しました。

  また,新工場であるFab16の完成までの総投資額は12Tウォンと見積もっており,これは約9000億円に相当します。相当なメガファブなのでしょうが,1兆円にも迫る規模の投資ができる会社はそうは無いでしょうね。

4.CRAYがNOAAのスパコンを受注

  2010年5月20日のHPC WireがNational Oceanic and Atmospheric Administrationの気候モデル用のスパコンの受注を報じています。

 予算規模は$47Mで,当初は,12コアのMagny-Cours Opteronプロセサを搭載するCRAYのXT6システムを入れ,今年後半には稼働を開始するのですが,2011年末までには,XT-6を次世代のBakerにアップグレードし,さらにBakerシステムを追加するPhase-2拡張を行う予定です。そして,2012年には,さらに拡張を行う予定と書かれています。

 このシステムはOakridge国立研究所に置かれる予定で,既にOakridgeに設置されているTop500 1位のJaguarと3位のKrakenにこのClimate Modeling and Research Systemが加わることになります。当初,納入のシステムのピークFlopsなどは発表されていませんが,予算から見て,相当な規模で,Oakridgeは山のようにOpteronがあることになります。

Bakerでは現在のSeaStar2+インタコネクトをGeminiに替えて通信帯域を倍増と言われていますが,詳細は発表されていません。

5.日本SGIが東大物性研のスパコンを受注

  2010年5月20日に日本SGIは,東大の物性研から次期スパコンを受注したと発表しました。中核となるスカラシステムはSGIのAltix ICEで,2.93GHzクロックのXeon5500を3840個搭載し,ピーク性能180TFlopsです。ノード間の接続にはQDRのInfiniBandが使われます。

 この180TFlopsは,今年3月1日に富士通が発表した原研(日本原子力研究開発機構)のピーク200TFlopsシステムについで国内2番目の性能となります。

 物性研のシステムは,このAltix ICEに64CPUのNECのベクトル機のSX-9が付き,ベクトル部のピーク性能は6.6TFlopsとなっています。

6.富士通が原研のスパコンの稼働を発表

 なお,2010年3月1日の富士通の原研のシステムについては発表時に気が付かず,紹介が漏れていましたので,ここで紹介させて貰うと,同社のPRIMERGY BX900というブレードシステム2138ノードから構成されており,4276チップ,17072コアとなっています。ピーク性能は200TFlopsで,このシステムでLINPACK 186.1TFlopsを出しています。この性能は国内ではトップで,昨年11月のTop500のリストでは19位に相当するとのことです。

 ノード間の接続はQDR InfiniBandで,各ブレードサーバに2枚のQDR InfiniBandアダプタを搭載しています。

 そして,原研のシステムは,理研の次期スパコンのプログラム開発に使用するSPARCベースのシステムとして12TFlopsのFX1 300ノードのシステムと,メモリ共有型計算サーバとして1.9TFlopsのM9000がついています。

 

  

  

  

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