最近の話題 2010年7月31日

1.CRAYが複数筐体のXE6の出荷を発表

  2010年7月26日のHPC Wireが,CRAYの最初の複数筐体のXE6システムの出荷を報じています。

  CRAYのBakerについては5月29日の話題でも紹介していますが,従来のXT6と比較すると,プロセサが6コアのInstanbulから12コアのMagny-Coursとなり,インタコネクトがSeaStar2+から新設計のGeminiに変わっています。

  しかし,この発表では複数筐体というだけで何筐体か,出荷先はどこかなどは明らかにされていません。

  また,2010年7月28日のHPC Wireが,スイスの国立のスパコンセンターであるCSCSがBakerのコードネームで開発されていたCRAY XE6の最初のマシンを設置したという発表を報じています。  

  CSCSのXE6は1筐体で,1920コア,ピーク性能は16TFlopsとさして大きいシステムではありませんが,ベータ機と言われていたCSCSのシステムが正式設置になったということは,多分,売上計上できるようになったということで,綱渡り的なCRAYの決算には好材料です。

2.CRAY-1の1/3スケールモデル

  2010年7月29日のThe RegisterがCRAY-1の1/3スケールモデルについて報じています。本物のCRAY-1は1976年に発表され,当時としてはぶっちぎりの250MFlops(Chainingを上手使えば)の性能でスパコンの代名詞ともなった名機ですが,Daryl Brach氏がその1/3スケールモデルを作ったという話を紹介しています。

  ご存じのように,配線長を短縮するため16角形の柱状の筐体で,その2.5辺が開いているという特異な形状で,内側には青い被覆のワイヤラップの線が盛りそばになっているのですが,この部分は,さすがに1本1本の配線は再現できず,かなり凝った塗装でその感じを出すのに苦労したとのことです。

  私にはよくわかりませんが,戦艦の模型を作るような感覚なんでしょうかね。

  そして計算エンジンとしては,ベースの部分に2台のPCを入れているそうです。PCのCPUの仕様は明らかにされていませんが,仮に1.6GHzクロックのAtomプロセッサであったとしても,軽くCRAY-1の10倍以上の性能です。

3.Intelが50Gb/sの光伝送を発表

  2010年7月27日のEE TimesがIntelの50Gbit/sの光伝送システムについて報じています。

  送信側はシリコンチップ上に4個の化合物半導体レーザーを集積した構造で,1.3μm程度の波長で発振します。それぞれのレーザーは20nmづつ波長が異なるWDM(Wave Division Multiplex)で,各波長での変調速度は12.5Gbit/sです。そして,変調されたこれらの4つの波長の光を混ぜて1本のファイバーで伝送しています。2010年7月28日のTech On!に写真が載っていますが,2cm位ある細長いチップで,変調器はMach-Zehnderでしょうかね。

  そして,受信側はフィルターで4つの波長に分解して,4つのフォトデテクタで検出しています。Concept Vehicleと述べられていますので,実験室で出来たという段階のようですが,4波長のWDMを高価な個別光学部品を使わず,シリコンチップで実現したというところが大きな進歩です。

4.IBMがシリコン製の赤外線光増幅器を発表

  2010年7月30日のEE TimesがIBMのシリコン製の赤外線光増幅器について報じています。

  今回,作られたのは瓦礫の中から生存者を発見するサーモグラフィーなどに使われる2.2μm帯の増幅器で,長距離通信に使われる1.5μmやそれより短い波長では動きません。長さの記述がありませんが,13dBのゲインと書かれています。

  IBMの研究者は,次の目標は共振器を組み込んでレーザーを実現することと述べており,通信用の波長ではないと言え,オールシリコンで赤外のレーザーができると面白いです。

@768733

 

 

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